第35話 しかし、いまの所は平行線

『―――となります。 以上が、ギルドの有する機密データを元に導き出した。 答えです。 ですが、現状――どうする事も出来ないのでまだ胸の内に留めておく―――位の所で止めておきましょう』

「そうだな、俺も正直――意味わからん位に混乱してる」


俺はあんたらが元”暗殺ギルド”のトップっていう話を聞いてびっくりしているけどな。


「そうね、いまの所は余計な動きはしない方がいい。 だからこそカイネちゃんを連れて来なかったんでしょう? あなた?」

「あぁ、そうだ。 それに―――なぁ?」

「――えぇ。 そうね」


ニヤニヤと両親達は俺の顔を見るなり、気持ち悪い顔をしながらブツブツと何か言っていた。


「んじゃま、解散って事で~! いやぁ~この格好正直恥ずかしいんだよね…コートはまだしも中はピチピチでボディラインが見えちゃうし…最悪」

「な、な、な、なんて事を言うんだ! これはれっきとした正装だぞ!? それにいちゃもんを付けようってのか!?」

「確かに、この年でこの姿ってのはないわよねぇ~…」

「いやいや、母さん! すごくきれいだよ!? いまから3人目も欲しいな~って思った位だ! なぁ!? お前達!」

「「……」」


俺達は親父の言葉を無視して再び話を始めたのだった。


「おーい。 無視か? 父さんの事無視か? おーーい」

「にしてもぉ~すごいねぇ~…ギルドの秘密事項、ばっちりすっぱりきっちり抜き取られてるじゃん。 うぉ~!! ブレイブの保管する情報まで…文字化けしてる所が気になるけどぉ~今はいいかぁ~! んじゃまっ! わたしも帰るねぇ~! またねぇ~! ばいびぃ~!」


レイナさんは未だ笑顔で地下室を後にしたのだった。

何より、驚いた事は彼女の代わり様だろう…さらに胡散臭くなったというべきか、掴み所が無くなった斗いうか――ん? 待てよ? さらりと流してしまったが、カイネってもしかして異世界人!?


「おっとそうだ。 ちなみにぃ~カイネちゃんは異世界人だぞっ! それも”狂戦士”っていう部族の生き残りぃ~! やふぅ~い!」

「な、なんだと…」


最後にとんでもねぇ爆弾を投下していきやがったな!? あいつ!


「へぇ~…バーサーカー…お兄ちゃん。 頑張ってね」

「何を!?」



――――――――――――――――――――――――――



色々と不完全燃焼ではあったものの、各々自己解散を始めると―――結局俺だけがこの部屋に留まる事になっていた。


「で? まだ話があると?」

『はい―――ここからが本番ですよ? 装着者ファクター。 ブイ、説明を――』

「え? 本番?」

『はいはいはい~! 呼ばれて飛び出て、ブイちゃん!! ではでは、これから無事…チュートリアルを達成された装着者ファクター様にご説明を!』


と、目の前の大きなモニターに向け指さし棒を構えるブイ。


『まずは、チュートリアルの達成おめでとうございます! これにより、各所細かな機能が解放されたことで! このブイを”戦闘用アシスト”としてアーマー内に格納する事が可能となりました!』

「戦闘用アシスト? けど、んなもん”あの時”は――」

『まぁまぁまぁ! 全部付いちゃってると、なんていうかそれに慣れちゃうでしょ~? なので! 私の機能をお姉さまが一時機能を停止していたという訳ですね! 本来、人間の脳では処理しきれないデータの数々を私が制御する! という目的があるのですが! 見事、装着者ファクター様は試練を乗り越えました!』


言われてみれば、あの時も妙に動きがもっさりしていたような気がする――あの時感じた違和感はこれが原因だったという訳か。


『そして――見事。 装着者ファクター様は”魔石”使用の権利を獲得しました!』

「ま、魔石? そういえば、あのドラゴンの魔石がなんたら―――」

『あぁ~…あれはなんというか』

『たまたま、それも偶然にもあらゆる施設を開放する為のEXPへと変換されました』

「あ、そう…」


次第に画面にはアーマーの詳細が記されていた。


――アーマーEXP――

アーマーレベルの上昇には、各属性に対応した魔石を消費する事でアーマーへの進化エネルギーを蓄積させる事が可能となっている。


魔石の種類は全部で9種類――火、水、土、風、雷、氷、光、闇、無

の九つの属性に対応した”魔石”を施設へ投入する事で、それを”進化エネルギー”へ変化させ、アーマーのレベルを引き上げる事が可能。


「まじかよ…じゃ、モンスターを倒しても意味はないのか!?」

『意味が無い、訳ではありません。 あくまでも我々は、本来肉体へ吸収されるエネルギーを魔石へ封じ込める事で――あらゆる事象を無視し、進化エネルギーを蓄積させる事が可能となっています。 ですが、これまではその機能が封じられていました―――ですので、これまでは無駄だったと言うべきでしょうか』


なるほど…今までは無駄だったが、これからは魔石が意味を成すという訳か。


「で? その派生先っていうのは―――」

『はいはいはい~!  じゃじゃ~ん!!』

「おいおいおいおい…まじかよ?」


俺は目の前のモニターを見て思わず固まってしまった。

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