第29話あの世とこの世の合縁奇縁



オカルトじみた話です。


地獄極楽等の話です。


現代科学に生きると言う方は読まれるのは控えるのが良いと思います。




あの世とこの世は明確に別れて…いや、薄皮一枚隔てただけで存在しているのだなぁ…と思わせられた話です。


今回私は不思議を信じる側として、狂言回しとして綴ります。





ある老女の告白。


その方が亡くなる前におっしゃいました。

娘の親友が子供の時分に亡くなった。

葬儀が終わるが成仏できずに老女を頼ってくる。

両親は遺骨そのままに仏壇もおろそか。

供養されないので道に迷ったと子供。

老女は自分に負ぶさらせて寺院に行って下ろし、親に代わって供養した。

子供はお礼を言って成仏する。

両親に娘の供養をちゃんとするように頼みに行く。

両親は金が欲しいのかと罵倒する。

両親が改心しないので老女が代わり供養する。



簡略に記すとこうです。

味気ないですが、大東亜戦争から少し経っての話だそうです。


細部を述べますと。

その方のまだ若い時に小学生の娘に仲の良い同級生の女の子がいて、村も同じだったのでよく遊びに来ていたそうです。


ですがまだまだ不治の病の多い時代です。

流行り病でその女の子は闘病の末に亡くなってしまったそうです。


その女の子の葬儀に幼い娘と共に参列したそうなのですが…

その話をして下さった女性が所謂「霊感」があったそうで、その葬儀の最中も亡くなった女の子は自分の両親の側に居たそうです。

昔は葬儀は各人の家で行われましたので、まだ両親や家から離れられないよね…そう思う事にしたそうです。


葬儀から四十九日が過ぎた辺り。

家の戸が叩かれる音がしたのでその女性は来客と思って玄関に行ったそうです。


そこには

亡くなった女の子が立っていたそうです。

そして言うそうです。


「おばちゃん。お父さんもお母さんも…誰もお祈りしてくれないの…おばちゃん、助けて」

そう言って女の子は幽霊なのにも関わらず泣いたそうです。

話を聞くと生前から大切にされておらず、女性の娘の元によく遊びに来ていたのも両親に。


「他所でご飯貰ってこい」

そう言われて追われて出されていたそうです。

その女の子の幽霊は泣きながら謝るのです。

おばちゃん、いつもおやつ貰ってごめんなさい。ご飯食べさせて貰ってごめんなさい…


女性はその女の子の境遇を知っていました。

何せ小さな村ですから…


「あなたは病気で可哀想な事になったのだから謝らない。成仏はおばちゃんに任せなさい」

女性はそう言って女の子の幽霊を背負います。


言うが早いかその足で大きい寺に行って女の子の幽霊を背中から降ろして一心に祈ったそうです。自分だけならお寺に入れるけれども…迷った女の子の幽霊は別です…家人に招かれないと入れません。ですから寺に向かって祈ったのです。


手を合わせ寺に向かい数時間そうしていますと、お寺からお坊さんが出ていらして何事かと問いました。


「娘の友達の冥福を祈っています」


それでお坊さんが何かしらか思ったのかお堂に上げてくださり一緒に祈ってくれたそうです。


「おばちゃん。お坊さん。ありがとう。私やっと成仏出来る」

女性の側に居た女の子の幽霊が女性に言いました。

そこには大きな手のひらに乗せて貰った女の子の幽霊が居ました。


「おばちゃん。最後にごめんね。お父さんとお母さんにも本当はお祈りして欲しかった…」

そう残して手のひらは女の子の幽霊を乗せて空に消えたそうです。

女性は初めて「仏」を見たとおっしゃいました。

そしてお坊さんにお礼とお布施をしてその足で女の子の生家に行きました。


「亡くなられた娘さんの事で…」

そう言うと家に入れられたそうです。

戦後の家は小さいものです。

通された居間からは仏間が見えます。


そこにはまだ「骨壷」が置かれていました。

その女性から聞いたのですが、遺骨を家に長く置くのは良くないそうです。

更にその女の子の骨壷には何も供えられておらず「置かれているだけ」…生前の女の子の置かれた立場が表れていました。


女性は早くお墓に遺骨を納める様に言いながら、娘さんの冥福を祈ってあげてほしい…あの子に頼まれた。そう女の子の両親に言ったそうです。


すると女の子の両親は般若の形相で。


「なんだあんたは。娘の事で金でもせびろうってか。早く帰れ!」


追い立てられました。


戦後の誰もが苦しい時代です。ですがあまりにも救われませんよね…


その女性。老女になるまで仏壇で手を合わせる時にはその女の子の事も懇ろにお願いしますと念仏し続けたそうです。


よくよく申しますが、歴史は地続きです。

「もう戦後」と言われて長いですが、今でも幼い子供の育児放棄や貧困による犯罪は起こっているのです。


日本は本当に「もう戦後」なのでしょうか。





早死の我が子。



お産で入院中隣ベッドの人が「見える」人だった。

貴方のお腹の子は貴方の亡くなったおじさんだと告げる。

貴方の事が好きだから、一時子供として産まれたい。

だけれども亡くなって日も浅いので長生きは出来ない。

産まれたいが親孝行出来ないのが申し訳ないと言っている。

しかして産まれたその子供は小学2年で亡くなる。



先程の女性のご友人のお話です。


これも昭和の中頃。

第三子を身籠った女性が病院に入院しました。

子沢山が尊ばれた時代です。その女性は三人目のお産でした。

そして相部屋で、隣に病気で入院した女性が居て、自分の母親位かな…と親近感を覚えていると、ポツポツ話す様になり子育て話等をする仲になったそうです。


ですが出産予定日が近付くと、その隣の女性が言ったそうです。


「あなた、ここ十年以内におじさんを亡くしているね?」


「はい。前に言いましたか?」


「ううん。もうじき産まれるからとそのおじさんが言ったの」


「おじさんが?」


「ええ。気味が悪いと思って言わなかったけども、私は少し『見える』の。だからその人があなたに伝えて欲しいって」


「おじさんが…何か?」


「そのおじさんはあなたの事を可愛がってくれたでしょう?

おじさんはあなたの事が可愛くて仕方ない。姪っ子だから大好きだって。

だからおじさんはどうしてもあなたの子供として産まれたくなったの。だけど亡くなって間もないから…長く生きられない…あなたに悲しみを残してしまう…ごめんなさいって」



それからお産で可愛らしい男の子が産まれたそうです。


そしてその女性はきちんと「母親」としてその「生まれ変わり」と言われた我が子を育てました。

そして隣ベッドになった女性が言った通りに小学二年生に上がる頃に眠るように男の子は亡くなっていたそうです。

そんなに幼かったのにいつも母親を気遣って兄弟で一番優しい男の子だったと仰っていました。



生まれ変わり…


私は分かりませんが、前世の記憶を持っていると言う人もたまにテレビで取り上げられますよね?


仏教では輪廻転生の思想があります。

ですから生前の経験や善行や悪行が次の生に報いるとも。


輪廻転生から解脱して六道から早く抜けよ。

そう言われもします。


ですが、仏教では衆生は仏の仏縁によって「極楽の隅」に招かれます。極楽とは終着点ではなく、仏と共に自身が仏になる為の修行をする場所とも言います。

そして仏になったらば。

輪廻に戻って他者を救いなさい。

そう言う教えもあるそうです。


その女性のおじさんも仏の赦しによって早く産まれて来たのかもしれないですね。





病床の曼荼羅



これは私の祖母の実話です。

箇条書きを省き、やり取りを綴ります。


祖母は熱心な仏教徒でした。

豊かではない家ですが、村にあるお寺さんには畑で作った旬の野菜を寄進代わりに贈っていました。

そしてお寺さんが「あなたの作る野菜はとても美味しいです。ありがとう」

そう住職に言われると、小学生になったばかりの私に嬉しそうにそう褒められたと言いました。


ですがいくら熱心に祈っていたと言っても…病気には敵いません。


あくる日。

私は学校から家に帰り、居間でテレビを観ていると玄関がガチャガチャと音をたてます。

何かと見に行くと祖母が腹這いで這っているのです…


「苦しい…お寺さんに…助けてと伝えて…」

詳しくは分からないのですが、その時の祖母は血管が破裂寸前の状態で全身が激痛で苛まれていた所、私が学校から帰って来たので私を呼ぼうとしたが声も出ず…庭仕事中に倒れたので庭から玄関迄這ってきたのです。


悲しいかな。私は電話が出来ず、救急車を呼べなかったのです…


私は祖母の苦しむ姿に怯みながらも村を走りお寺に駆け込みました。


「ばあちゃんを助けて!」

玄関で何度も叫びましたが…運悪く住職は外回りで居らず、奥さんは裏手で庭仕事をしていて気付かなかったのです。


私は泣きながら村を彷徨いました。


「どうしたの!」

そこにちょうど同級生のお母さんが自転車で通りかかりました。


私は全てを話して家に来てもらい、同級生のお母さんに救急車を呼んでもらって…

私は小学生なので救急車に同乗出来なかったので、そのお母さんが用事もあったでしょうに付き添いで乗って下さいました。



祖母の容態は最悪でした。

破裂寸前の血管が背面にあったそうなのですが、骨が邪魔をして手術が出来ない。

手術出来ても高齢者なので体が保たないかもしれない…


親族は何かしら決断しなければならなかったのです。

その時は子供ながら家が重苦しくなっていたのを覚えています。


決断は…



入院から一ヶ月程で祖母が家に帰ってきましました。


勿論「生きて」の帰宅です。


「手術はしなかったよ」

祖母が言いました。


そうなのです。手術しませんでした。

ですが手術しなければ血管が破裂して死にます。

手術してもショック死の可能性が高い状態の八方塞がりだったのです。


祖母が入院中に、祖父と私の両親は主治医に呼ばれたそうです。

きっと手術の是非を選ばねばならない段階なのだ…

家族三人は項垂れて主治医と話し合います。


すると主治医がレントゲンを出したそうです。


「理由は分からないのですが…病巣が『消えて』ます」

訳がわからない…主治医と家族三人は暫く無言。


結果として祖母は「無病」となって入院の必要も無くなったので退院して来たのでした。


そうとは知らずに私は嬉しくて祖母にべったりです。


祖母と二人きりになった時に祖母が言いました。


「仏様のお陰なんよ」


祖母は毎日激痛で、鎮痛薬でしのいでいたそうです。

もう長くない。

だけれども孫が結婚する迄は長らえたい…

未練がましいと思いながらもそう思いながら眠りについていたそうです。



その夢は明晰夢…なのでしょうか?


祖母は真っ暗な何も無い場所に死装束で立っていたそうです。


するといつも念仏して炊きたての米を供えている仏壇の仏様が目の前に現れたかと思うと…


その仏様を中心にした曼荼羅が金色に光り現れて祖母を手のひらに乗せます。


暗かった場所はもう金色に眩く…


いつの間にか絵に描いた様な浄土が広がっていたそうです。


『お前は死んだならば成仏してここに来るだろう。

だけれどもまだ来るには早い。だから我々が浄土を案内してやるから、それに満足してまた生きなさい』


曼荼羅となった仏様がそう言われると、蓮池や花がほころび、果樹も香気を放つ浄土を気の済む迄見せて貰ったそうです。



そして目が覚めます。


『まだ来るには早い』


その夢を見てから体の痛みが消えていて、医師に頼んで検査をして貰うと…



病巣が消えていたそうです。


祖母は有り難いと言いながら。


「さて、ご飯お供えしようね」

そう言って私にもご飯の盛り方を教えながらお供えしました。




祖母はそれから八年…


八年生きました。


ですが私の結婚式には立ち会えませんでした。私が高校生の時に…旅立ちました。



私の結婚式が寿命では無かったのです。


まだ来るには早い。

八年後。

『もう来ても良い』

そうなったのでしょうか。



私には神仏のその尺度は分かりません。


ですが一度は祖母を死の淵から掬い上げたのは消えない真実なのです。



この事があってから私はオカルト…でしょうか。神仏や幽霊や妖怪、地獄極楽を信じる様になりました。



小学校高学年。

私は幽霊を見ました。

中学の時に化け物に狙われました。


その都度祖母が対処法を教えてくれるのです。


「奴等は勝手に家に入る力の無いのが多いから清めてから入りなさい」


「噛みたければ、噛め。飲みたければ、飲め。我には神仏はつき済みじゃ」

引っ付かれたら一心にそう言いなさい。そう習いました。



祖母の八年は…


手前勝手な解釈です。

私や…家族の安全を見守る為の年月だったのでしょうか。



少なくとも祖母を含めた上記の三人の女性は、苦しい時代でありながら自分の為だけには生きませんでした。

必ず他者を思いやって一生を全うされました。



所詮オカルト話ではないか。


はい。


ですが人の為に成した人の話です。

それだけは真実です。





付け足しですが。

もし皆様が幽霊や怪奇現象に見舞われたなら関わらない事が一番の防衛手段です。


「私の無くなった手足を一緒に探して…」

怪談のお約束ですね。ですが、探してはなりません。

「私では力になれません。他の人に頼んで下さい」

断って下さい。


更に「生きている人間」も負けず劣らず「恐ろしい」です。


平気で人を呪います。



皆様が平穏無事に過ごされます事を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る