第50話 ピーキーな性能

ボストロールを戦闘を繰り広げる事数十分。


「やっぱり超振動モードを渋っていたら決定打に欠けるか…」


超振動モードは破壊力が絶大に増す代わりに、腕へのダメージが凄まじい。

とは言え、その機能を制限して戦ってみたものの…ダメージを与えられてはいるだろうが、どうも決定打に欠ける。


『なんというか、維持戦闘能力は高いですけど。 破壊力はノーマル装備に劣りますね』

『う~ん。 もうちょっとこう~バシッ! ビシッ! ってできない訳?』


とは言え、こいつでは大胆な行動も難しいのだ。

ノーマル装備に比べ被弾すればどんな攻撃も致命的なダメージを受けてしまう、びびっている俺も俺ではあると思うが、それでも何か足りない気がする。


「くそっ…それにしてお尖りすぎだろう!」

『グォォォ!!』


ズドン!!

ダンジョンの床を叩き割るボストロール、奴に関しては左腕を切断してからというもの鬼の様な暴れ方をみせている。

それに踏まえて、一向に疲れる様子を見せないボストロール。

寧ろ先程に比べて、より動きが俊敏になっている様にも思える。


『グォッ! グォッ! グォ!!』

「駄目だな。 これは試している場合じゃなさそうだ。 Z! ブイもフレイアも気合を入れろ? 攻め込むぞ!」

『了解。 ブレードの展開を開始』

『よっし! いきますよ~! フレイアはあいつのでっかい眼玉を狙ってくださいね~』

『わ、解ったわ!!』


怒り心頭中のボストロールへ向け、俺は今出せる最大のスピードでボストロールの左足目掛けて加速する。


『あれ? 某漫画の如く首筋を狙うのは止めたんですか?』

「今回は無しだ。 悠長にジャンプしてたらこっちがやられる――行くぞ! フレイア牽制だ!」

『いっくわよぉぉ~!!』


バババババ!!!


『グォォオオオ!!』


頭部から放たれたバルカンを眼球に受け痛がる様子を見せるボストロール。


「いまだ! 最大出力!」


ギギギギギ!!!

2双のブレードでがら空きの左足を捉える。


「ふんっ!」


ドゴンッ!

切断された左足によってバランスを崩しはじめたボストロールに再び飛び込む。

そう、次は頭部目掛けて大きく飛翔した。


「うらぁぁぁ!」


ザグッ!!


『グガァァ!!』

「Z? 絶命までの時間は?」

『約15秒―――』

『え? 難しくないですそれ?』


ブイと同意見だ。 どこまでこいつの首筋に捕まっていたら、ボストロールに拘束される危険性もある。

とは言え、今を逃せば再び面倒な事になる事は間違いない。


「後ろの腕はなんとか動かせないのか!?」

『私では不可能です―――ブイ…』

『戦闘アシストを全部切れば―――なんとか相手の攻撃を受け止める位なら…』

「よし、一か八かだ。 Z! 戦闘アシストを全部切れ! こっちで全部やる」

『了解。 ブイ、任せましたよ』

『ラジャー!』

『だったら私はバルカンで傷口にちょっとでもダメージを与えるわ!』

「いくぞ! うぉぉぉ!!」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



『戦闘終了。 ダンジョンのクリアを確認―――』

「もう無理。 動けん…」


真横に横たわるボストロールの死体を回収する小さなブイを横目に俺はダンジョンの崩れ行く天井を眺めていた。

戦闘アシストを切る―――試してみて思ったが、まさか俺自身にブレードの振動やら衝撃がダイレクトに伝わる事だったとは…

これは使い所をちゃんと見極めなくてはならないな…


こっちはもう永遠に身体が揺れている様な気分で最悪だ。


「やっぱり、戦闘アシストは切らない方がいいな…」


ふと思った俺の感想である。

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