5ー18

 7年目は、瞬と2人で、バイオリンとピアノのアコースティックコンサートもやらせてもらった。

会場は、俺らのデビューの原点となった、コンテストの会場でもあった、安住記念ホール。

あの時調べた通り、クラッシック系のコンサートによく使われる音響設備の整った会場。

瞬がここがいいと言って、会社もそれで了承してくれた。

収容人数3000人のこのホールを、俺と瞬だけでいっぱいにすることが出来てることに感激した。


クラッシック音楽を真面目に演奏して、一曲終わる度に、瞬とめちゃ喋って、質問コーナーとかやって、お客さんの質問に答えたり、リクエストに応えて連弾でピアノをやらせてもらったり、その場でチェキ撮って、席の番号で抽選会をしたり、あったかい感じのコンサートだった。

去年、バイオリンのソロコンサートをやったけど、バイオリンだけよりも瞬のピアノとの相性がホントいい!

1人より全然いい。

瞬のピアノは素晴らしいと改めて思った。


瞬と2人でレコーディングして、CDも出してもらった。

これは、インストロメンタル、クラシック部門とかの賞をもらった。


 

 この年は、Realとしてもライブツアーを25ヶ所廻った。

このツアーで、全国47都道府県をすべて一回は行ったことになった。

7年目で、はじめましての県がまだあってびっくりした。

ツアーで廻りながら、俺はカメラを持って、外へ出ることも多かった。

デビュー3年目の時にカメラを買った。

仕事で写真集の撮影とかで お世話になったカメラマンさんには、その度に撮り方とかを教えてもらったり、撮った写真を見てもらってアドバイスをもらったりして、普段から撮りためるようにしていた。

何を撮ろうって、特に考えないで、いいなと感じた物を撮る。

俺のまなざしを切り取るってイメージ。

ライブツアーで全国を廻っても、観光できる訳じゃないけど、リハとか終わった ちょっとの休み時間に、行ける範囲のところをタクシーで廻ってもらって、景色をカメラにおさめた。


これをどうこうしようと言う訳でもなく、曲作りのヒントになるかな~って思っていたくらいだったけど。

会社のスタッフさんから、俺の撮った写真で、写真集を出さないかと言われた。

花の写真集だそうだ。

今まで撮りためていた中に、花の写真はいっぱいあった。

花の名前と、花言葉、それと簡単に詩をつけるとのこと。

自分で言った記憶もないけど、何年か前に俺がそんなことを、打ち合わせ会議で話したらしい。

もちろん やりますと答えた。


これは、結構大変な作業だった。

厳密に締め切りがあるわけじゃなかったけど、今年中に出そうと言われて、写真を50枚くらい選んだ。

名前と花言葉はスタッフさんが調べてくれて、それを見て詩を書いた。

詩は、あまり長くないようにと言われたから、軽く三行くらいで、俺の直筆をそのまま使うと言われたから、まぁ出来るだけ丁寧にキレイな字で書くように気をつけた。

違う花のつもりで選んだのに、これとこれ同じ種類の花ですよ~とか言われ、やっぱ俺 花をよくわかってないなぁなんて思ったり。

色が違うだけでも、だいぶ印象が違っていたりする。


花を選ぶ基準は、彼女が好きそうかどうか。

まぁ、写真に撮る時点でそう思った物を撮っているから、俺が撮った花の写真は、ほぼほぼ彼女が好きそうな物ばかり。

俺が好きだと言って名前を教えてもらったラナンキュラスと、彼女は好きなものいっぱいあって選ぶの難しいけどって、前置きをして答えたトルコギキョウ。

その両方が、ガラスの花瓶に生けられている写真。

これがいい!!

表紙は絶対これで決まりだな!!



後日、サンプルとして出来上がった写真集は、ハードカバーの分厚い物だった。

写真集ってより、植物図鑑みたい。

定価2500円だと言う。

高っ!!

「これって、もうこの値段で決定なんですか?」

「いえ、まだこれはサンプルですので、変更できますよ」

担当するスタッフさんが言った。

「ちょっと、今更いろいろ言うのもなんなんですけど、値段2500円だと高すぎて買ってもらえないと思うので、1000円か、せめて半額の1250円くらいにしてほしくて。

50枚って言われたから、50枚でやりましたけど、もっと減らすなら減らしてもらってもいいし。

この装丁も、こんな図鑑みたいな感じじゃなくて、気軽にペラペラ~っと見てもらえるような感じがいいんですけど」

「はい。承知しました」

「いろいろ口出して すみません」

「いえいえ、これは桂吾さんの写真集なので、桂吾さんが納得できるものにしていきますので、どんどん言ってください」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

「あと、最後のページにあとがきと言いますか、何か一言桂吾さんに書いていただきたいのですが」 

「了解です。明日まででいいですか?」


何日後かにまたサンプルを持ってきてくれた。

前回の物より、軽量化されている。

定価も1250円となっていた。

このくらいの値段なら、手にとってもらえるだろうか。

めくった時の紙の質感もイイ感じだ。

パラパラと元に戻ってしまうことなく、テーブルに置いて、片手でめくることができる。

飲み物でも飲みながら、気楽に見てもらいたい。

表紙のトルコギキョウすごくいい感じ。

彼女の好きな花が、トルコギキョウだってわかってから いろいろ調べたけど、トルコギキョウは、種類がいっぱいあった。

一重の物。八重の物。

色もピンク、白、グリーン、パープル。

花びらのフチだけ違う色とか、ほんと多様だった。

その中でも、彼女が好きだと言ったのは、濃い紫色の八重咲きのトルコギキョウ。

深い紫と言った。

表紙に使ってもらった写真は、その深い紫色って形容詞がぴったりなトルコギキョウ。

一昨年のツアーで行った岡山で、泊まったホテルのロビーに飾られていた花を撮らせてもらった写真。

俺にとっても、すごく大好きな1枚だ。


【 LOVE…Flower for you 】

keigo sudo  From Real


タイトルに、俺の手書きで筆記体で書いた文字をそのまま使ってもらった。


それと、あとがきも俺の自筆。

『大好きだった人が、花が好きな人でした。

その頃は、俺は全然 花に興味なくて。

だけど、今は花の魅力が少し、わかったような気がしています。   須藤桂吾 』


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