6.別れの事実

「変なこと言ってもいいか?」


「俺ね、サンタクロースを信じているんだ。

 それが前の彼女に振られた原因なんだ」

 

 この話にもまたドキリとした。

 カノジョは別れに納得しているのだろうか?

 

 世界一、幸せだと言っていたのに。

 彼を受け止められなかったのだろうか。

 

 二重にショックだった。

 私もまだ信じていたから。


「いまどきおかしいよな。サンタを信じているやつなんて」

「そうかな? 何を信じるかは自由じゃない?」

「そういってくれるんだな。

 本当なんだ。

 5歳くらいだったかな。

 その時に白髭のサンタが現れて、

『これを持っているといいことあるんだ』って

 言って小瓶をくれたんだ」


「それってどんな色の小瓶なの?」

「手のひらサイズの小さな瓶だよ。茶色ががっていて。

 あ、ビール瓶みたいな色しているな」


 彼女は確認するようにポツリポツリと繰り返した。

「サンタさんが小瓶をくれたんだ。

 もらってこと秘密にしておかないといけないとかいわれなかった?」


「――言われたよ。ただし十歳まで。

 十歳を過ぎたら周りの人に行ってもいいって言われたんだ」

「五年間位、隠してたんだ」


「ああ。うちってマンション暮らしだから。家族に隠すことが大変だったよ」

「もしかして、ベッドとかの下に隠してたんじゃ?」


「そうだよ。よく知っているな」

 彼女は意を決して打ち明けた。


「私もそうなの」

 これまでのいきさつを打ち明けた。

「サンタさんはこれを人に見つからずにいると

 いいことがあるって言っていたんだけど。

 わたし、あの小瓶の中を見たことがないのよ」


「僕もない」

 振ってもコロコロと音がする。

 もうそれほど重くもない。


「二人で会って、同時に開けてみましょうよ」

 今日はイブだ。

 明日持ってこれる。

「ええ」


「いっそクリスマスに二人で開けてみないか?」

「いいわよ」


 彼はあっさりと帰っていった。

 嬉しかったのかもしれない。

 仲間を見つけられて。


 ☆☆☆

 私はどうなのだろか。

 同士は見つけられた。

 もしかしたら同じサンタさんに会ったのかもしれない。

 嬉しい。

 

 でも恋心とはまた違う気がする。


 彼は恋人として打ち明けたのだろうか?

 それとも友達として?

 彼の考えはわからなかった。


 誰にも言えなかった秘密を打ち明けられて嬉しいんだ。

 明日、自分の気持ちにも答えが出るだろうか。

 何か変わってほしい。

 願いながら帰路につく。






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