夜のお誘い

シュュュュウ!!!


どこまで続いているか分からないままボク達は落下していた。


「CAT!!何処まで落ちるんだ!!」


「扉が見えるまでだよ!!」


「扉?」


「ロイドのfieldに繋がる扉だよ。」


ロイドのfield?


あぁ…、CATと初めて会った時の空間の事か。


ロイドもfieldとやらを持って居るのか…。


「見えた!ロイドのfieldに繋がる扉が!!」


CATが指を指しながら大声を上げた。


指の先を見ると扉が開いていて光がボクの目に差し込んで来た。


「眩しい…。」


「このまま行くよゼロ。オレの手を掴んで!!」


ボクはCATの指示通りCATの手を掴んだ。


スピードに乗ったままボク達は扉の中に入った。


ヒュュュュウ!!


ドサッ!!


「あた!!」

CATがもの凄い勢いで地面に体をぶつけていた。


ボクはCATに抱き締めて貰ったお陰で身体に痛みはなかった。


「大丈夫かCAT。」


「ゔ…、へ、平気…。」


「平気そうに見えないが…。」


「ゼロは?体は痛くない?」


自分の体の方が痛い癖にボクの心配をして来たCAT。


この世界の…住人は…いや、ボクの周りにいる奴等はボクの事を気に掛けてくれる。


ボクがアリスの代わりだから?


それともゼロとして心配してくれているのか?

分からない。


こうやって相手の心理や考えている事を探ってしまう事が癖になっている。


「ボクは大丈夫だ。ありがとなCAT。」


そう言うとCATはパッと顔を明るくした。


「そっか!ゼロに怪我がないなら良いんだ!!」


「あぁ、お陰で助かった。」


「ペットとして当然の事をしたまでだよ!」


「そうか…。ここがロイドのfieldか?」


そう言って周りに目を向けた。


黒と白のボーダー柄の床、周りには色んな形の時計がチッチッチと音を鳴らしながら浮いている。


煙草の匂いが鼻に届いた。


「遅かったな。」


煙草を吸いながら歩いて来るロイドの姿が見えた。


ロイドがボクの姿を見て驚いた。


「ゼロ!?怪我してるのか?!」


「え?」


ボクは着ているメイド服に目を向けた。


メイド服にはベットリと返り血が沢山付いていた。


あー、これを見てロイドは驚いたのか。


「コレは返り血だ。」


「返り血?」


「あぁ。」


ボクはハートの城での事を話した。


「今の所、1番怪しいのはマレフィレスとマリーシャだな。アリスの事を1番嫌っているのがこの2人だ。」


「成る程、あまり無茶をするなよゼロ。だが、マレフィレスがアリスの事を調べていたのは謎だな。」


「アリスが黒いドレスを着てナイフを振り回している写真もあったよー。」


「ナイフ?」


CATの言葉にロイドは驚いた。


「そうそう。なんか楽しそーに振り回してる写真だよ。」


「一体どう言う事だ?ナイフ?アリスが?」


ロイドは状況が掴めない様子だった。


「1つ考えられるのはアリスには裏の顔があると言う事だな。」


「裏の顔…だと?」


「あの写真が本物ならそうだろ。あれは快楽殺人鬼と同じ顔をしていた。ボクのいた世界は顔をした奴等ばっかだった。写真に映ったアリスはまさにそうー。」


「アリスはそんな事をしない!!」


ボクの言葉を遮るようにロイドは大声を出した。


「あのさー。前から思ってたんだけどロイド達はさアリスに良いイメージ持ち過ぎじゃない?」


「あ?お前、何言ってんだ?」


ロイドはそう言ってキッと睨み付けた。


「何回でも言ってあげるよ。アリスには裏の顔があるんだよ。いい加減さ、夢を見るのはやめなよ。」


ガバッ!!


ロイドがCATの胸ぐらを掴んだ。


「お前に俺の事をとやかく言う権利はないだろ。アリスの事を知ったような口を聞くな。アリスと1番長時間を一緒に過ごしたのは俺だ。」


「騙されてんじゃないのー?」


「テメェ!!!」


ロイドはアリスの事を信じている。


それは異常な程に…。


だからボクとCATの言葉を信じられないんだ。


「アリスの部屋に鍵が掛かった手帳があったがロイドは知ってるのか?」


ボクはロイドに尋ねた。


「て、手帳?」


「あぁ。その様子だと知らないようだな。」


ボクがそう言うとロイドはCATの胸ぐらを離した。


「知らない…。」


「そうか、なら手帳の鍵を知らないか。その手帳になんらかの情報が書かれているとボクは思っている。まずは手帳の中身を見てみないとアリスの裏の顔について分からないな。」


「手帳の鍵を探して見る訳だねゼロ。」


「その通りだCAT。まだ情報が少ないからアリスに裏の顔があるって断定は出来ないからな。それで良いかロイド。」


そう言ってロイドを見つめた。


「あぁ…頼む。」


ロイドは力のない声で返事をした。


「今日は疲れただろ家に帰ろうゼロ。」


「あぁ。」


「オレも帰るわー。気分悪いし。」


CATはそう言って姿を消した。


まぁCATが気分を悪くするのも無理はない。


ロイドには決定的な証拠を見せないと納得しない事が分かった。


信じたくないのだろうな。


ロイドが出してくれた扉を潜ると、ロイドとアリスの家の前に着いた。


「悪かったなさっきは大きな声を出して。」

申し訳なさそうな顔をしてロイドがボクに謝って来た。


「ボクの事は気にしなくて良い。ロイドが怒ったのはボクには分からないが、アリスの為に怒ったのだろう?だったら気にするな。」


「俺はアリスの事も大切だ。だが、ゼロの事を気にかけるのは当然だろ。」


「大丈夫だ失敗をしないように注意を払う。」


「そう言う事じゃねぇよ…。」


そう言って乱暴に自分の頭を掻いた。


「ロイド?」


「悪い。今日は先に休む。」


「あ、あぁ。」


ロイドはボクの返事を聞かずに家の中に入って行った。


パタンッ。


何が言いたかったんだ?


失敗をするなって意味じゃなかったのか?


ロイドがCATに怒った理由はアリスの事だった。


ボクの事を気にかける理由が分からない。


「この世界は分からない事だらけだな。」


ボクは夕暮れの空を見上げて呟いた。


シャワーを浴びた後、ボクはアリスの部屋を再び探索した。


机の引き出しやクローゼットの中を隈なく探したが手帳の鍵は見つからなかった。


「どこにあるんだ…?」


これだけ探してもないって事は別の場所に隠してある可能が高いな。


この家のどこかにあるのだろうか…。


そんな事を考えていると窓から変な音がした。


コンッコンッコンッ。


何か石みたいな物が窓に当たっている音が暫く続いた。


なんだ?


こんな夜中に。


ボクは机に置いてあった銃を手に取り窓に近付いてた。


ソッと窓の外に視線を向けると黒いロングTシャツのラフな格好をしたジャックが外に立っていた。


「ジャック!?」


ボクは窓を開けた。


どうしてジャックがここにいるんだ!?


「おー。寝てんのかと思ったわ。ちょっと外に出れねぇ?」


「え?」


外?


「ちょ、ちょっと待っててくれ!!直ぐに行く。」


「了解。」


ボクは窓を閉めて急いでクローゼットを開けた。


今の格好だと外に出れないよな…。


チラッと自分の格好に目を向けた。


黒いキャミワンピースと言った露出が多めの服装だった。


「な、何が羽織る物は…。」


アリスの私服はフリフリが多めの服ばかりだ。


ジャンルと言えばロリータ系だ。


その中でもフリフリが少ない白のロングカーデを羽織り外に出た。


黒い大きなバイクの横でジャックは煙草を吸っていた。


トクンッ。


ボクの胸が高まった。


ジャックの姿をジッと見ているとジャックがこちらに気が付いた。


「あ、来た来た。悪いな夜遅くに。」

「あ、い、いや…。大丈夫だけどどうしたんだ?」


「お前とドライブしようと思ってさ、ホイ。」


そう言ってジャックがヘルメットを投げて来た。


「メット?」


「ほら、出発するから後ろ乗れ。」


「どこに行くんだ?」


「内緒ー。」


ジャックが意地悪な顔をしてボクに笑った。


「さっさと乗れよ。」


バイクに跨ったジャックが催促して来た。


ボクは後ろに跨りヘルメットを被った。


「しっかり掴まってろよ。」


「え、あ。」


ジャックがボクの手を取り自分のお腹に巻き付けた。


トクンットクンッ。


「うしっ。出発するぞ。」


そう言ってバイクを走らせた。

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