第16話 注目の的

「へ、へぇ~…なるほど。ゴブリンって火を扱うのに、火属性が弱点なのか」

「えぇ、そうなんです! というか、そのお姿だと属性とか関係なさそうですけど…」

「確かに…重火器が効かない筈のモンスターの頭部を普通に銃弾が貫通してましたもんね?」

「へぇ~…すげぇ…今日が本当に初のダンジョン攻略なんですか?」


等とキラキラした瞳で俺を見る、少年少女達…彼らは俺が”異端者”と解っても尚…興味津々にこのアーマーについての質問攻めを開始した。


「お、おい…お前達。 こんな場所を見られたら今後に影響が出るぞ? 離れた方がいい」

「パーティーを組もうって訳じゃないんですし! 大丈夫ですよ!」

「そうですよ! 同じ人間同士じゃないですか! ―――でも、人間じゃないとかいうオチは止めて下さいよ?」

「いや、流石にそれは無いだろう。 ちゃんとした人間だ! が、ちょっと訳があって鎧を脱ぐ事は出来ないんだけどな?」


そう、俺はこいつ達にも先に名を名乗る必要はないと言っておいた。

何故なのかというと、妹がそう言っていたからだ―――なんでもここで俺が名乗ると後で面倒な事になりかねないらしい。


「そうなんですね、残念! んじゃ、俺達は先に引き返しますね! 皆! 帰ろうぜ!」

「「「は~い!」」」

「気を付けてな。 俺も、もうじき帰る!」

「「「「お気をつけて!」」」」


4人も俺と同じく初めてこのダンジョンに侵入したらしい、今回は様子見を兼ねて早めに撤退をする様だ。

ちゃんと自分の力量が解っているというよりも、仲間を大事にするあの少年…きっと将来的には大きくなるに違いないろう。


「俺も頑張らないとな」


だからこそ、俺はここで引く事を許されない。

仲間を作れない分、一人で出来る事を増やす必要があるのだ…泣き言なんって言ってられない。 やるんだ俺! ただし、無理はせずに――――


「あとで親父や母さんや優香になんて言われるか解らないからな…」


再び薄暗い洞窟の中をズンズン進んで行く俺は、しばらくすると目の前に下の層へ降りる階段を見つけた。


「これで2階層か…ここまでで約40分。 移動するだけでも一苦労だな」


他の冒険者はどうやって移動しているのだろうか?

もしかしてこの中を全力疾走で駆けていくとか? いや、それは流石に無いだろう…優香の話曰く―――何日もかけてダンジョン内を探索する者は自前のテント等を持ち運んで何日もダンジョン内で過ごす事も珍しくないと聞く。


「まぁ、俺は2階層の様子を見て一度引き返そう」


そう急ぐ事はない、着実にアーマーのレベルを上げて…まずは最初の”開発”

”を目指す事が先決だろう。



―――――――――――――――――――――――――


ゴブリンパーク2階層。

先程とは打って変わり、石畳みや石壁に覆われるそこはもはや先程とは別次元であった。


「ふぇ~…すげぇ。 これがダンジョン…」


まるでゲームでよく見るダンジョンの構造に似ている気がする――――ただ、なんともまぁ。


「薄暗い」


ダンジョンっぽい作りとは裏腹に、目の前5m以上先の景色が全く見えない。

思ったんだが、このダンジョン…ぜったいに初心者向けのダンジョンではないのでは?

優香達は初めて攻略するなら”このダンジョンしかない!”とか言っていた気がするが、どうも初心者が攻略する様な新設設計だとは到底思えない。


「ダンジョンwiki見ておくんだった…」


―――ダンジョンwiki―――


ダンジョンの詳細な内容が掲載された攻略サイトの様なものである。

主な内容としては冒険者達による口コミや、経験談や豆知識等々…あながち馬鹿にはできない量の情報がそこには掲載されている。


おまけに信憑性は高く、極稀に嘘の投稿等があるが――――管理人の”ダンジョン太郎”さんが直々にダンジョンへ赴き視察を行う事で事実確認を行っているので…大手ギルドの公式サイトよりも利用価値があるとされている恐ろしい攻略サイドだ。


「ダンジョン太郎さんか…どんな人なんだろうな」


噂ではゴリゴリマッチョの筋肉男だとか、スレンダーで美人な女性等々…噂は立っているものの、その姿を誰も見た事無いという事実にも驚きを隠せない。

まるで”誰にも見えていない”様な存在である。


「さて…何も見えないけど。 Z? この暗さ…どうにかならないか?」


ピッ…


『問題ありません。 アイライト―――作動』


ピカッ…! すると目の前が大きく明るくなったのが解る。 と言うか待て? アイライト? と言う事は、今…光ってるのか!?


『連続使用時間は3時間程です――――その後、フル充電までは約30分程の時間を有します。 よろしければカウントダウンをモニターに表示致しましょうか?』

「いや、気になって仕方ないなそれ…都度でアナウンスしてくれ」

『了解』


そういえばこいつは”モノアイ”だったことに今更気付いた俺であった。

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