第4話 消え去れ俺の高校時代

「あ、ちょっと待って、さっき同窓会って言ってたけど、何の同窓会?」

「えっとー、高校の二年D組みたいです」


 アウトー! バッチリ俺の在籍してたクラスだぜ! 高校の同窓会!? 行きたくないんだけど! あの人たちと会いたくないんだけどー!!


 俺がこんな身体になったのは高校二年の十二月。その時から俺はこの体質が誰にもバレないように、学校では春夏秋冬いつでも学ランに手袋をして登校したのだ。

 それでついたあだ名は「不審者」。……消え去れ俺の高校時代!!


 まぁ本格的に言われてたのは高校三年の時だけど、もうそんなの関係ねぇ!

 待てよ、普通に考えてお兄さんの犯行動機は「憎らしいクラスメイトたちへの復讐」といったところだろう。そしてそのお兄さんの妹が水落花火。つまり……


「水落さんのお兄さんって俺と同じクラスだったってことだよね」

「はい、多分。探偵さんのプロフィールを見たら、兄と出身高校も年齢も組も同じだったんで。」

「あー、そうですかー」


 あれ、年齢と出身高校は探偵のプロフに書いてるけど、組ってどこにも書いてないぞ俺!

 もしかして俺のこと「不審者」って言ってからかってた奴がネットに情報でもばら撒いたのだろうか。


「それにしてもなんで、お兄さんが犯行を起こすって分かったんだ?」


 すると水落は何かを思い出すように、ほぇ……と天井を見つめ出した。


「あれは一週間くらい前のことですー。兄は今も実家暮らしなので家にいるんですけど、突然兄宛に変なダンボールが届いたんですよ〜」

「変なダンボール?」

「正確には変な物が入ったダンボールです。見た目は普通だったんですけど……」

「おい待て、兄に届いたダンボールを勝手に開けたのか?」

「はい、面白そうだったんで!」


 ぐっとサムズアップする花火。おまけに罪悪感など一ミリたりとも感じない、清々しい笑顔である。どんな物を購入しても全部妹に開封されるなんて、お兄さん可哀想……。


「流石に勝手に開けるのはまずいと思うぞ……。で、箱の中には何が入っていたんだ?」

「だからさっきも言ったじゃないですかー。『変な物』ですよ」

「具体的には?」


 水落は確か、と呟きながらわちゃわちゃ手を動かし始めた。


「こんな感じで黒くて危険そうなやつです!」

「いや……、全然分からん」


 水落は一生懸命にその『変な物』を再現しようと頑張るが、すまん、俺には理解不能だ。


「それで不審に思った私は、たまたま兄の部屋を通った時にそっと耳を澄ませてみたんです」

「うん」

「するとその時ちょうど兄は誰かと電話をしていて、私はその電話の内容から兄の計画を知ったのです〜!」


  水落はえっへんと言わんばかりのドヤ顔で答えた。そんな自慢することじゃないぞ。


 でもこれで、三日後に同窓会で水落のお兄さんが参加者全員を殺そうとしていることと、お兄さんが誰かと会話していたということから、お兄さんには協力者がいることが分かった。


「よし、水落さんのお兄さんを止めるために、できる限り努力するよ」


 同窓会には絶対に参加しないけどな!


「う〜ん……」


 何故か水落が顎に手を当て何かを考え始め、この場に沈黙が降りてきた。

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