第6回 ハドソン川の奇跡/コープスパーティー

雷華:Twitter:rairai345

最近見て面白かったホラー映画はミッドサマー。

アマゾンプライムビデオ。

仄暗い水の底からが気になってる

小城:Twitter:ogisaburo 

Hulu。


・ハドソン川の奇跡

 奇跡的な生還劇として知られるUSエアウェイズ1549便不時着水事故、通称『ハドソン川の奇跡』。世界中に感動を与えた飛行機の機長、チェスリー・サレンバーガーであったが、事故後の調査で無理に着水を行わなくとも、航空に帰れた可能性を調査委員会から受ける。彼の判断は正しかったのか? 彼は本当に英雄だったのか? 事件の後に起きた知られざる真実を描く。


雷華「どうだった?」

小城「嫌いじゃないよ」

雷華「嫌いじゃない」

小城「山がないというか、史実通りだから劇的なドラマがない」

雷華「淡々に進む映画ではあるよね」

小城「確かに『生きてこそ(第3回参照)』とは違うなとは感じたし、前回言ってた意味は解った」

雷華「向こうは墜落してるけど、こっちは不時着だからね」

小城「どっちも史実だし墜落したものと不時着したもので見比べるのも面白いんだけど、映画としての盛り上がりに欠けるというか、ドキュメンタリーとしてはいい出来だと思う」

雷華「なるほど」

小城「オチはあった、でも山がなかったな」

雷華「山がないというか、散々、重苦しい展開を見せて最後に逆転というか救われるみたいな展開なんだよね」


 文字にすると確かに面白みに欠けてそうな映画である。


雷華「ほぼほぼ、サリーさんが悩んでいる姿を100分ぐらい見続けて、最後の20分でオチがつく、みたいな映画だからね」

小城「フライトシュミレーターの下りが一番、生々しかったよね。何回練習したのか、て確認するところ」

雷華「あそこで運輸局の人が凄い気まずそうに17回て答えるんだよね(笑」

小城「周囲の人間と打合せしながら『17回だ』。それ意味なくないか(笑」

雷華「そりゃ成功するわな!(笑」※1

小城「はじめてあの二人が陥ったピンチに比べたら、はるかに簡単だろ(笑」

雷華「ほんまにな(笑」


 ※1

 運輸局の調査ではエンジン停止直後に空港に戻っていれば無事に帰還できたとし、実際に公聴会でフライトシュミレーターを使った検証でも成功しているのだが、それに対してサリーがシュミレーターに乗っているパイロットの腕前を認めながらも、運輸局に確認した際のやり取り。

 史上初の事故に遭遇したサリーに対して、シュミレーターに参加したパイロットは17回も練習した上で成功させており、公聴会に参加した委員を呆れさせる結果に。


小城「パイロットの動揺、判断を仰ぐ時間を考慮してくれとサリーが訴える所がね」

雷華「あそこから道が開けて、サリーの逆転が始まるんだよね」

小城「最後に副長のジョークで終わる、で雰囲気を良くしようとしてるのはわかるんだけど、映画としての盛り上がりには欠けてるかな」

雷華「ふむ」

小城「全体的にそれが残念だったかな」

雷華「ラストシーンの公聴会にすべてを持って行ってるところはあるね」

小城「途中の奥さんの会話とかで重苦しい空気がずっと続いてたのも良くなかったね」

雷華「ちなみに運輸局の人の名誉のために言うけど、作中、すごい嫌な人に描かれてるけど、あれはドラマのために盛ってます」


 映画用にドラマチックにするために嫌味なキャラ付けをされてるようですが、実際はもっと簡素で事務的なやり取りだったそうです。


雷華「疑われたのは事実だけど、あそこまで対応が酷かったわけではないです」

小城「映画にするにあたって多少なりとも持ってる部分は『生きてこそ』も併せてあるだろうね」

雷華「俺は最後の逆転するカタルシスが好きなんだけどね」

小城「どうせ盛るんだったら、もうちょっとフィクションに寄せてもいいんじゃないかな」

雷華「まぁね」

小城「ただ、そうすると実際の人物に影響を与えるから難しいのかな」

雷華「あんまり盛り過ぎちゃうと風評被害的なのもあるだろうし、だからサリー機長にフォーカスをとことん当てたんだろうね」

小城「そこら辺を加味しても、ドキュメンタリー以上の感想が出てこないんだよね。映画ではなかったかな、て」

雷華「難しいところだね」

小城「この手の映画の問題点というか、オチとか山とかがないってのはノンフィクションとしては十分にあり得るんだけど、それが映画として面白いのか? みたいな」

雷華「ノンフィクションやドキュメンタリーとして作るだけにね」

小城「完全な悪を作り辛いんだよね。フィクションだったら許される悪が、実在してるからその人に対する影響とかを考えると」

雷華「これが歴史ものとかだったりすると盛れたりするんだけどね」

小城「影響がほとんどないからね」

雷華「『生きてこそ』もこれも、わりと新しめの事故だからね。関係者が生きてるだけに扱いが難しいんだろうね」

小城「でも徳川の子孫とか実際にいるみたいだけど、ああいう人たちはどんな気持ちで見てるんだろうね」

雷華「FGOの話だけど、外国の掲示板にナイチンゲールの子孫が登場したことはあるらしいね」

小城「噂で聞いたことある(笑」

雷華「その人は戸惑ってはいたけど好意的に受け止めてたみたいだよ(笑」


 『FGO ナイチンゲール 子孫』で検索すれば出てきます。


雷華「この事故は2009年の事故だから、影響出る人が多いだろうから下手なことはできない、てのはあるだろうね」

小城「近代史に名を遺す人の話は特にそうだね。日本でいうと昭和以後の話だと関係者が生きてることは多いからね」

雷華「大正あたりでもいる可能性があるし」

小城「でも、やっぱもうちょっとファンタジーしてる映画のほうが好きだな」

雷華「せっかく映画で見るならそういうのがいいってのはあるね」

小城「だからこそ、狙ってみない映画ではあるんだよ」

雷華「俺も最初見たときはもう少し山あり谷ありの展開かと思ってたんだけど、淡々と重苦しい場面が続く映画なんだよ。だからこそ最後が好きっていうのもあるんだけどね」

小城「点数でいうと、難しいんだけど65点ギリ、かな」

雷華「悪くないかな、てラインですね」

小城「特にこれと言ってこのシーン凄く良かったていうのもなくて、終始暗めでサリーに関しても内面描写が少なくて、感情移入が難しかったのもある」

雷華「まぁ、悩み過ぎて幻覚は見るけどね」

小城「そういうところは盛らなくていい(笑」

雷華「そりゃ同僚も心配するよ」

小城「そっちじゃなくてドラマの部分を盛ってほしい(笑」


・コープスパーティー

 学園祭の準備のために学校で居残りをしていた生徒たちは、転校する生徒のためにしあわせのサチコさんというお呪いを行う。だが、儀式が終わると同時に地震が起き、校舎が崩れ去り、それに巻き込まれた生徒たちは気づけば古ぼけた天神小学校にいた。状況が呑み込めない生徒たちへ、さまざまな怪異が襲い掛かる。生徒たちが無事に脱出することができるのか?


小城「怖くなかったでしょ?」

雷華「なんて言ったらいいのかな……怖くなかったといえば嘘になるのよ」

小城「え、あれ怖かった?」

雷華「和ホラーテイストの雰囲気苦手だなぁ……ちょっとキツイなぁ……と思うんだけど」

小城「うん」

雷華「思ってると唐突にB級映画感が入ってくるというか(笑」

小城「先生の頭カチ割られるシーンとかね(笑」

雷華「『この雰囲気苦手や、どう見ても和ホラーやんか』て思ってるところに急にB級ホラー感が顔出してくるんだよね」

小城「だからそういう映画だって言ったじゃん」

雷華「感情の置き所が凄い難しかった(笑」

小城(爆笑)

雷華「『和ホラー怖い怖い』て思ってるところに急にB級映画感出てきて『あ、こういうの好き』てなるみたいな……ちょっとね、脳内プチパニックになったね」


 感想を聞いてひたすら爆笑してる小城。


小城「感情が飽和してる(笑」

雷華「総括すると雰囲気は和ホラーなんだけど、所々に出てくるチープ感が俺の好きなB級映画館があって、その振り幅が激しくてどういった感情で見たらいいかわからなかった(笑」

小城「『和ホラーは苦手だけどこのB級映画感は好き』みたいな?(笑」

雷華「そうそう(笑」

小城「補足しておくと、ゲームは一応マルチエンディングです」

雷華「今回の映画のEDはどのラインなの?」

小城「トゥルーエンドではない」

雷華「ノーマルエンドみたいなところか。個人的にはあの終わり方は好きです」

小城「腕エンド?」

雷華「あの意地悪な感じはB級映画感があって好き。ハッピーエンドに見せかけて実はバッドエンドでした! みたいな」

小城「そこに至るまでに明確な悪意があるんだよね、仲間内の」

雷華「あいつマジ糞だな、て」

小城(笑)

雷華「お前の提案のせいでこうなったのに、さらにそれをするのか!ていう(笑」※2


 ※2

 篠崎あゆみのこと。幸せのサチコさんというおまじないを提案した結果、今回の事件を引き起こすきっかけとなった。主人公の持田哲志に好意を寄せており、彼の幼馴染である中嶋直美に嫉妬するあまり、彼女が元の世界に帰れないように工作をする。

 それ気付いた主人公がヒロインの身代わりとなり、結果的に腕だけしか元の世界に戻ってこれなかったという衝撃の結末を迎える。上記で話している腕エンドとはこのこと。


雷華「なんか調べてみたら呪いの影響かなんか受けてるらしいんだけど、劇中で説明がないから『こいつクソだな』て(笑」

小城「事前に言ってた通り、面白い映画ではないんだよ。見て満足した、ていう映画じゃなくて和ホラーの雰囲気を楽しんでもらえたらいいかな、て感じ(笑」

雷華「これね、俺の中で評価が難しいんだ。ラストの終わり方がね、俺の好きな終わり方だから、若干、肯定よりなんだよね(笑」

小城「そういう感想を持ってくれたのなら、今回のプレゼンは俺的には成功。和ホラーの雰囲気を楽しんでくれたらなら8割成功」

雷華「和ホラーの雰囲気楽しんだ……? なんかジェットコースター乗ってる気分だったけど」

小城「ちなみに俺はあの映画で一番好きなシーンは、先生の頭カチ割られるシーンです。頑張って雰囲気作ってるのに途端にB級に振り切れるところ」

雷華「あそこ完全にB級映画のモンスター出てきたあたりの下りだよね」

小城「一瞬で低予算のVシネに振り切れたんだよね」

雷華「俺はあの後の先生の頭がばっくり割れて血が流れるシーンのチープ感が好きだよ」


 会話だけ見ると完全にサイコパスですが、B級映画ではよくあることです、多分。


雷華「あからさまに顔の部分が作りものだな、て(笑」

小城「ゲームの感想なんだけど、何が怖いって幽霊に追いかけられるときに、操作しても上手く動かなくて、思うように逃げられないのよ」

雷華「恐怖に対面してうまく動けないのをシステム的に再現してるのね」

小城「逃げるために必死に方向キーを押してるのに、意図的に入力がズレるようにできてて、そのせいでめちゃくちゃ怖いの。『なんで動かないんだよ、動け!動け!』みたいに」

雷華「そういう怖さは映画には無かったね」

小城「だからね、怖さで言うと原作の10分の1くらいなんだよね。原作は、俺がやったゲームの中で過去一怖かった」

雷華「再現としては難しい部分だね」

小城「できてたら『呪怨』とか『リング』レベルの名ホラーになってたと思うよ」


 原作がある映画の場合、多くの原作はその媒体にあった演出で作られているので、それを他の媒体で再現する場合、どう落とし込むかは見どころの一つですね。


雷華「正直、これはホラーというか分類としてはB級になるね」

小城「間違いなくB級ではある」

雷華「できたかどうかは置いておいて、雰囲気を作ろうとしてのはわかるし、よくできてたと思うけど、人が死ぬシーンが完全にB級なんだよな」

小城「唐突にチープになる瞬間が明確に判るんだよね」

雷華「その瞬間に俺の中のB級映画好きがポッと顔を出すんだよね(笑)

   いやぁ、評価難しい作品だったわ本当に……」

小城(笑)

雷華「俺の一番好きなシーンはね、霊媒師の先生が取った録画を見るシーンあるじゃない」

小城「うん」

雷華「あのシーンで、ハンマー持ってる男にスタッフが不用意に声かけて殺されるじゃない?

   あそこで綺麗に頭だけ吹っ飛ぶところが好きです」

小城「綺麗に頭だけ潰れるんだよね」

雷華「刃物じゃないんだからそうはならんやろって(笑」

小城「なっちゃうんだよね(笑」

雷華「頭だけ綺麗に弾けるってどんな職人技だよ(笑」


 冒頭の先生が殺されるシーンとは大違いである。


雷華「和ホラーとして楽しめたかはわからないけど、B級映画としては割と好みな映画でしたね」

小城「これでちゃんと土台を作ったから、ガチめのホラーも見れますね」

雷華「ガチめのホラーはまだ無理だけど、一個、評価してる部分があって」

小城「うん?」

雷華「壁にたたきつけられて死んだ子いるじゃん? あそこの壁に叩きつけられた死体の造形は頑張ってた」※3


 ※3

 鈴本繭のこと。持ち前の優しさから保健室で子供の亡霊二人と仲良くなるも、危険を訴える仲間の言葉にも耳を貸さず、暴走した亡霊の手によって廊下を引き摺られ、壁に叩きつけられて死亡する。死体が原形を留めないほどの無残な姿となった。


雷華「そんなに見てないから偏見かもしれないが、和ホラーて内臓をあまり出さないで血糊だけで済ませるイメージがあって、ちゃんと内臓まで作りこんでたのは頑張ってたと思う」

小城「あそこは忠実に再現してたね」

雷華「ただ、引き摺られてるシーンがスピード感がなかったね(笑」

小城「この手の映画にありがちな『そうはならんやろ』だよね。その速度なら追いつけるだろって(笑」

雷華「あと、ヒロインの子が足を怪我してたのに後半で完全に忘れられてる」※4


 ※4

 中嶋直美のこと。隔離された小学校に引き込まれる際に足首を怪我したために、序盤は上手く歩くこともできず、追いかけてくる怪異に追いつかれそうになることが何度か描写されている。


雷華「序盤、さんざん足をくじいて動けない、て描写を入れたのに途中から元気に歩いてるっていう……。多分、そういう所にB級映画感を感じちゃうんだと思う」

小城「チープさが隠し切れないんだよね」

雷華「どうしても出てきてしまうチープさが好きなんだよ(笑」

小城「ちなみに俺は二作目を見返す元気はないです」

雷華「二作目は俺も……見る気はないです。やっぱ和ホラー感がどうしても辛い(笑」

小城「ちなみにひぐらしの方はこれよりもっと楽です。ひぐらしは怖いとかじゃなくてただただ体力を奪われます」

雷華「どういうことなの……(困惑」

小城「この手の映画に言えるのは見終わった後に『なんでこの映画を見たんだろう』という虚無感なんだけど、コープスパーティーは幸いそれがない」

雷華「うむ」

小城「俺が一番、それを感じたのは『デビルマン(実写版)』と『バトルハッスル』なんだけど」

雷華「友達を失うんだっけ?」

小城「バトルハッスルはね……友達を無くすから見せられない」


 映画に対する評価ではない。


雷華「映画を見て友達を無くすってなかなかないけどね」

小城「友達を無くすというか、信頼を失う」

雷華「怖い」

小城「だから俺は絶対にこの映画をお薦めしないんだけど、これだけ言うとお前、ちょっと興味出てるでしょ」

雷華「1回見てみたいな、ておもっちゃうな……見て後悔しそうだけど(笑」


 怖いもの見たさの心理。


小城「B級ですらないんだよな」

雷華「Z級?」

小城「あえて付けるなD級」

雷華「そこまで振り切れてないから逆に面白くないみたいな?」

小城「ただ辛い映画なんだけど、実写化映画で探してると、そういうのに突き当たる」

雷華「実写化は当たり外れが激しいから」

小城「実写化で当たりって思える映画は中々なくて、近年ではるろうに剣心かな」

雷華「あー、結構ヒットしたね」

小城「一般層を取り込もうとして作られてて、普通に面白いんだよね」

雷華「ネタ的な要素はないね……無いほうがいいんだけど」


・次は何を見る?


小城「今回はね、特に考えてなかったんだけど」

雷華「2週連続で人が死なない映画だったし、そろそろ人が死ぬ映画を薦めたいね」

小城「駄目な映画を薦める人って思われたくないから、そろそろ真面目な映画を薦めとかないとな」

雷華「今回のは真面目ではないと」

小城「コープスパーティーを真面目な映画で薦めてくる奴はぶん殴っていいよ」

雷華「まぁ、正気を疑うよね……大丈夫かなこいつ、て」

小城「感受性を疑ってしまう、それはそれで面白いかもしれないけど」


 そんな会話をしながら数分後。


小城「じゃあ、今回は南極料理人にします」

雷華「一番最初におすすめしてきたやつだね」(第1回参照)

小城「本当に面白い映画だから、進めるタイミングは今だと思う」

雷華「コープスパーティーで下げた分ね」

小城「それは目的があったから薦めたし、ある程度の結果は残せたからね」

雷華「ろくでもない目的だな」


 良い子はマネしないでね(切実。


雷華「ミッションインポッシブルとか見てるよな」

小城「実は見たことがない」

雷華「そうなの?」

小城「ダイハードとかもそうだけど、みんなが見てる名作を見てないのは結構ある」

雷華「じゃあ、ミッションインポッシブルにしようか。最近、重い映画ばっかだったし」

小城「じゃあ、それで」


次回「ミッションインポッシブル/南極料理人」

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