アンノウン・累進課税

架橋 椋香

 いかにそのアカウントのがバカであるかお分かりいただけただろう。実はそのアカウントの中の人はわたしなのだが。まぢ。病むわ。


 終礼前のざわついている教室で机に突っ伏しながら、脈絡もなく自虐的、断裂した言葉を思っていると。周りのクラスメートの私語も、ひと文字ひと文字がちぎれ絡まり合って、暖かい羽毛布団のようになるというのがわたしの定説。であるのだが、今日は上手くいかない、なにか大きな裁ちばさみの影がその見えないきりたんぽを裂いた。


「かさみん、車に轢かれて重体らしいよ」

とスクールカースト"上の中"の女子生徒の声が妙に響いた。かさみんというのはカースト最上位の嵩海かさみという女子生徒のことだ(たぶん)。あの女子生徒はこれを期に自分がトップになってやろうなんて思っていたりするのだろうか。スクールカースト下位以外だったことがないわたしには分からない。


 なんだそんなことか、と机に再び突っ伏すと、肩を叩かれた。起き上がると、左側に杷家和はやかわがいた。杷家和はやかわは最下位の女子。 仲がいい訳ではないがお互い話し相手がいないのでたまに会話を交わす程度だ。

「Nは嵩海のことかわいそうだとか思わないの?」

 わたしの名前は阿歯朶あしだ 燈緒ひおだが、何故か杷家和はやかわはわたしのことを"N"と呼ぶ。

「うん」

「Nってなんか将来の目標とかあんの」

「お腹すいたからパフェが食べたい」

「無いんじゃん」

「君は知らないのかい?パフェの素晴らしさを」

「お前それ生きてて楽しいの?」

「席に帰れよ」

「やだね、寧ろとっとと土に還りたいくれぇだ」

「じゃさっさと身罷みまかれよ」

「お前以外と頭良い?」

「別に。使えそうだから覚えてただけ」

「そ。だからもっと楽しいことしよって言ってんの」

「何が"だから"だよ頭悪い?」

「いろいろあるだろ楽しいことセックスとかアルコールとかニコチンとか」

「お前はセックス酒タバコが楽しいとでも思ってんの?」

と言った辺りで担任が教室に入ってきて静かになったので10弱の眼が注がれたが机に突っ伏して何もなかった振りをしたこうやって何もなかったみたいに居なくなれたらいいのにね

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アンノウン・累進課税 架橋 椋香 @mukunokinokaori

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