第4話 まだ居たい。

 真実。突きつけられる過去。思い出せない"モノ"

「思い、出せないよね。あんなこと。」

「思い出したくない。じゃないと私が違くなる。」

「でもね、これだけは覚えておいてね。藍。」

…少し長めの色素が薄い髪色、男子にしては色白の肌ですらっとして整った顔。夜の"藍"を含んだ瞳はいつもに増して綺麗で、まるで宇宙そら

「大丈夫俺は、俺だけは藍がどこに居てもまた逢いに、助けに行くから。」

「…っ!!」

「あと10年。俺は藍を救う。この先の未来から。」

10年、私に残された時間。

 まだ動く体で、前に始まった1からの世界でまた、遥斗に出会えて良かった。

「分かった。そしたら一緒にバレーできるね。」

 新しい"私"が始まった気がした。今、全て、受け入れた。

 もうすぐ朽ちるこの体で、まだ君と一緒に居たいから。

「さっきの約束ね。いつか私みたいな人をみんな救って、生きてね。」

きっと今の私は酷いくらい痛いくらい辛くて安心した顔をしている。何となく分かるんだ。

 今、私は終わりへとまた進んでも、まだ遥斗と一緒に居たい。

「藍、酷い顔してるよ。ごめんね。」

覚悟した声で言った。

「大丈夫、遥斗が助けてくれるんだから。」

「もちろんだ!」


 次の日の学校。どことなく今までの自分にかけていた制限がなくなった気がして、人と関わることに関心を持った。とりあえず隣の人に話しかけてみようか。

「あの、高沢さんだよね。おはよう。」

高沢さんは驚いた顔をした。そのあとにっこり微笑んで

「おはよう!江原さん!!あ、藍ちゃんって呼んで良い?」

「ありがとう。良いよ。私も絵梨奈で良い?」

「うん!!話してみたかったんだよね、ずっと休み時間とか寝てたし。」

「絵里奈ー!」

確か…佐藤さん、佐藤さんが来た。

「おはよう佐藤さん。」

「え?おはよう!すごい、私、今No. 1セッターと挨拶しちゃった!!やっば!みんなー!すごいよ今なら藍ちゃんとお話しできる!」

大声で佐藤さん、佐藤あゆみさんは叫んだ、その瞬間周りからなぜかドタドタと大きな音を立てて、

「きゃー!!!藍様と挨拶できるなんて!」

「俺も話したい!!」

「早く行かなきゃ挨拶できなーい!」

などと良く分からないことを言っているクラスメイト、同級生の人達が押し寄せてきた。

「実はね、この学年の女子と男子って半分くらいが藍のファンクラブなんだよね。」

「え…」

「あはは…ある意味すごいよね。」

 その日はすごく楽しかった。この高校に来て友達と呼べるような人と昼ごはんを食べて、たくさん話して、いっぱい遊んだ。

「藍!どうだった?楽しいよね。」

「うん、学校って楽しいんだね。」

 私は今、笑顔なんだろうな。ずっと今日が続けば良いのに。

 充実した学校生活にも慣れて、あの日から1ヶ月が経とうとしていた。今日は土曜日だけど、文化祭が近いため私も学校へ来ていた。

「藍!!ミスコン出てくれない?」

「無理。」

「なんでよー!!藍は学年1の美女じゃん。」

「眼球が汚れてるんじゃない?」

うちのクラスはミスコンを主催するらしくよく最近こう言われる。正直、だるい。そしてそれに加えて私は正直今、大変なのだ。

 ALS。その症状が悪化した。前まで薬で抑えられていたが、もうかなり終末が近いのだろう。筋肉が痩せて体重が軽くなるし、食べ物がうまく飲み込めない。












 力が入らない。多分今倒れたんだ。

だめだ。私はまだここに居たいのに。


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