流行には乗って行け

 今、来ている。


 アラード学園で学年、性別問わず来ているんだ。


 冒険者ブーム。


 そう。今、学園では冒険者となり仲間と共に狩りをするのが流行っている。


 なので、俺もその波に乗ろうかと思っている。


「ということで、一緒にパーティーを組まない?」


 教室にて、俺は一緒に昼食を食べているアリスを誘ってみる。


「お誘いありがとうございます。けれども私は立場上そういった危険なことするのは禁じられていますので。すみません」


 そうか。聖女だもんな、アリスは。


「気にしないで。……と、なるとソロか」


「どうして私は誘わないの?!」


 隣に座っていたエリザが机を叩いて叫んだ。


 エリザが何故ここにいるのかというと。

 俺とアリスが一緒に食べているのを見て、エリザも一緒に食べたくなったらしい。


「え?エリザ、いつからいたの?」


「はじめからいたわよ!」


 そうそう、これこれ。

 なんか友だちっぽい。


 もう、エリザ好き。


「冗談だ」


 やっぱり、冗談を言える友だちはいいな。


 アリスは真面目だから俺の言った冗談をすぐに信じ込むんだ。

 まあ、そういうところがアリスの良いところなんだけれど。


「あまり、そういうの言わないでよね。思わず魔法を撃っちゃいそうになるわ」


「もう、言わないよ」


 冗談を言えるような友だち欲しいな〜。


「そ、それより、パーティーのことだけど」


「ああ、俺と一緒に組んでくれないか?」


「しょうがないわね!」


 おい。少し、いやかなり顔がニヤついてるぞ。



◆◇◆◇◆◇



 冒険者ギルドというものがある。


 そこで、依頼を受けることができるのだが、その前に登録しないといけない。


「あの、冒険者登録をしたいのですが」


 やはり安定の美人の受付嬢。


「はい、では試験はいつ行いますか?」


 あ、登録って試験いるのね。


「どうする、エリザ?」


 隣にいるエリザに聞いてみる。


「今日でいいわよ」


 エリザは今日でいいのか。


「じゃあ、今日でお願いします」



◆◇◆◇◆◇



 試験では何をするのかと思ったら、どうやらCランク冒険者と戦うらしい。


 ギルド側は戦いを通してその人の実力やポテンシャルを測る。

 それが基準を達していれば合格。


 つまり、倒せばいいってことか。


「俺が試験を担当する、アレスだ」


 ギルドの地下にある闘技場にて、俺とアレスが向き合い剣を構える。


「フィン・トレードです。よろしくおねがいします」


 師匠が言っていた。


 冒険者はCランクが普通だと。


 つまり、これは負けられない。


 さあ、アレスさん。どっちが普通か決めましょう。


 ん?勝てば普通なの?普通に勝ったら普通より強い奴じゃね?

 負けたら、普通より弱い奴。


 あれ?分かんね。


「来い!」


 あ〜もうどうとでもなれ!


 俺が普通だ!!


 その場で剣を一閃。

 斬撃はアレスさんの方へ飛んで行く。


 そして、俺はアレスさんの後ろへ走り込む。


「おいおい、そんなんじゃ俺の背後は取れねぇぞ!」


 アレスさんは後ろに回り込んだ俺へと体を向ける。


 何?背後からの剣撃を無視するのか。なら、どうやって背中に迫る斬撃を対処するのか……。


「ぐぇっ」


 ……は?


 何してんだ?普通に当たったぞ?まさか、気づいてなかったとか……。


 倒れ伏すアレスさん。


「ははっ、まさかこんなガキに一本取られるなんてな。油断してたぜ。おい、何ボケっとしている。試験は三回勝負ってこと忘れたのか」


 いえ、一回ですよ。

 それに、勝負じゃなくて試験です。


 分かった。アレスさんの実力はCランクでも下の方なんだろう。


「さあ、来い!」


 これ、本当にするのか。


 俺は同じように斬撃を放つ。

 今度は俺は動かない。


「捉え――ぐぇっ」


 再び地面に伏すアレスさん。


「ははっ、からくりが分かったぜ。さあ、来い!」


 からくりもなにもただ普通に斬撃を飛ばしているだけです。


 まあ、いいや。


 ほいっ、と。


「見えた――ぐぇっ」


 よし、これで終わりだよな?


「どこへ行く?勝負は十回だぜ?」


「……マジかよ」



◆◇◆◇◆◇



「遅かったじゃない、フィン」


 闘技場から出てきた俺にエリザがドリンク片手に寄ってくる。


「そんなに難しかったの?」


「難しいというより面倒くさい」


「……今日は剣なのね。たまに面倒な剣士がいるって聞くわ。まぁ、魔法の私には関係ないけどね」


 確かにいるな。


 受け流しだけがめちゃくちゃ上手い奴。

 エリザはアレスさんをそれだと勘違いしているらしい。


「エリザ、応援している。本気でぶっ飛ばして来い」


 そして、同じ目にあって来い。


「い、言われるまでもないわっ!」



◆◇◆◇◆◇



「……確かに面倒だったわ」


 エリザが闘技場から出てきたのでドリンク片手に出迎えた。


 エリザはげっそりとしていて、どこか俺を憎むように見ていた。


 その後俺たちは無事に冒険者登録ができた。

 

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