ep.33

 一週間近くあった休みも残り二日となった。桃華と出かける日程は決めていたが、場所を決めていなかったのでどこに行きたい?と聞くと、丁度テレビで流れていた遊園地特集を指差し、ここに行きましょう!、と言うので急遽遊園地に行くことになった。


 近くに遊園地ないので隣の県まで電車を乗り継ぎ大型遊園地へと向かう。

 長期連休で国内でも人気の遊園地ということもあって朝早くから多くの子供連れの親子やカップルがいる。

 

「おぉ、楽しみですね!」


 ジェットコースターや観覧車などのアトラクションの他に、水族館、プール、商業施設など色々ありすぎて今日一日で全て回りきるのは無理だろう。

 

「まずは、ジェットコースターに乗りましょう!宇津さん!」


「はいはい、先走ってはぐれるなよー」


 初めての遊園地ということで桃華のテンションは高い。その上、美少女の桃華が遠くから大声で呼んでいるので周囲の視線を集めている。

 まぁ、当の本人は特に気にも留めないようなので俺は桃華を楽しませることができるように頑張ろう。


 

 桃華とジェットコースターの受付まで行き、流されるままシートを閉める。事前に受けた説明では特徴は最大時速200kmの速さで駆け抜けるという事で日本最速なのが売りらしい。


「時速200kmって言われてもあんまりピンとこないよな」


「確かにそうですね… でも、体感すればすぐに分かりますよ!」


 桃華がそう言うとタイミングよく動き出す。最初は傾斜を昇っていくのたが、中々上に辿りつかない。やっと辿りついたと思えば観覧車よりも高く、遊園地の全貌が見渡せる。

 綺麗と一瞬思ったのは束の間、下に向かって猛スピードで落ちていく。


「きゃーーー!」


「うわぁぁぁぁぁ!」


 桃華の楽しそうな声に混じって俺の情けない悲鳴が上がる。身体中にGがかかり内臓が浮いている感じがする。


(あっ、これヤバイかも)


 景色が物凄い速さで切り替わっていくこともあってだんだん気持ち悪くなってくる。


 なんとか気持ち悪さに耐えながら乗り物から降りて、椅子に座って休憩する。


「…すまん まさか、ここまでキツいとは思わなかった……」


「そんなにキツかったですか?どっちかというと楽しかったですけど」


 こういうアトラクションが苦手な人と得意な人とではこんなに違いが出るらしい。なんだか桃華の方が俺よりも男らしい気がする。



「うし、そろそろ次のやつ行くか。なるべくおとなしいやつでお願いします」


「んー、はい、分かりました。それじゃあ…

 コーヒーカップとかどうですか?名前もなんだかおとなしそうですし」


「いや、それはダメだ。そいつは名前の割には結構キツいから次の次くらいに乗ろう」


 多くの人を騙して、人の三半規管を壊してきた悪魔を選ぶとはさすが桃華だ。だけど、今の体調も考えてもっと軽いものにしてもらいたい。


「えー、じゃあ… お化け屋敷とかなら大丈夫ですよね!」


 怖いものは苦手なのだが、特に体に負担がかかるというわけでもないので「大丈夫だ」と返す。


「よし!それじゃあお化け屋敷へ行きましょー!」

 

 桃華に情けない所見せられないぞとついさっき情けない悲鳴を上げた自分を鼓舞しながら桃華とお化け屋敷へと向かった。







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