第49話 アーマーチェンジ

「アーマーチェンジ!」

『承認。 アイアン(ノーマル装備)へ、アーマーを変更致します』


ガチャン! ガシューン!!

ものの数秒で俺の身体の周りにはアイアン(ノーマル装備)が現れ、身体全体を包み込んだ。


『装着完了。 以後、30分のクールタイムを設けます―――次回、アイアン・ソード装着まで残り30分』


即座にアーマーを変更できる機能”アーマーチェンジ”利点としてはAP低下後の換装を目的とする機能だ。

もちろん、戦闘中等での相性の問題を解決する事も可能でAPは共有ではなく各アーマー管理となっている。


「お陰で、維持戦闘能力が飛躍するとは…」


30分のクールタイムがあるとはいえ、侮れない機能であるのは間違い。

特にソード等の尖ったアーマーは如何せん耐久値に難がある…


『ギシャァァ!』


威嚇する蛇のような見た目をしたモンスターへ向け銃口を構える。


「やっぱりこいつは頼りになる」


ズガンッ!!


アイアン・ソードをダンジョン内で使用して思った事は…機動力や瞬発性等はソードの方が圧倒的に上だが、どこでも適応出来る訳ではない―――と言う点が特に活躍の場所を狭めている気がする。


「攻撃を避けるってのもなかなかに難しいな」


まさかアーマーの能力を引き出せない程に”アイアン(ノーマル装備)”の汎用性に頼り切った動きになっていたとは…


「これはちょっとやそっとでどうにかなりそうにない…」

『要練習ですね!』

『うんうん、こっちの方が遅くていいわ!!』


と、二人もこの有様…勿論の事、Zは俺に何かをいうつもりはないらしい。



―――――――――――――――――――――――――――――


それからしばらくして。

ボス部屋の前へやって来た俺は再びソードを装着していた。


「やっぱり実戦投入が一番早いか」


ここまで来て思う事…それはやはりシュミレーションはシュミレーションでしかない。

命のやり取りではないからこそ、俺も何処かで心に余裕があったのだろう。


『ストイックですよね~やっぱり…』

『そうね。 まぁ、安心なさい! 危なくなったら私が逃げ帰ってあげるから!』

『えぇ。 その時は頼りにしていますよ―――フレイア』


俺についての信用はほとんど皆無らしい。

そして現れたボスモンスターの名は”ボストロール”シンプルな巨人の様な見た目をした単眼のモンスターだ。


右手には大きなこん棒を持ち、ドシンドシンと地を揺らす程の重量―――おまけに動きはそれ程遅くはないが、ソードにとってはかなり相性がいいともいえる相手である。


『グォォォ! ゴゥ、ゴゥ!』

「うぉぉぉ! 滅茶苦茶揺れる!!」


今回はそこまで広くないダンジョンの構造と、密閉された場所のせいもありダンジョンが崩れそうな程に激しく揺れている。

おかげで余計にアイアン(ノーマル装備)で戦闘する事は悪手となりそうだ。


「さて、やるしかないか…いくぞ!!」


キュィィィン…まずは様子見を兼ねて現状の俺が出来る最大限の火力を相手に叩き込む。


『グォォォ!!』


ズドンッ!!


「うぉ!!」


丁度俺の目の前に巨大なこん棒が振り下ろされると石の床を粉々に砕いた。

なんつー威力だ…ノーマル装備でも直撃すればかなりのダメージが発生する事だろう…


「ほらよぉ!」


すかさず相手の振り下ろした腕に向けブレードを叩きこむ。


『グォォォ!!! グォォッォオ!!』

「やらせるか…」


痛みを逃れるために、腕を退けようとするボストロール。

凄まじい肉質だ―――俺のブレードを食らってもまだ力む位の力が残っているとは…


「だが…最大出力!!」


逃すまいと俺はブレードの出力を上げるとボストロールの右手を切り落とす。

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