二人に関して喧嘩するほど仲がいいってのは嘘

 俺たちの両親と二人の両親は、俺たちが友だちと知るなり打ち解けていった。今ごろどこかの部屋で盛り上がっているのだろう。


 ここは、宿の一室。


 机を囲んで座る四人。


「マルコとエリザはデートかな?」


 まずはずっと聞きたかったことを聞いてみた。

 だってな、二人一緒にいたんだからこれはもう、できているだろう。


 マルコだってルームメイトなんだから教えてくれたって良かったじゃないか。


 エリザはエリザで俺とパーティー組んでたけど、それはだめだろ。マルコが嫉妬するよ?


「違うわよ!コイツとは幼なじみで毎年、家族でここに来るの!こんな男とデートだなんて勘違いしないでよね!」


 うわ〜、エリザの表情で分かる。

 これ本当のやつだ。その上、マルコのことを一切異性として意識していない。


 マルコ大丈夫かな?もしかして、エリザに気があったり……


「そうだ。変な勘違いするな」


 ノーダメージだ。


 どうやら、二人は本当に家族ぐるみの旅行らしい。


 というか、幼なじみっていいよね。産まれた瞬間友だちが自動的にできるんだから。


 俺の家の近所は老人夫婦ばかりで子供がいなかったからな。


「それで、そこの女の子は?さっきあなたのいもう――「婚約者です」だって……言ってた…け、ど」


 エリザの言葉を途中遮るソフィア。


「いも――」


「婚約者です」


 そんなに婚約者に固執する必要あるの?


「私は隣に座るフィン・トレードさんの婚約者のソフィア・トレ……ソフィアです」


 名前は最後まで言おうな。


 というか、ソフィアはどうして俺たちが兄妹だって隠すんだよ。


「そう、よろしく。ソフィア・さん」


 エリザも挑発しないで。


「……ところであなたはお兄ちゃんとどのようなご関係で?」


「私とフィンは生涯のパートナーといったところね。切っても切れない関係。一蓮托生」


 そんなバカな。よくそんな嘘がペラペラと吐けるな。

 俺とエリザは友だちだよ。


「本当なの、お兄ちゃん?」


 ソフィアが俺に聞いてくる。

 エリザには悪いがここは本当のことを言わせて貰うよ。


「エリザとはただのとも――」


「ついこの間も二人っきりでお出かけに行ったわよ」


 だから、嘘を……あ、冒険者のパーティーのことか。

 それなら、かなりずれてはいるが合っている。


「そうだな。だけど――」


「そういうことよ。ソフィア・トレードさん」


 ねえエリザ、さっきから俺の言葉を遮らないでくれる?

 一番大事なことが言えないんだけど。


「ところで、ソフィア・トレードさんは妹であるにも関わらずさっきからフィンの婚約者とか言ってるけど、どういうことなの?」


 二人ともさっきから言葉トゲトゲしてるよ?

 初対面だよね。

 何でそんなに仲が悪いの?


 マルコはどうしているんだろう。


 俺はマルコが座っている方へ視線を移す。


 ッ!!いない?!


 マルコは姿を消していた。

 そうか、逃げたのか。じゃあ俺も。


 俺は二人にバレないようにそっと立ち上がる。

 そして、後ろに歩き出す。


「「ねェ、どこ行くのォ?」」


 ひぃ。


 俺はさっと元の位置に戻り正座をする。


 この、会議的なやつは朝日が昇るくらいまで続いた。



◆◇◆◇◆◇



 目覚めにしては遅い昼過ぎ。


 俺は目を覚ました。


 隣を見ると死んだように眠っているソフィアとエリザ。


 俺は二人について考える。

 二人は何故か仲が悪い。犬猿の仲だ。

 しかし、俺は二人とも仲良くして欲しい。


 どうすれば……。


 ま、とりあえず一緒に行動させとけばなんとかなるだろう。


「二人とも起きて、海で遊ぼう」


 海に行こう。海は人と人の絆を深くするんだ。

 決して俺が行きたいだけではない。


「海、いくぅ〜」


 海を楽しみにしていたソフィアが立ち上がる。


「エリザは?」


 エリザに聞くがまだ眠ったまま起き上がらない。


「……水着ない」


 ボソッと拗ねたように言う、エリザ。


「お兄ちゃん、早く海行こう!」


 ソフィアにも聞こえたのかより一層海に行きたがる。酷くない?


「まずはエリザの水着を買いに行こう?」


 俺も正直言うと海に行きたい。

 だけど、俺はソフィアとエリザが仲良くなってほしい。

 エリザは知らないけど、ソフィアはまだ友だちいないだろ?


「いいよ……私の水着って幼い感じしてたし。ここでいいの買って、悩殺しちゃえ」


 お、やけに素直に聞いてくれたな。

 これは、エリザに少しでも歩み寄ろうとしたのかな。


「じゃあ、準備して行こうか」



◆◇◆◇◆◇



「お兄ちゃん、こっちとこっちどっちがいい?」


 ソフィアが面積の小さい黒いビキニと白いビキニを俺に見せる。


 もっと面積大きくした方がいいんじゃない?

 それに、ソフィアは水着ちゃんと持っているよね。


 ここは、女性の水着売り場。本来なら男性は横目で見ることしかできないはずのエデン。


 だがしかし、そこは決してエデンなどではなかった。


 まず、周りの女性の視線が痛い。そっちに目を向けようものなら、殺さんばかりの眼力で睨まれる。


 そして、


「フィン、私に合いそうな水着を選びなさい」


「それくらい、自分で選んだらどうですか?」


「はあ?」


 二人とも、もっと仲良くして!

 

 



 




 



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る