5ー9

 この3年目の年は、ドラマや映画の主題歌としてとか、CM曲って言う発注をもらうことも増えた。

今まで自分の感性で作っていたから、注文をうけて、依頼内容に添ったものを作るということで、特に作詞をするのが難しかった。

こうゆう雰囲気でって言われて、曲を作るのは割とすぐ出来るけど、歌詞は、オレの言葉じゃないモノを書くと言うことに、少し抵抗も感じた。

商品名を入れるとか、ドラマの決めゼリフを歌詞に入れて欲しいとか。

だけど、会社がRealの為にとってきてくれた仕事だし、精一杯やろうって思った。


 年明けすぐ、映画の主題歌として曲を作るように言われた。

映画の内容に添って、高校生の男女の恋物語を甘酸っぱく、さわやかに、優しいメロディにのせて歌詞を書いた。

俺自身の高校生活は、こんな風に爽やかな感じはまったくなかったから、俺にこんなのが作れたんだって、ちょっと自分でも新発見だった。

龍聖も、ちょいハズいな~って言いながらも、歌ってくれたその歌声は、初々しさを感じさせるような、映画の主人公の心模様を上手く表現していた。

どんな曲を作ったって、俺が思ってる以上の歌にしてくれる。

改めて、ボーカルが龍聖で良かったと思った。


 この年は、もう1本、アニメの映画の主題歌の話ももらった。

原作の漫画本を読みまくったり、声優さんがアフレコしている現場を見学させてもらったりした。

このアニメの特徴でもある、疾走感を出したカッコイイ曲に仕上がったなと思った。

オープニング曲だけの予定だったけど、監督さんがそれをすごく気に入ってくれて、エンディング曲と劇中歌も追加で発注してくれた。

全体を通しての音楽監修というのを瞬がすることになった。

俺は、瞬の細かな指示に従って、曲を作った。

エンディング曲は、Realの曲としては初めて、俺のバイオリンと瞬のコントラバスをメインにした。

ストリングスをきかせながら、ドラムも派手に鳴らして、いい感じにロックと融合させた壮大な曲に仕上がった。

出来上がった映画を試写させてもらった。

その場面場面で、いい感じにRealの曲が流れる。

物語を邪魔せず、盛り上げるところでは大いに盛り上げる。

なんか、すごく感激した。

映画の作画の出来が素晴らしいってこともあるけど、それに携われて、エンドロールにRealの名前が流れたのを観たら、本当に感動的だった。


 この年は、初めて俺一人の写真集を出してもらった。

スケジュール的にも厳しかったから、近場でってことで、横浜で撮影してもらった。

赤レンガ倉庫とか中華街とか。

早朝と夜に撮影してもらった。

すごいいい雰囲気だった。

カメラマンさんに言われた通りの表情をつくった。

笑顔ゼロで、スカしてる感じ。

いや、これ、龍聖ならいいだろうけど、俺はこれでいいか?って思ったけど、カメラマンさんにおだてられて、なんか良い気分で冷めた表情をつくった。

出来上がった写真集を見たら、なんか、自分じゃないみたい。

メチャかっこよかった。

今までカッコいいカッコいい言われても、あっ、そう。って思ってたくらいだったけど、こうゆう表情してんだ?俺って。って、客観的に初めて自分を知った感じ。

ってゆうか、カメラマンさんてすごいな。

撮られることで、撮る方に興味がわいた。

今回の写真集でお世話になった、カメラマンの根岸さんに、写真を撮ってみたいって相談してみた。

「keigoさんは、何が撮りたいの?人?物?」

何が撮りたいかによって、適したカメラがあるのだと。

俺は、花、景色と答えた。

「花?keigoさん花好きなんだ~!意外!!」

と笑い、じゃ、これかな~って奨められたカメラを買った。

ツアーとかでいろんなところへ行く時には、必ずカメラを持ち歩くことにした。

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