空を泳ぐ

「んっ、んん、はぁっ、んっ……」


空のはずの教室から、押し殺した喘ぎ声が聞こえてきた。ドアの鍵は施錠してあるが、教室に忘れ物をしたことに気付き職員室から鍵を借りてきたところだったので簡単に開くことができる。でも、クラスメイトの致し現場を目撃するのはさすがにきついものがある。僕は今のところある一人の人間にしか興味がないのだ。そう思いつつ誰と誰がそんな不道徳的なことをしているのか気になり、扉の細い窓からそろりと覗いてみた。


そして僕はそれが誰なのか理解した瞬間スマホを取り出し、窓からビデオを数十秒撮り、写真を撮る準備をし、素早く鍵を開け、ガラガラガラと勢いよくドアを開けた。


「わっ、やば、やばい、人来た!やばい先輩どうしよ、せんぱ、」


「へ~ぇ。高峰くん、変態さんだったんですね。いつ誰が来るかもわからない教室で自慰、しかも通話しながらなんて、すごい度胸ですね、高峰くん」


「あいつ切りやがった…!おいやめろ撮るな、誤解だ、俺は変態じゃねぇ!」


「え?股間だ?」


「ご、か、い!!だ!てめぇ七原だよな?俺のこんなとこ撮ってどうするつもりだよ!」


「どうも何も、君が"先輩"にされてたことをするつもりですが?変態高峰くん」


彼は大胆にも教壇に乗っかりM字開脚でその行為に及んでいた。携帯を耳と肩で挟んで、必死にそれを扱いていた。まさか僕が興味のあるたった一人の、人間、高峰くんがこんなことをしているなんて……。神様的何かが、僕にチャンスを与えてくれている。僕はほくそ笑んで狼狽えている高峰くんの正面の位置まで近づいた。


「……俺が先輩に何されてるか、知らないだろ」


「まぁ知りませんけど、一目瞭然ですよね。だって君、自主的にやってるわけではないんですよね?高峰くん」


「当たり前だろ!やりたくてやってたらまじもんの変態じゃねぇか」


「どんな弱みを握られてるんです?高峰くん」


高峰くんのびっくりして内股に閉じてしまった足を強引にM字開脚に戻し、露出したままのそこに軽く触れる。さっきまで刺激され続けていたそれは敏感で、高峰くんに甘い声を出させた。


「んっ、やめ、ろ、触んなばか!変態が!」


「どの口が言ってるんですか?高峰くん。僕の質問に答えてください」


「お前に言う必要ない」


「あると思いますよ、高峰くん。君の真っ最中の写真、綺麗に撮れましたよ、高峰くん」


「……脅しかよ?」


「どうでしょう。僕は別に、君を困らせたいわけじゃないんですよ。高峰くんのこんな姿見せられて凄まじく興奮はしてますが」


「……何で俺なんかで興奮すんだよ、やっぱ変態だろ」


「割と普通だと思いますけど。とにかく、何でこんなことしてるのか、教えてください、高峰くん」


「……やだ」


やだ??実際にはいやだと言ったつもりだろうけど"い"が小さすぎて"やだ"にしか聞こえなかった。さすがに可愛すぎて、鼻血が出そうなのを咳払いで誤魔化した。言い方だけじゃなく拗ねたような顔も反則級に可愛かった。さすがに。


「じゃあ、君に選択権をあげましょう。この写真を明日学校中にばら撒かれたくないのであれば、その先輩との関係を教えてください、高峰くん」


「いやそれ一択しかないだろ!それを脅しって言うんだぜ、七原」


「どっちがいいですか?高峰くん」


高峰くんはしばらく黙り込んだ後、

(黙り込んでいる間も股は開きっぱなしだった。一つのこと集中すると他に意識がいかないタイプらしい。)ぽつぽつと話し始めた。


話の内容は、仲良くしていた先輩が実はゲイで、高峰くんに好意を寄せており、それを知った高峰くんは普通に振った。男だから、とかではなく単純に恋愛的な意味で好きではないから、と至極真っ当な理由で。その場ではじゃあこれからも今までの関係でいよう、となったのだが、何日か後には学校中で噂が広まっていた。で、その先輩は高峰くんが広めたと思い込みブチギレ、力尽くで言うことを聞かせるようになった。ということらしい。


「一応聞きますがその噂を流したのは君じゃありませんよね?高峰くん」


「当たり前だろ。そんなの言うわけねぇのに」


「どこでその先輩のことを振ったんです?高峰くん。学校ですか?」


「いや、先輩の家だよ」


「……はい?他に誰かいたんですか?高峰くん」


「いねぇよ。そんな話するのに誰かいるわけねぇじゃん」


彼は何を言ってるんだろうか。家で二人きりでその話をして、高峰くんは誰にも話してないのに噂が広がるなんて、あり得ない。高峰くんがその先輩の家から出てくるのを誰かに見られていたとしても、男同士で家で遊ぶなんて珍しいことでもないはずだ。


「だったら、どうして噂が広まるんです?広まりようがないじゃないですか。高峰くん」


「そうだよな」


「そうだよなって、君、それで先輩の言うことを律儀に聞いてるんですか?高峰くん」


「だって、可哀想だろ」


「……誰がですか?」


「先輩だよ。好きな奴に振られて、学校でゲイだって噂広められて、しかも友達に避けられてるんだってよ。俺に八つ当たりしたくなるのも、しょうがない気がすんだよ」


「……しょうがない、ね。」


「何だよ、なんか言いたいこと、」


高峰くんの手から素早くスマホを奪い取りパスコードを打ち込んだ。


「は?お前何で俺のパスコード知ってんだよ!」


「だって誕生日なんですもの。こんなの悪人に拾われたら一発アウトですよ、高峰くん」


「じゃあもう終わりじゃねぇか」


取り返そうと手を伸ばしてくるが不安定な教壇に座っているため上手く身動きが取れないらしい。僕が正面に立っているから降りることもできずあたふたしている。僕は高峰くんをひょいと避けLINEを開いた。


「ロックしてないんですか?不用心ですね、危ないですよ、高峰くん」


「今思い知ったわ。次からは絶対にロックかける。つか何なんだよ?俺のLINE見ても何もねぇぞ?」


「先輩の名前知りたかっただけです。高峰くん」


「……知ってどうすんだよ?」


「別に?何もしません。高峰くん」


「ほんとかよ」


「何かして欲しいんですか?高峰くん」


「うるせぇ!大体お前馴れ馴れしいんだよ、ほとんど初対面のくせに」


「今それ関係あります?高峰くん」


高峰くんは舌打ちして、思い切り僕を蹴ろうとした。避けると高峰くんはバランスを崩してそのまま前に倒れた。間一髪、僕が彼を抱っこする形で受け止めた。僕はもしかして明日死ぬのだろうか。神様、七原は今、名前負けせぬラッキースケベを堪能しています。


「わっ、ごめん七原、頭打ったか?」


微かに赤く染まった頬をした高峰くんが顔を覗き込んでくる。この頬は多分、さっきの行為の名残りだろうけど。


「打ってないです。それより、君いつまでそれを露出したままでいるつもりです?高峰くん。ぶつけて再起不能になったら僕が責任取りますよ。高峰くん」


「……スースーするとは思ってたけど忘れてた。最初に見られたショックがでかすぎてもう全然恥ずかしくねぇ」


「立派な変態ですよ、高峰くん」


ばつが悪そうな顔で立ち上がった高峰くんにスマホを返した。先輩は、トークの一番上にきていて、電話の記録も残っていたので"川西蓮"という人物で間違いない。もちろん名前を確認するのもスマホを奪った理由の一つだけど、目的は少し違う。


『話したいことがあるから金曜日の放課後、3階のトイレ前に来てほしい。返信はいらない。』


高峰くんのぶっきらぼうな口調を真似て、川西蓮にLINEを送った。その後すぐに削除したから、履歴は残らない。3階のトイレと言うと、非常事態にしか使わない錆びれた階段のそばにあるのでめったに人が通らない。そのことからいわゆる穴場になっている。川西蓮はナニを期待して来るだろうか。今日は火曜日、川西蓮について調べるには十分に時間がある。











川西蓮は今三年生で、2年生の時に水泳部を退部していることが分かった。原因が例の噂のせいなのかは定かではないが、あまり良い終わり方ではなかったようだ。


彼の顔を知るためにいささか強引ではあるが学級委員のふりをして3年生のクラス全部を回り、川西蓮のことを先生が呼んでいると嘘をついた。その時川西蓮を呼んでくれた女子生徒に、少し鎌をかけてみた。


「川西先輩ってかっこいいですよね」


すると予想通り、レイシスト特有の獲物を見つけたような、じっとりとした目を向けてきた。なるほど、噂が広まっているというのは本当らしい。


「僕、噂聞いちゃったんですよね」


「えー、2年生にまで広がってるの?」


「はい。あれって、本当なんですか?」


「うーん。私は谷上が大声で言ってるの聞いただけだから、よく知らないんだよねぇ。……あ、川西くん」


川西蓮は端正な顔つきの、いかにも好青年というような男だった。好青年という仮面をかぶって僕と同類だというのを隠している。いや、隠していた、というべきだろうか。川西蓮は僕を少し不審そうに見て、先生が呼んでいると言うと素直に職員室の方へ歩いて行った。


「ありがとうございました。あ、あと、申し訳ないんですが、谷上先輩にも用があるので呼んでもらえませんか?」


「えぇ、谷上に?あんなのに後輩なんていたんだ……。あ、ちょうどあっちから歩いてきてるよ」


「ありがとうございます!」


その女子生徒が指差した方向には一人しかいなく、その人物が谷上だと分かった。やはり僕はついてる。僕は躊躇することなくその人に話しかけた。


「谷上先輩!少しお時間いいですか」


正面から声をかけたのに谷上は驚き、キョロキョロして俺?と不思議そうに僕を見た。まぁ見ず知らずの人に名前を知られていたら驚くのも無理はないだろう。

谷上は、川西蓮と正反対の、馬鹿そうな顔をしていた。一目見ただけで遊んでいると分かるぐらい。


「何?お前誰?」


「僕、川西先輩の知り合いなんですけど、ちょっと聞きたいことがあって」


すると谷上は分かりやすく顔を引き攣らせ、知らないと言って足早に去ろうとした。同じクラスなのに知らないわけがない。


「やっぱり、何か貰いました?」


単刀直入に聞いてみる。谷上は、何でそれを!みたいな顔をして僕を見た。この人分かりやすすぎる。


「何を頼まれました?」


谷上は何も答えない。そこで、最終手段に出る。


「お金なら、払いますよ」


それを聞いたや否や、谷上は下卑た笑みを浮かべた。この人は、馬鹿で下衆なのだ、救いようがないと思ったけど、はなから救う必要などないのでそれはスルーして、谷上が話し出すのを待った。

















「川西先輩!来てくれてありがとうございます!」


「……は?」


「僕のこと、忘れちゃいましたか?この前話したじゃないですか!」


「あ、お前妙な嘘ついてきた奴か?」


「そうそう、妙な嘘ついた奴です。妙な嘘、といえば妙な噂、もありますよね、川西先輩?」


川西蓮は明らかに顔をしかめ、僕のことを怪しんでいる。もう遅いんだけどね。


「……知らないけど、俺は人を待ってんの。邪魔しないでくれるかな」


「それってもしかして高峰くんのことですか?高峰くんなら、来ませんよ」


「……!あいつが、言ったの?」


「あは、そうです。僕に可愛く相談してきたんですよ。チキって電話切って高峰くんとの縁も切っちゃいましたね、川西先輩」


「……何聞いた?高峰から」


「その話がしたいので、今日ここに来たんですよ。とりあえず中に入ってください」


「ここでいいじゃん」


「ダメです、誰か来たら困るでしょう?主にあなたが」


川西蓮は僕を睨みながらトイレのドアを開けた。僕だって高峰くん以外とトイレに2人っきりなんてごめんだ。


「それで、何を言いにきたの?もう高峰には手を出すな、とかそんなの?」


「だったらどうします?」


「断るね。高峰に何言われたか知らないけど、あいつが悪いんだぜ?散々言いふらしやがって、人として終わってるよ。お前も知ってるよね?噂のこと」


「はい、知ってますよ」


「あんな奴のこと、庇うわけ?なに、泣つかれでもした?」


「まぁ高峰くんのあそこは泣いてたし同じようなものですかね」


「はぁ?何言って…」


言い終わらないうちに、彼の腹部、鳩尾を狙って思い切り蹴り飛ばした。よろめいた川西蓮をそのまま個室に引き摺り込んだ。ただでさえ狭いトイレの、もっと狭くて小さい空間にこの男と2人きりなんて吐き気がする。扉側に立って逃げ道を塞ぐ。


「あのね、僕だって暴力なんて振るいたくないんです。だってあなたに触れなくちゃいけないから。僕が今から言うこと、聞いてくれますか?」


川西蓮はまだお腹を押さえて壁にもたれかかっている。自分に与えられる痛みにはすこぶる弱いらしい。肉体的にも、精神的にも。今度は彼の脛を爪先で蹴った。川西蓮は、案の定立っていられなくなり、崩れ落ちるように座った。


「ゔぐっ、、いってぇ、お前、弱点ばっか、蹴ってくんのな、いいクズっぷりだなァ」


「え、弱点じゃないところばっかり責めて焦らされたいってことですか?ずいぶんマゾな性癖をお持ちなんですね」


「……お前頭おかしいんじゃね?」


「まぁ、そんなことはどうでもいいのです。僕の言うこと、聞いてくれますか?」


「なに?」


「謝ってください」


「……はっ、何言い出すかと思えば、それだけ?謝ったら、ここから出してくれんの?」


「そうですね、あなたから反省の念が感じられて、もう二度と同じことをしないと誓うなら」


「はいはい。俺が悪かったよ、申し訳ありませんでしたぁ」


「あぁ、ちょっと待ってくださいね。僕の言う通りに謝ってもらいたいので」


「はぁ?それって謝る意味あんの?」


わざとらしくふざけた謝り方をする川西蓮の髪を掴み、洋式トイレに顔がつくギリギリまで押し付けた。


「今から、この水の中にあなたのお顔を突っ込みます。水中で100回、先程あなたが言ったように、"俺が悪かったです。申し訳ありませんでした。"と謝罪してください。誤解しないでくださいね、僕にではなく、高峰くんにですよ」


「……は、ふざけんなてめぇ、そんなことするわけね、、やめ、おいっ嘘だろ、離せっ、やめろ、やめっ、、」


川西蓮の顔がトイレの汚い水に浸かった。ものすごい力で抵抗してくる。さすが、こう言う類の人間は生命力というか、自分を庇う能力に長けている。僕は馬乗りになって、両手で押さえつける。


「早く100回済まさないと、溺死してしまいますよ。不思議なものですよね、極小量の水でも鼻と口が覆われると死んでしまうんですから」


「あがっあ゛ぁ゛、あ゛やま゛るっ、あ゛ひゃ、まる゛、から1回ま゛って」


「何ですか?」


「はっはっ、はぁっはぁっはぁっ、、、

100回は、はぁっ、無理、息が、もたね、、、」


「えぇ。でもあなた、水泳部だったんですよね?これぐらい、できると思うのですが」


「水中、で、喋ったり、しない、」


「はぁ。じゃあ分かりました。五十回言えたら、一回休憩しましょう。これ以上は譲歩できませんね」


「ごじゅう、、、」


「はい、いきますよ。飛び込みをイメージして。なんら変わりませんよ」


「ふっざけ、、がはぁ゛っっ」


「ほら、何て言うんですか?高峰くんに」


「、、お、れっが、わるかっ、たです、もっ、もうしわけっありま、せん、、でしたぁ、、」


「言いづらいんですが、声が小さくてよく聞こえません。水の中なのは承知で頑張って聞き取りますが、もっと大きな声で言ってください」


「お゛れ゛がぁっ、わ゛るがっだ、です、、も゛う゛しわけ゛ありま゛せん゛でした゛あ゛っっっ」


「はい、結構です。1回目。」


10回目で、聞き取れなくなり、仕方なく鼻と口を少しだけ水中から出してやった。川西蓮は肩で息をし、僕を罵る余裕は全くないようだ。彼に同情の余地はない、それは自分のしたことを顧みれば分かることだろう。


「今休憩したので10回追加ですね」















「お、れがっ、ぐぇっ、がっはぁっ、わるか゛った゛れす、、も゛うしわけ、ありましぇんでし゛たぁ゛ぁ゛」


「はい、200回目ですね。終わりです。あは、すごいですね。その水、ずいぶん飲みましたねぇ」


結局川西蓮は10回ずつ休憩したことによって200回謝罪の言葉を叫んだ。手を離してもぐったりと脱力し便器に身を委ねている。


「苦しいとは思いますが、まだ話さないといけないことがあるので聞いてくださいね。ここから見て右上に、カメラを仕込んでおいたんです。ちょうどあなたのお顔がよく見える角度ですね。ばら撒くなんてことはしませんよ、あなたはそれがお望みかもしれませんが。あなたがこれからも同じことをするって言うなら、あなたが一番見られたくない相手に見せます。それと、今日のことを口外しないこと。分かりますか?」


川西蓮は虚な目でカクカクと首を縦に振った。まるで自分が虚弱な小動物かのような態度で、僕を見ようとしない。


「じゃあ、僕は先に帰りますね」


仕掛けておいたカメラを手早く回収しさっさと個室から出る。不意に右手に違和感を覚え見ると、川西蓮の髪の毛が手に絡まっていた。僕は念入りに石鹸をつけて洗い流し、さっきまで入ってた個室を見ないようにトイレを出た。


もう手は綺麗なはずなのに、まだ何かが絡まっているように感じる。これが正しいことだったのか?僕の中のほとんど死んだも同然の感情がそう訴えてくる。だって、仕方がない。高峰くんが。高峰くんが、この人のことを可哀想だなんて言うから。本当に可哀想にしてあげたくなったのだ。そうしなければ、高峰くんが報われない気がして。

……いや、違う。僕は、認めなければいけない。川西蓮が妬ましいだけだったってことに。僕と川西蓮にさして違いはない。あえて言えば、高峰くんに暴力を振るって喜びを感じたりしないと言う点だろう。やっぱり、可哀想なのはいつだって高峰くんなのだ。きっと高峰くんはこれからも気付けない。可哀想で、最高に可愛い。





谷上の話によると、川西蓮は谷上にお金を渡し"自分がゲイだということを学校中で広めてほしい"と頼んだそうだ。いつも馬鹿騒ぎをしている谷上が適任だと睨んだんだろう。わざわざそんなことしなくても、高峰くんなら川西蓮の言うことを聞いていたと思うけど、どうしても高峰くんに非を作りたかったんだろう。 

一言目にはお前が悪いと言い、真冬のプールに裸で泳がし、体にピアスを開け、教室で自慰をさせる。それでも、高峰くんは川西蓮に可哀想と言った。ここまでくると本当にドマゾなのでは?と疑問が浮かぶが、どうやらそうじゃないらしい。


高峰くんは、待っているんだろう。川西蓮と元の関係に戻れることを心のどこかで期待して、待っているんだろう。それはまるで、水の中で飛ぼうとする鳥のように、空に向かって泳ごうとする魚のように、意味のない、無謀なことだというのに。

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