第6話 それならそうと

それからの僕の人生なんて、

大して面白い話しは無い。


父の会社が倒産したり、

初めて女性と付き合ったり、

すぐに別れたり。


一応、大学は卒業したよ。

その為に修ちゃんがお金を残して呉れたのだもの。


足りなかったけれど・・・


意外と掛かるものだね~

奨学金も結局は借金だからね。

借金は嫌だ。


国立大学の学生ってアルバイトも実入りが良いんだ。

家庭教師が一番お得!

”彼女”の言う通りに教えたら成績がグングン上がるから

親御さんも大喜びでね。

卒業するまでに三百万ほど貯金が出来た。


ちょうどその頃にインターネットが

普及し始めて、株式や為替取引がネットで

出来る様になったんだよ。


”彼女”の勧めで始めたら、簡単に資金が増えた。

負けないバクチだね。


卑怯?反則?


うん、そうだよね~

でも、バクチに手を出すのだから

負けるのも覚悟の上でしょう?

それが嫌ならやめときなさいよって話しだよ。


初恋も経験したな。

修ちゃんのは恋じゃないよ。

もっと深いんだ。

恋みたいな軽いものじゃない。


その人は修ちゃんと同じ匂いがしたんだ。

懐かしくて、うっかり好きになっちゃったよ。

でも病気で死んじゃった。


そして僕も、もうすぐ死ぬ。

脳腫瘍だってさ。


頭が割れそうに痛いんだよ。

でも割れないから、代わりに目玉が

飛び出そうになるんだ。


でも飛び出ないから、代わりによだれや鼻水やおしっこや

ウンチが出る。


こっちは出る。


場所が悪くて手術は出来ないそうなんだ。

まぁ、仕方が無いよね。

死ぬときは死ぬものさ。


その痛みも、もう感じない。

いよいよだな。


『生命活動が低下してきました、

数分後に停止すると思われます。』


(あぁ・・・

死ぬのか・・・

もう痛みも感じない・・・

君がいてくれたのに・・・

こんな結果で・・・ごめんね。)


『いえ大丈夫ですよ、転生先では

充実した人生になる筈ですから。』


(え・・・転生するの?)


『はい、そうですよ。

その為に私が居るのですから。』


(そんな話・・・初めて聞いた・・・

それならそうと・・・早く・・・

言ってよ・・・)


こうして高橋 明の人生は終わった。

はたして”彼女”は妄想の産物なのか?

それとも本当に居たのか?

何の為に?

それは誰にも分からない。


***


完 ご愛読ありがとう御座いました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

我思うけれど我在り?~そして僕は聖女になった おじむ @ogin0011

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ