Pure Love

御厨カイト

Pure Love


「これでよしっと・・・、大丈夫ですか?」


「あ、あぁ、大丈夫だ。どうもありがとう。」


「いえいえ、こちらこそ助けていただきありがとうございました。」


彼女は少し情けなさそうにそう言う。

多分助けられたことで私が傷を負ってしまったからだろう。


と言ってもこれはいつも1人で行動しているからそれが響いただけだろう。

不覚というほかない。


「それにしても・・・えっと・・・」


「・・・ノラだ。」


「ノラさんは凄いですね!強くて優しくて綺麗で・・・」


おっと、この雰囲気は・・・

はぁ、またか・・・


「すごく憧れちゃいます!」


彼女はまるで王子様を見たかのような花のような笑顔でそう言う。



こっちの気も知らず、女たちは私にそんな顔をする。

無防備に頬を染め、何かに期待しているかのような、そんな顔。

別に私は好きでこんな男のような恰好をしているわけではない。


この世界で冒険するには女というだけで大変なのだ。

「女には危険だから。」

そんな一言で依頼を受けさせてもらえない。

なぜ、やる気も勇気も力もあるというのに、そんな偏見で退場させられないといけないのか。


だから私はこの格好で冒険している。

見た目だけでは男だと思われるこの格好で。


だからこそ、面倒なことも起きる。

今みたいに女から好意の目で見られる。


そして、そういう時に限って、私が女であることを言うと「騙したのね!」、「嘘つき!」などと批判して私のもとから去る。


まだ出会ったばかりで夢を見始めたばかりの彼女にこのことを言うのは少し気が進まないが・・・

それでも、彼女が、自分が傷つく前に・・・


「・・・キミ」


「レイです!」


「レイ、まだ会ったばかりのキミにこんなことを話すのは少し変だと思うのだが・・・」


私はそう言いながら、上着のボタンを外す。

外したことで見えてきたのは女性特有の胸のふくらみ。

それも結構な大きさの。


「君には申し訳ないが、私は女なんだ。だから私になにか妄想をしているのならやめておけ。」


レイはこれを聞いて、驚いたような表情をとる。

流石にこれで彼女も引いてくれるだろう。


「あ、そうなんですか!」


えっ?


「そうなんですか!?」


「はい、すごくお綺麗な方だなと」


ま、待て、何だこの反応は・・・

まさか、この子女同士でも全然オッケーな感じのやつなのか?


「も、もう一度言うが私は女だ!それに女性には興味がない!そう言うのがいけるクチでもお断りだ!」


するとなぜかレイはハッとした顔をする。

分かってくれたのだろうか。」


「あの、ごめんなさい。」


「う、うむ、分かってくれたらいいんだ。」


「い、いやそうじゃなくて・・・」


「うん?」


そう言うとレイはなぜか自分のスカートをたくし上げる。

何をしているんだ、と口から出そうになったが、私のその先にある光景に固まってしまった。

そこにあったのはこんもりと膨らんでいる下腹部。

これは、まさか・・・


「えっと、実は僕、男なんです。」


「えっ、えええええええええええええ!」




私はまさかの展開に思わず腰が抜けてしまった。



「な、なんということだ。こ、こんなことがあるなんて。すまない、混乱してしまって。」


「いえ、大丈夫です。そういう反応には慣れていますから。」


「ど、どうしてキミはそんな女の子のような恰好をしているんだい?」


「これは一族の風習で成人するまではこういった格好をしなければならないんです。」


「な、なるほど」


いや、まさかこんな美少女が男の子だったとは。

私も彼女たちとおんなじだったと言う事か・・・

でも、私が言うのもなんだが本当に人は見かけによらないな。


「いや、これは申し訳なかった。私は見た目で思い込んでしまっていたようだ。」


「いえいえ、言っていなかった僕も悪かったです。でも、僕もノラさんのことを最初は男性だと思っていたのでお互い様ですね。」


「ふふふ、そうだな。」


私が微笑むとレイも微笑み返す。


「よし、それじゃあ、そろそろお別れだ。」


「もう・・・ですか・・・?」


「あぁ、私はこの先の国を目指して冒険をしているからな。そろそろここから発たなければ。」


「そうですか・・・」


「うん?どうした?」


私がそう尋ねるとレイは何かと葛藤しているかのような顔をして悩む。

だが、次の瞬間

「その旅、僕も付いていってはダメですか?」

と顔を上げて言う。


「えっ?」


「僕はあなたと一緒に旅がしたいです!」


「どうしてだい?この先は過酷な旅が待ち受けている。」


「分かっています。」


「それに私は単独行動の方が向いている。君を守ることは出来ないかもしれないぞ。」


「自分の身は自分で守れます。」


「どうしてそこまで君は私との冒険を望む?」


「それは・・・、あなたのことが好きだからという理由ではダメですか?」


「なっ!」


まさかの理由に私は驚く。

冗談かと思ったが彼の顔を見るとそんな気配は一切感じない。


まさか、私が女として好きになってもらえるとはな。

今までにない経験だ。

だが、

「まだ出会ったばかりで、お互いのこともよく知らないのにか?」


「はい、僕を助けてくれたあなたの姿の惚れたんです。ダメですか・・・?」


一目惚れ、か。

面白い子だ。

この子と旅をするのも少し良いのかもしれないな。


「ふっ、君が使える魔法は何だ?」


「えっ?」


「一緒に冒険をするんだろう?それならお互い使える魔法とかを知っていた方が良いだろう?」


「と、ということは一緒に冒険してくれるんですか?」


「さっきからそう言っているだろう。」


私がそう言うと彼はパァーと顔を輝かせる。


「や、やったー!」


「そんなに嬉しいのか?」


「ええ、それはもう!」


「そうか、それは良かった。それじゃあ、早速行くぞ。」


「は、はい!頑張ります!」


「うん、期待しているぞ。」


私がそう言いながら歩き始まると彼は走って私の隣につく。


その彼の顔はすごくニコニコしている。

私もその顔を見ているとなんだか気持ちがポワァとする。





これからの旅がどうなるのか、私には想像つかないが楽しい事であることは確かなようだ。







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