No.13 Concorde 感想

・初戦後、人の名前を憶えていないのにアカウントのIDぱっと出てくるとこめちゃくちゃ好き。

最初の一文と最後の一文が同じなのは心のオタク心が喜ぶ演出なので好き。格闘ゲームなんて描きづらいものを題材に選んでくる挑戦的なテーマ選択と、それでいてすっと読ませる文章力、ナイーブで繊細ながら嫌みのない人物描写が絶妙。駄菓子屋のラムネのような読後感の作品。


・主人公の心境が変化していく描写が圧巻でした。相手の正体にドキドキしながら読みました。ラストがかっこいいです!


・ゲーム以外のことがどんどん過去になっていく身につまされる話でした(そんな感想でいいんでしょうか)


・お互いの手の内がわかっていると、その当人同士のみに伝わるものがありますね!

アツい展開でした。


・読み始めた時には全く想像できなかったくらい、熱い作品だった。

主人公はどこか悟ったように自分の世界にこもっていて、冷静に客観的に自分を分析していて、そんな描写がずっと続くけれど実は、その内側には脈打つものがあった。それが判明する瞬間の熱量たるや。

『高校生活三年間、この五分の為に捧げてきた。』

この一文、これが最高なんですね。

すっきり気持ちよく終わる後味の良さも非常に良かった。

……のだけれど、蛇足かもしれないけど、もしもyou3829にメッセージを送るなりして接触していた場合、どういう風に物語は転がっていったのか。そういうIFストーリーも読んでみたいなあ~と思ってしまいました。


・言葉は介さない、表情も見えない、普段我々が行う『表現』は何もないけど確かに存在する『表現』、コミュニケーションというアイディアが

とても魅力的だと感じた作品でした!

最後まで『you3829』の正体が明示されないのも物語の深みになっていると思い、とても素敵でした。


・ストⅢ3rd!? ただひとつの細いつながり。それでも共有した時間と言うのは、かけがえのないものだという光。そして、対人ゲームを取り扱う作品特有の熱さ。それらが混じりあった灼熱の時間。すごい小説だなぁ……。コミュニケーションが限られていてもライバルとして繋がっているというのは凄い好き。対戦相手への信頼という奴やね……。これが13本目で、順番に読んでいくと最後に来るというのも良き。読後感が良いので。

……でも、あのー、これはあえて作中で明言していない訳だから、これを訊くのはすっごい野暮天だと思うんですけど、自分の理解力の低さを露呈させてるようでもあるから恥ずかしくもあるんですけど……。その~……、結局『黒澤裕子』の身にはなにがあったんですか……? なんでオンライン対戦初めて、なんで対戦を1年続けて、なんで1戦だけやってやめて、なんでしばらくしてまた1戦だけやったんですか……? 俺、馬鹿だからよぉ~……そこのあたりの真実が一切よくわからなくてよぉ……。


・すごい好きでした…!ラストで『you3829』が来て泣きそうになりました!


・表現する術を持たないから、ゲームで語り合う話。

青春モノとしてはこういうアツい話が欲しかったんですよ~~言語外コミュニケーション、大好きです。ただ、ここまでやったなら、ゲームの詳しい内容についての描写もほしかったですね……

最後までわかりあえたのか曖昧なまま終わらせる、というところに、作者のディスコミュニケーションへの想いを垣間見ました。




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