第43話 妹
俺がダンジョンを旅立とうとしていたそのときだ。
コハネが急にやってきて、こういった。
「ユノン兄さま! 大変……! ユキハが……!」
「ど、どうした……!?」
「そ、それが……急に病状が悪化したんですの……」
「何だって……!?」
俺はいそいで寝室へと走る。
まさか、俺がダンジョンなんかに連れてきたから……?
いや、前からユキハはそう長くはないとは言われていた。
でも……こんなとき、俺はどうすればいいんだ!
「ユキハ!」
「けほ……けほ……に、兄さん……?」
「大丈夫か……!」
「う、うん……ちょっと、息が苦し――」
大変だ、ユキハがすごく苦しそうにしている。
俺は自分の無能さを嘆いた。
ユキハの状態がこんなにも悪くなっていたのに……。
俺はギルティアへの復讐を考えるあまり、こんなになるまで気がつかなかったなんて……!
「ど、どうしよう……!」
俺は頭を抱える。
しかし、後ろから魔王ラヴィエナがやってきて、こう言った。
「なんじゃ、まだ気づかんのか?」
「は……?」
なにを言ってるんだコイツは……。
魔王だからって、俺の妹がこんなに苦しんでいるのにそんな澄ました顔をしやがって!
「婿殿、お前さんにはその娘を治すだけの、力があるだろう?」
「え……?」
俺に……そんな力が……?
「ど、どういうことだ……!?」
「私だよ」
ラヴィエナは自分のことを指さした。
ラヴィエナが……?
「ユキハを……治せるのか……?」
「当然だ。私は仮にも魔王だぞ……?」
ラヴィエナはユキハにそっと触れる。
そして……。
「ふん……!」
――ぱあああ!
まばゆい光に包まれて、ユキハの表情はどんどん良くなっていった。
「す、すごい……! ありがとうラヴィエナ!」
「ま、まあ……婿殿の妹を元気にするくらい、当然の役目だ」
でも、いったいどうして魔王にそんな力が……?
「どういうことなんだ……?」
「なに、簡単なことだ。婿殿の妹は、魔族風邪じゃよ」
「魔族風邪……?」
「普通、人間はひかないのだがな……。稀に、生まれつき魔力が高い者によくある」
「そうだったのか……」
つまり、魔王たち魔族側にはよくある病気なんだな……。
でも、ユキハが生まれつき魔力が高いって……。
まあ、たしかに俺も人よりは高いほうだったかもしれない……。
魔力を鍛えるまえのことなんて、もう忘れてしまったけど。
「まあ、とにかくユキハが無事でよかった……。妹を助けてくれてありがとうラヴィエナ!」
「これで私にも惚れ直したか……?」
「あ、ああ…………いいやつなんだな……」
ラヴィエナの顔がかぁっと赤くなる。
彼女と出会えて、本当によかった。
俺は今、自分の運命に感謝していた。
ギルティアも倒せたことだし、妹の病気も完治した。
「あとは、俺が身体を取り戻すだけ――」
いよいよ、俺はダンジョンを出る。
そして、王城へ――!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます