2.サンタさんに会った翌日

 私はすぐに眠りに落ちてしまって、

 サンタさんがどこから出て行ったのかわからなかった。

 

 翌日、彼女は母親に聞いた。

「サンタさんって、夜おうちに来たの?」

 母親は朝ごはんを作っていて彼女に背を向けたまま答えた。


「どうかな? 何も枕元になかったのよね。来ていないんじゃないのかな」

「来てないの? ……そうだよね」

 本当は来ているのだと主張したかった彼女だが、

 神様の内緒にしていればいいことがあるという

 言葉を思い出し口をつぐんだ。


 食事も終わったときに母親は思い出したように言った。

「さて、お母さんもあなたの片付けのお手伝いしなくちゃね」

「いやだ。自分でする」

 もともと大人びている発言の多かったからか、何も思われずにすんだ。

「そう。すごいえらいわよ。早速片付けるボックスを用意するわね」

 母は鼻歌交じりに答えた。子供の成長が嬉しかったらしい。

 何も疑問に思われずにすんだのだった。


 その日の午後、幼い彼女は悩んでいた。

「ベッドの下かなぁ」

 いくら一人で出来ると主張してみても、所詮五歳児。

 

 小学生にも上がらない子供の言うことを

 真に受ける母親はどこにもいない。


 洗濯物をとるためとか幼稚園の手紙みせてとかいって

 何かとへやに入ってくる。


 その時足音が聞こえた。軽い足取りで向かってくる。

「ほら、片付けるボックスを持ってきたわ。

 じゃお母さんも手伝うわね」

「いい。ちゃんと自分でできるから平気だもん」


 頑固な様子に母親は折れたのか立ち上がって部屋を出て行ってくれた。

「よし、やるぞ!」


 意気込んだはいいもののどれをどこにしまえばいいのかわからない。

 もうすぐ小学校へ入学ということで学習机を買ってくれた。

 本棚もある。

 しかしお気に入りのものがたくさんあって入らない。

 ぬいぐるみ、パズル。

 絵本は入ってもこれらを入れるスペースではないから違和感なのだ。

 試行錯誤していると母親が入ってきた。


「やっぱりね。だから手伝うといっているの。ぬいぐるみはここね」

 どんどん整理していく。

 ベッドの近くに来たときに彼女はストップをかけた。

「もうずいぶんきれいになったよ。ありがとう」

「そう? お片づけはこんな風に進めるの。

 これで学校に行ってお友達を作ってもうちに呼べるわね」

「うん」


 母親はルンルンと楽しそうに出て行った。

 彼女はほっとした。瓶までは気づかれずに済んだ。

 

 埃はかぶってしまうけれど、園児はここしかないと思った。ベッドの下。

「いい事ありますように」

 

 毎夜、引っ張り出してはいい事ありますようにと願っていた。









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