ハロウィン
10月中旬になって、だんだん涼しくなってきた……。はずだった。暑い。暑すぎる。今年はなんでこんなに暑いんだ。僕はぼやいた。
「おや、お困りのようですね。」
誰かが話しかけてきた。でも、その誰かはわかっている。後ろの席の未予雨だ。実際には話しかけたわけじゃなく、念じてきた。
「私がこの暑さがいつまで続くのか占ってあげましょう。」
なぜか占い師気取りだ。"いいよ…"と言う。
そんなことより、今は授業に集中だ。
「了解です。特別に占ってあげましょう。」
上からか下からかわからない物言いだ。それにしても、おかしい。さっき断ったはずなのに。なんで占うことになったんだ。
「何言ってるんですか。いいよって言ったじゃないですか。」
心を読まれていた。しまった。確かに"いいよ"と言っていた。確かにこれだとどっちの意味にもとれてしまう。
「まあまあ、そんなことはおいといて。」
どっかに置かれてしまった。未予雨は授業より占いのほうが大事なようだ。
「最先端の占いによると、この暑さは10月いっぱい続くようです。」
なんだ最先端の占いって。だめだ。話に乗っかったら。
「細かいことは気にしない気にしない。」
また、ながされてしまった。心が読めるのか。ていうか、そんな先まで見えないだろ。思わず言いそうになった。未予雨は、未来予知という超能力を持っている。たまにしか使わないが…。それもどうでもいいことにしか。
「それがですね。パワーアップしたんです。やっと、私の努力が実ったんでしょう。」
何を言ってるんだ。大した事してないだろ。
「やはり、これはハロウィンのせいですね。」
さっきの努力はどこにいった。
「さて、ということで…始めましょう。」
話が見えないまま、進んでいく。
「仮装の準備を…。」
なんでそうなる。だいたい今なんの時間かわかってるのか。歴史の授業中だ。
「そうでした…。すっかりしてました。」
それを言うなら、うっかりしてました、だ。
「いいこと思いつきました。せっかくなので、ハロウィンの歴史について学び
ましょう。」
どこがいいことなのかわからないが、本人は乗り気だ。
「そうですね…、まずはハロウィンの起源からでしょうか。いや、日本のハロウィ
ンの歴史でしょうか。それとも、江戸時代についてでしょうか。う~ん、迷い
ますね。」
一応、授業のことも考えているようだ。
「そうです。大事なことを忘れていました。あの魔法がなくてはハロウィンの存
在意義がなくなるところでした。」
よくわからないが、大袈裟だ。
「えっと…何でしたっけ。アバダ・ケタブラ。」
それは絶対違う。
「思い出しました。トリニクハトリートメントです。」
それも違う。
「思い出しました。トリックオアトリートです。」
どうやら思い出したようだ。
「確か意味は、お菓子をくれないと、鶏肉にするぞ。」
さっきの鶏肉に引っ張られている。
「さあ、これで予習はバッチリです。」
よくわからないが、満足したらしい。
暑さの話はどこにいったのだろう。
「ああ、早く31日になってほしいです。そしたら、
お菓子をたくさんもらえて・・・ふふふっ。」
欲望が駄々洩れだ。
「仕方ないです。あれを使います。」
「未来予知よち。」
赤ちゃんが出てきた。
「なんということでしょう。私がお菓子に埋もれています。
とても幸せそうです。私はもう死んでもいい。」
やっと、授業に集中できそうだ。
「そうだ。ハロウィンのときは詐欺が多くなるらしいですよ。」
「えっ。なんでかって。それは、パンプキン(還付金)詐欺だからです。」
未予雨さんは待ち切れない 作楽井 遊 @minamiiti
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