第六夜(パフェの日)

「お嬢様、何度も申し上げているかとは思いますが」

「なに」

「早坂くんとの交際? につきまして、考え直すべきだと」

「なんで疑問形なのよ。ていうか、あんたに指図される筋合いないし」

「わたくしはお忙しい旦那様に代わりまして、お嬢さまの全行動を把握し、お伝えする責務がございます。時には旦那様の代わりにお嬢様を叱咤することも、わたくしめの仕事」

「あんたはわたしの邪魔をしたいだけじゃないの。ちょっとそこどいて。今日は早坂くんとパフェ食べにいく約束してるんだから」

「はあ、お好きでございますね」

「そりゃあ大学のスイーツ研究会のメンバー同士だし? でも早坂くんがプライベートで誘う女子はわたしだけよ。みんなに羨ましがられているわ」

「え。……周りの方々もご存知なんですか?」

「ご存知っていうかぁ、ついうっかりしゃべっちゃった感じ? 口がちょこっと滑っただけよ」

「お嬢様がご自慢されたということですね、はい」

「人聞き悪いわね。うっかりだって言ってるでしょ。しゃべっちゃった子にはちゃんと口止めしてるから大丈夫よ」

「お嬢様の大丈夫はまるであてになりませんがね」

「あんたは二人だけの秘密って言葉の甘美さがわからないのね。あーぁ、かわいそう」

「ちなみにお嬢様、そのパフェ代はどちらがお持ちで?」

「わたしよ。当たり前じゃない。早坂くんはああ見えて苦学生なの。お金のあるわたしが払うのは当然のことでしょう」

「お嬢様、それは俗にいうたか──」

「でもね、この前バイト代入ったからって、超可愛いピアスもらったのよ! ほら、これよ。なんていう宝石かは知らないけど、小ぶりでとっても可愛いの。もうお気に入り!」

「いやお嬢様、あなたピアス開けてないでしょう?」

「授業料払うので精いっぱいなのに、わたしにも気を遣ってくれるなんて……。やっぱり早坂くんは今までの男たちと違うわ。どっかの執事にも見習わせたい!」

「はて、どこの執事のことでしょうね」

「とにかく、これ以上わたしと早坂くんの邪魔はしないでよね! パパにもそう言ってよ。じゃあね!」

「あ、お嬢様」

「しつこい!」

「お財布お忘れですよ──って、聞いちゃいねえ。……これは早坂くんがどんな反応をするか、見ものだな」

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