壊れた歯車 IV

「ああ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ!!!」


ボリボリボリッ!!


ダムは叫びながら仮面を掻き始めた。


「許せない、許せない許せない許せない許せない許せない!!ディの事を傷つける奴は許せない!!!あ、あ、あ、ぁぁぁ!!!」


ダムの叫び声は城中に響いた。


「痛い、痛いよーダム!!僕の事をこんなのにしたマリーシャを早く殺そうよ!!」


「そうだねディ。ディの痛みは僕の痛みでもある。だから、マリーシャを殺して僕達の玩具にしようよ。」


「っ!?」


ディとダムの会話聞いたマリーシャの体がビクッと反応した。


マリーシャを見たロイドはスッとマリーシャを自分の背中で隠した。


「ロ、ロイド?」


「なぁ、アリス。さっき、壊したって言ったよな?どう言う意味なんだ。」


そう言ってロイドはアリスを見つめた。


「そのままの意味だけど、分からなかったの?それとロイド。いつの間にマリーシャを守るナイトになったのかしら?」


アリスは冷たい目をしたままロイドとマリーシャを見つめた。


「マリーシャ。アンタはいつから、ロイドのお姫様になったのかしら。ただの女がいいご身分じゃない。」


「偽物のアンタに言われたくないわよアリス。」


マリーシャの言葉を聞いたアリスは唇を強く噛み締めた。


「ダム!!あの女を殺して!!あの女を守ろうとし

てるロイドも早く!!!」


アリスの言葉を聞いたダムは素早い動きでロイドとマリーシャの元に向かった。


「アハハハハ!!2人の体を繋ぎ合わせてあげるから、死んでも怖くないよぉおおお!!!」


そう言ってダムはロイドに剣を振り下ろそうとした。


「跪け!!!」


ガクンッ!!!


マレフィレスの声を聞いたダムは地面に叩き付けられた。


ダムは体を動かそうとするが、重力の重みで動けないでいた。


「ダム!!!」


ディは慌ててダムに近寄ろうとするが、マレフィレスが再び口を開けた。


「お前も跪けと言っているんだディ、アリス。」


「「っ!?」」


ガクッ!!


ディとアリスの体が地面に叩き付けられた。


「さ、流石…だな。」


「圧倒的な女王様オーラを放ってる…。」


ロイドとマリーシャはマレフィレスを見て呟いた。


カツカツカツカツ。


ヒールの音を鳴らしながらマレフィレスはアリスの前まで歩いた。


アリスの前で足を止めると、マレフィレスは思いっ切りアリスの頭に足を置いた。


ガンッ!!


その光景を見たマッドハッター達は唖然とした。


「お、おい、マレフィレスがアリスの頭を踏みつけたぞ…。」


「あの女を怒らせたら駄目なのが分かったわ…。」


マッドハッターとインディバーはマレフィレスに聞こえないように小声で話した。


「な、なに…するのよ!!足を、足を退けなさいよ!!」


「黙れ小娘。私の許可なく話すな、頭を上げるな。」


そう言ってマレフィレスはアリスの顔を蹴った。


ゴンッ!!!


「ヴッ!!」


アリスの小さな口から血が吐き出された。


ビチャッ!!


「小娘がいい気になるなよ。私の城や騎士団を汚した事、万死に値するぞ。」


マレフィレスは何回もアリスの顔を蹴った。


その光景はとても痛い痛しい物だった。


マッドハッターはこの光景に違和感を感じていた。


(いつも、アリスと一緒にいる仮面の男がいない。)


そう、心の中で思っていた。




マッドハッターside


変だ。


どうして、アリスといつもいるあの男がいないんだ。


おかしい…。


アリスがただ、黙ってマレフィレスの能力に掛かっとは思えない。


「アハハハハ。アンタはやっぱり女王様にはなられないのよ。」


アリスはそう言って不敵な笑みを浮かべた。


「何、笑って…。」


ドサッ!!


アリスとマレフィレスの場所が入れ替わっていた。


「なっ!?」


「どうして、アリスとマレフィレスの場所が入れ替わってんの!!?」


ロイドとマリーシャは驚きの声を上げた。


俺だって驚いている。


一瞬の出来事だった。


どうやってアリスとマレフィレスの場所が入れ替わった?


誰かの能力なのか?


「アハハハハ!!無様ね!!」


アリスはそう言って、マレフィレスの顔を蹴り上げた。


ゴンッ!!


鈍い音が俺の耳に届いた。


「やめろアリス!!」


俺はそう言ってアリスに近寄ろうとした時だった。


俺の背後から人の気配がした。


俺は直ぐ振り返り、銃を構えた。


カチャッ。


後ろに立っていたのは、銃口を俺に向けているミハイルだった。


だが、俺の知っているミハイルではなかった。


笑顔が嘘臭かった。


それと、仮面の男と同じ服を着ていた。


「もしかして、仮面の男はお前だったのかミハイル。」


俺がそう言うとミハイルは笑って「正解。」と言って引き金を引いた。


パァァァァン!!


シュンッ!!


俺は自分の能力でナイを使い銃弾を弾き飛ばした。


「やっぱり簡単には死んでくれませんか。アリスの顔に傷を付けたのは誰?」


「っ!!」


ミハイルの瞳はまるで、死人のように光がなかった。


何だよコイツの目は…。


気色が悪い。


こんな目は初めて見た。


「あー、コイツよ。あたしの顔を傷付けたの。だけど、見てよミハイル!!」


後ろにいるアリスの方を振り向くと、マレフィレスの顔は原型を留めていなかった。


アリスのヒールの先に血と赤い肉片が付いていた。


一体、どれだけ蹴ればこんな事になるのだろう。


アリスはただ、無我夢中になってマレフィレスの顔を蹴り続けていたんだ。


「もう気にしてないから良いよミハイル。」


「アリスが良いなら良いけど…。いきなりいなくなるから心配したよアリス。」


「ウフフ、ミハイルったら心配症なんだから。」


そう言ってアリスはもう一度、マレフィレスの顔を蹴り、ミハイルの所まで歩いて来た。


「嘘…だろ。マレフィレスは死んだのか?」


「分からないわ。だけど、顔の原型が殆どないもの…。生きてたら奇跡よ。」


ロイドの問いにインディバーが答えた。


「余所見してる暇はないよ!!!」


そう言ってダムはロイドに剣を振り下ろした。


ロイドは咄嗟に近くにあった剣を取り、剣を受け止めた。


キィィィン!!!


「ロイド!?大丈夫!?」


「だい…、じょうぶだ。俺の後ろから一歩も出るなよマリーシャ!!」


「わ、分かった。」


「アハハハハ!!ほら、ほらほらほら!!アハハハハ!!」


ダムは容赦なく何度も何度も剣を振り下ろした。


キンキンキンッ!!


グサッ!!


ロイドの体に無数の切り傷ができ始めていた。


「アハハハハ!!こっちも行くよー!!」


ディはそう言ってロイドに剣先を向けながら走って行った。


「そうはさせない!!」

マリーシャはそう言って近くにあった家具をディに


投げ飛ばした。


ガシャーンッ!!


ディが避けた家具は地面に強く落ちた。


マリーシャは自分の持って来た鞭を使い、ディの剣に絡み付かせた。


パシッ!!


「マリーシャの能力鬱陶しいなあ。」


「あたしからしたらアンタ達の方が鬱陶しいわよ!!」


そう言ってマリーシャはディの手から剣を奪った。


だが、ディは隠し持っていた銃を取り出し引き金を引いた。


パァァァァン!!


キィィィン!!


ディの放った銃弾をロイドが剣で弾き飛ばしていた。


ゼロを早く城の外に出さないと…。


俺がミハイルを足止めするしかない。


俺は一瞬だけ、インディバーに視線を送った。


インディバーにはズゥの護衛をしつつ、城の外に出て欲しい。


そう思いながら見つめると、インディバーは軽く頷いた。


そして、アリスとミハイルに気づかれないように動き始めた。


俺はミハイルに向かって引き金を引いた。


パァァァァン!!


確かに放った筈の銃弾がミハイルの前で止まっていた。


「は?!」


俺はもう2発ミハイルに向かって銃弾を放った。


だが、放たれた2発ともミハイルの前で止まった。

 

どうなってるんだ!?


なんで、ミハイルに銃弾が当たらないんだよ!!


「帽子屋さん。この世界の創造主は僕なんですよ。だから誰も俺を傷付ける事が出来ない。こう言う事だって出来るんですよ。」


そう言って、ミハイルは3つの弾丸を掴み気配を消しながら走っているインディバーに投げ付けた。


コイツ!!


インディバー達の行動に気付いていたのか!?


「止まれインディバー!!」


俺はインディバーに向かって叫んだ。


「えっ!?」


インディバーは驚きながらも足を止めた。


飛んで来ている弾丸に気付いたインディバーはズゥに頭を下げるように指示をしていた。


真っ直ぐ飛んでいる弾丸は方向を変え、ズゥの足に弾丸が当たった。


ビュンッ!!


ビチャ


「うがぁぁぁぁあ!!」


本当の狙いはゼロを抱えていたズゥを狙ったのか!?


ズゥは痛みのあまりにゼロを落としそうになったのをインディバーか阻止した。


「ズゥ!?大丈夫!?歩けるの!?」


「いや、無理だよ…。足に力が入らない…。インディバーだけでもゼロちゃんを抱えて外に出て!!」


「本当に良いのねズゥ。」


「良いよ。ゼロちゃんを頼むよインディバー。」


ズゥの言葉を聞いたインディバーはゼロを抱き上げ走り出した。


ミハイルはインディバーに向かって手のひらを広げようとした。


何がする気だ!!


そう思った俺は、慌てて何本かのナイフを操り、ミハイルの首元や袖口にナイフを刺し壁に串刺しにした。


「へぇ、考えましたね帽子屋さん。僕をこうして拘束すれは時間が稼げると思ったんですか?だけど、俺だけ止めても駄目ですよ。」


「何を言って…。っ!?」


俺は急いでアリスの姿を探した。


アリスがどこにもいない!?


どこにいるんだ!?


「跪け!!」


アリスの声がした方向を向くと、インディバーの直ぐ近くにいた。


インディバーは重力の力で地面に叩き付けられていた。


どうしてアリスがマレフィレスの能力を使ってるんだ!?


おかしい、おかしいだろ!?


俺とNight mareが作ったTrick Cardの能力は1人に対して1つしか使えないようにした。


なのに、アリスはどうしてマレフィレスの能力を使えているんだ!?


「言いましたよね。この世界は僕の作ったと。」


ミハイルはそう言って俺に手の平を向けた。


シュンッ!!


俺とミハイルの場所が入れ替わっていた。


「っ?!」


ミハイルはゆっくりインディバーの元に向かって歩いて行った。


やめろ、やめろやめろやめろ!!


「やめろー!!!」


俺は叫びながらナイフをミハイルに飛ばした。


だが、ナイフはミハイルの前でピタッと動きを止めた。


ガジャンガシャン!!


ナイフは音を立てながら地面に落ちた。


インディバーはゼロを守るように抱き締めていた。


「ゼロに手を出すな!!手を出してみろ、お前2人共、殺してやる!!」


俺の言葉はアリスとミハイルには届いていなかった。


「まずはお前から殺してやるよインディバー。」


そう言って、アリスはミハイルから銃を受け取り、インディバーに銃口を向けた。


やっと、やっと、妹を救えたのに。


これからは妹の為に生きようと思ったのに。


ゼロに俺が兄だと告げて謝りたかったのに。


やめろ、やめろやめろやめろやめろやめろやめろ!!


「やめろー!!」


ゴォォオオオオオオオ!!!


インディバーの周りを包むように炎が現れた。


「この炎はまさか!!」


ミハイルはそう言って苦虫を噛み締めるような表情をした。


「間に合ったようだね!!」


そこに現れたのはCATとエース、そして、ジャックだった。


「ゼロに手を出したら殺すぞ、テメェ等。」


ジャックはそう言ってアリスとミハイルを睨みつけた。

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