第4話 後輩

 冒険者ギルドを出ると、空が薄暗くなり街灯もちらほら点灯し始めていた。

 郵便ギルドには明日の朝一に行くこと決め、今日のところは帰宅することに。


 自宅に向かって歩いていると、今日1日なにもまだ口にしていないことを思い出し、大通りから1本路地に佇んでいる『蕾亭』という行きつけの酒場に向かった。

『蕾亭』は普通の酒場に比べて値が高いため、客の大体が高ランク冒険者であり治安も比較的良い店だ。


 暖簾をくぐり中に入るといつも以上に増して混んでいた。


「アレクさん、お久しぶりねぇ」


『蕾亭』の美人女将が、話しかけてきた。


「女将さん、お久しぶりですね。席空いてないですかね...」

「ごめんなさいね、今満席中なのよ」


 いつもは開店と同時くらいに店に来ていたが、今日は開店から既に2時間経過してしまっていた。

 席が空くのを待つのもどれくらい時間がかかるかわからないため、女将さんにまた来るといい、店から出ようとしたとき


「アレクさん!」


 急に名前を呼ばれた。後ろを振り返ると、Aランク冒険者パーティ『夜』のリーダーサムがいた。


「おぉ、サムか。久しぶりだな」

「はい、お久しぶりです。アレクさん帰られるんですか?」

「あぁ、満席だし。待つのもどれくらい時間かかるかわからんしな」

「じゃあ、僕たちの席来ませんか? 今メンバーとご飯食べているのですが、席も空いてますし、どうですか?」


 サムからの提案は大変魅力的だったため、即答で返事をした。

 サムたちが座っていた席は、このお店で唯一の個室だったようで、中に入ると他のメンバー3人も揃っていた。


「おぉ、みんな久しぶりだな。すまんな、相席させてもらって」

「いえいえ、気にしないでください。アレクさんとも久しぶりにお話ししたかったですし」


 魔法使いのミクがそう答えた。


「そうか、ならよかった」


 アレクは席に座りみんなのお腹の減り具合を聞いてから、メニューから適当に料理を頼んだ。

 料理が来るまでの間、『夜』の最近の活動について聞いてみた。


「サム、最近調子はどうなんだ?」

「調子は、結構いいほうですよ! この間は、グリフォン2体の討伐に成功したんですよ!」


 グリフォンはAランクでも上位のモンスター、それを2体倒したとなるとAランク上位パーティーでもなかなか難しい。

『夜』は将来性はあると思っていたが、ここまで強くなっていることに素直に驚いた。

「本当か!? すごいな、グリフォン2体倒せたならAランクパーティーの中でもかなり上位レベルになったってことだな。Sランクになるのも時間の問題かな」


「いえいえ、まだ下級ドラゴンですら倒せないのでSランクはまだまだ先ですよ」


 4人は謙遜しながらも、少し照れながら嬉しそうにしていた。

 頼んでいた料理も揃い、皆でシェアしながら4人の最近の活動内容や悩みなどを詳細に聞いてアドバイスを行った。

 楽しい時間はあっという間に2時間ほど過ぎ、そろそろ帰ろうかなと考えていたら、サムから今度一緒に依頼受けましょうよと言われたので


「あぁ、すまん。俺しばらく冒険者活動辞めることにしたんよ」


 そう答えた。少しの静寂の後、


「「「「えぇーーー!!!!」」」」


 4人は声をそろえて驚き、サムが代表し


「え、冒険者辞めちゃうんですか??」

「さっきギルド長に辞めるって言ったが、めちゃくちゃ止められて、結局休職することにしたんだ」

「ギルド長ナイス判断ですよ! どうして辞めようと思ったんですか?」


 サムにそう聞かれて、理由を説明するか少し悩んだ後、

「特に理由はないよ、しいて言えば、他にやりたいことを見つけたんだ。それにお前らのような頼もしい後輩たちがいれば、ギルドは安泰だ」


 笑いながら言い、俺は席を立った。机の上に大金貨1枚を置いて、4人に先に失礼すると言い残しお店を後にした。

 お店を出た後は、自宅に帰宅しそのまま眠りについた。


 翌日、いつも通りの時間に起きて、郵便ギルドへ向かうために家を出た。

 郵便ギルドまでは、冒険者ギルドより5分ほど遠い場所にあったが、ゆっくりと近所の人たちに挨拶をしながら向かった。

 外観が真っ赤なことで有名なギルド前に到着し、一度大きな深呼吸をし、中に入った。

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最強Sランク冒険者、郵便ギルドへ転職します みやび @bigboy0402

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