第24話 姉妹みたいなものだった
「………お、おい?」
「……」
あれからと言うもの、上の空で優香は全く俺の言葉に対しても返事を返してくる事はなかった。
「こりゃ、重症だな…」
なんだかんだで、真奈とは妹の優香の方が仲良くしていた…特に俺達があぁなる前まではまるで姉妹の様にほぼ毎日一緒に居た程、仲が良かった。
が、優香はある時を境に真奈の話をする事が無くなった。
「なぁ、おい」
「ごめん。 お兄ちゃんを困らせないでとか…お兄ちゃんの事だしちゃって」
「な、何を…」
「お兄ちゃんは吹っ切れてるんだもんね、ううん…そう決めたんだもんね。 やっぱ凄いや…」
今にも泣きそうな優香の顔をみて、なんと声を掛けたらいいのか解らなくなってしまった。
俺と優香じゃ状況が違う、それに完全に吹っ切れているのかと聞かれればそうじゃないのかもしれない。
けど、けれど俺は決して”あの”行為が正しかったのかと言われれば…俺は何とも答える事が出来ないだろう。
「なんつーか…俺自身―――いや、自分自身がああやって心に蓋をして逃げた事を後悔してると思う…」
「お兄ちゃん…」
「まだ、好きなんだろう? 真奈が?」
だからこそ、優香はあれだけ感情的になったに違いないだろう。
優香は正直言って、俺よりももっと近くで真奈を見ていた存在だからこそ…まだ迷っているだけなんだ。
「……」
小さく、ほんのわずかに頷いた妹の顔をみて俺は微笑む。
「だったら、ちゃんと話してこい。 俺が言える事じゃないけどさ…まだ間に合う、だから行ってこい」
「―――!?」
これが俺から掛けられる精一杯の言葉だった。
「お兄ちゃん」
「おぅ」
「行って来る」
「あぁ」
―――――――――――――――――――――――
リビングでただ一人残された俺は、そんなはずはないと何度も言い聞かせながら先程の成長した幼馴染の姿を思い出した。
「――――そっか…もう他人なんだな」
何度思い返してみても、俺の答えは決まっていた―――いや、長く心に蓋をし過ぎたせいなんだろう。
気付いた頃には、もう彼女は俺のなんでもなかった。
「はぁ…やけ食いしよ」
『明日に響きますよ?』
「知るか!! やけ食いだ! やけ食い!! Z! いま、俺が食いたい食べ物を10品注文だ!」
『知りませんよ。 ラジャー…』
もう以前の様な関係には戻れないんだろう。
それでも俺は、以前のように立ち止まらないと決めた…前とは違う。
今は心強い
「よ~し!! 明日からもバシバシやるぞ~!」
『えいえい、オー…』
「棒読みで応援するなら言うんじゃねぇ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
その日の夜の事である。
妹は少し満足そうな表情で食卓に着いた、思わずそれを見て俺も頬がゆるみそうになるのを我慢する。
「なんだ、優香? 今日は偉く遅い帰りじゃないか、俺達より先に帰ったんじゃ?」
「う、うん…ちょっと用事があって」
「そうか」
「出来たわよ~! ささっ! 食べましょう」
夜。 明日に備え、俺は再び武器のメンテナンスに取り掛かる。
とは言え、念の為に再チェックを行っているだけなんだが――ー
コンコン!
「ん?」
「私…お兄ちゃん」
「あぁ、入っていいぞ。 ちょっと散らかってるが、すまん」
ガチャ。
「じゃ、じゃあ失礼して」
優香は可愛らしいピンクの寝巻で俺の部屋に入って来た。
こいつがこんな時間に俺の部屋に来るなんて珍しい…
「な、仲直り…出来たかも?」
「はぁ?」
何故疑問形なのかはさておき、仲直り的なものが出来たのならばよかったんだろう。 が、優香の表情は何故か不満タラタラで頬を膨らませ俺の肩に頭を預けて来た。
「言ってる事と、表情が全然一致してないぞ?」
「だって…」
「なんだよ?」
「”真奈ちゃん”いや、あの阿婆擦れ! 仲直り出来たと思った途端、お兄ちゃんの事ばっかり聞いてくるんだもん! 不快、不愉快!!」
「あぁ、そう…」
「だから言ってやったんだ。 もうお前の事なんて何とも思ってねぇぞって!」
「あぁそう―――えぇ!?」
それを本人言ってはお終いよ! と思わず口に出しそうになったが、もうすこしという所で何とか踏みとどまる。
「そしたらさ? なんていったと思う?」
「さ、さぁ…?」
皆目見当はつかないが、それは果たして俺が聞いてもいい事なんだろうか?
「次は間違えない、逃げないでぶつかるって言ってたんだ。 お兄ちゃん、覚悟しておいた方がいいよ…真奈ちゃん、しつこいから」
「知ってるよ…」
あいつの面倒くささは俺が一番理解しているつもりだ。
逃げないでぶつかる…か。
「なので、お兄ちゃんの”冒険者ID”を教えておきました!」
「いやっ!! 勝手な事すんなぁ!?」
やりましたと言わんばかりの表情でドヤ顔する優香をみて思わず、頭部にチョップ
をお見舞いしてやろうかと思ったがやめておく。
『フレンド申請を受信。 Aランク冒険者”龍炎寺
「噂をすれ―――」
「Aランク冒険者!?」
正直、今日一番驚いたかもしれない。
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