第22話  独身生活の終わり

 僕の汚い部屋に、天使のような高貴な存在が、降臨するなんて…。


 記念写真を撮っておこうとスマホを探していると、


「無理ですよ。私の姿は、撮影出来ません」


「でも、世間では、心霊写真とか…」


「あれは、嘘ですね」


 天使のお言葉だから間違いないだろう。


「それよりも死神さん。神様からの伝言です」


(死神を捨てて、人間に変わろうとした事は、許せません。

 しかし、極楽タクシーのアイデアは面白いので、人間の中で生きていく事を許します。   

 人間の子どもが、あなたの肉体と魂を与えるでしょう。

 人となったあなたを育てる代償に、美の女神の造りし、種を母親に、父親には、極楽タクシー運転手に必要な全ての能力を与えます)


「以上です」


 僕の中の死神の存在感が、ぼんやりして、やがて感じられなくなった。


「では、タクシー運転手のお仕事、頑張って下さい。末永くお幸せに」


 天使は、行ってしまった。


 ちょっと待った。


 それって、美の女神の種を亜香里ちゃんが、使った。


 タクシー運転手は、僕だとすると亜香里ちゃんと僕の間に子どもが出来るという事か?


 亜香里ちゃんと目があった。


「つまり、私たち結婚するということね」


 再び亜香里ちゃんが抱きついてきた。


「せっかく生き返ったのに、ご両親と暮らしたほうがよいのでは?」


「無理でしょ。ここまで見かけが、変われば。だいたい自分で極楽まで、連れていったくせに、生き返らせた責任を取ってよね」


 そうだった。あの時は、亜香里ちゃんを蘇らせるのと試験運転で、必死だったので、あまり覚えていないが、極楽に送っていったのは、僕だった。



「あの時、タクシーでの会話を覚えていないの?」


 僕は、狼狽えた。実は、ぼんやり覚えていたのだ。


「いや、でも、何て言ったかな?」


「私が、生まれ変わったら、結婚してくれると言ったのよ」


 口は、災いの元…かな?


 それとも…。



         終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

極楽タクシー @ramia294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ