ep.32

 カーテンの隙間から朝日が顔に当たるのを感じて目を覚ます。スマホを探して時間を見ると六時半。昨日は疲れて早く寝たので早めに起きてしまったらしい。


 ふと、毛布の中に違和感を感じて中を覗くと、桃華が寝巻き姿で丸くなって寝ている。


「…ん?」


 一旦毛布を閉じる。自分はもしかしたらまだ夢を見ているのかもしれない。それにしては随分と鮮明な夢だが。


 もう一度覗いてみると、やはり桃華が丸くなって寝ていて、「……やめへぇ」と寝言を呟いている。頬をつねってもやはり痛みを感じる。…どうやら夢ではないらしい。

 

 何で俺のベッドに入っているのか気になるが理由は起きてから話してもらおう。     

 とりあえず、桃華を起こさないようにベッドからでるとリビングへと向かう。桃華もあの調子だといつものように早く起きてくるわけでもないだろうし、沙奈も一応客ではあるので朝食を用意しないといけないだろう。

 

 いつものように、顔を洗い寝癖を整えてキッチンへと立つ。しばらく、キッチンは桃華に任せていたせいか久しぶりの感覚だ。

 朝食のメニューは比較的簡単に作ることのできるフレンチトースト、コンソメスープ、サラダでいいだろう。

 

 料理中は暇なのでリビングのテレビを付けて、朝のニュースを見ながら作っていると沙奈が起きてくる。

 

「…ふぁ~、おはよー」


「おはよー、風呂場のところに洗面台あるから顔洗ってきな」


「はーい」


 まだ7時過ぎなのに休日にしては随分と早い起床だ。おそらく日頃の癖で起きてしまったのだろう。


 沙奈が戻ってきてソファに座りながらだらだらとテレビを見ているうちにさっさと朝食を作り終わる。


「沙奈、桃華起こしてきてもらえる?」


「いいけど… 朝起きたら桃華ちゃんの部屋にいなかったよ?」


「あー、……俺の部屋で寝てるわ」


「えっ、うらや── じゃなくて、なんでよ!?」


「いや、俺も知らないよ。朝起きたら隣で寝てたんだよ」


「えぇ、 ……桃華ちゃんに直接聞くしかないか」


 桃華は沙奈に任せても大丈夫だろう。沙奈が桃華を起こしに行っているうちに朝食をテーブルに並べていく。


 丁度並べ終わる頃に沙奈が桃華を連れて降りてくる、が何故か沙奈が申し訳なさそうにしている


「…えーと、どうしたんだ?」


「…私の寝相が悪くて、桃華ちゃんを追い出しちゃったみたい……」


「私が理由もなく、宇津さんのベッドに入る訳ないですよ」


 どうやら、昨晩一緒のベッドで寝た所までは仲が良くていいのだが、その後桃華は沙奈に蹴られて自分のベッドから追い出されてしまったらしい。それで、居場所がなくなって俺のベッドに来たのか。


 まぁ、沙奈も申し訳なさそうにしているし、桃華もそこまで怒っているというわけでもないので、俺は理由が分かったのでこれ以上言うことはない。


「…うぅ、ごめんね、桃華ちゃん」


「最終的には幸せになれたのでいいですよ。でも、あそこまで沙奈さんの寝相が悪いとは思わなかったです」


「桃華ちゃんに言われて初めて知ったよ……」


「はい、そこまでにして冷める前に朝食たべてくれ」


 俺がそういうと「はーい」と言って椅子に座って三人で食べ始める。


 沙奈に今日はこれからどうするのか聞くと午後から用事があるらしく、午前中のうちに家に帰らなければいけないらしい。随分と忙しいスケジュールの中でうちに泊まりに来たようだ。



 楽し気に話している二人を眺めながら、食べ終わった食器を洗う。自分の作った料理を美味しそうに食べてくれる人がいると作った側は嬉しくて洗い物も捗るというものだ。


「あっ、そろそろ時間だから帰るね」


「もう帰っちゃうんですか?」


 まだ昼時まで結構時間があるのだがもう帰ってしまうらしい。沙奈を見送るために洗い物を一旦止める。


「買った荷物とかもあるし早めに帰っときたいからさ。桃華ちゃんも今度は私の家に泊まりに来てね」


「絶対行きます!…でも一緒に寝るのはやめましょう」


「あはは…… 今回ので分かったからさすがにね…」


 沙奈の荷物を玄関まで運び見送る準備をする。


「また、遊びにこいよ」


「うん、宇津くんもありがと。…男でも宇津くんなら私の家に泊まりに来てもいいからね!」


 からかうように笑いながらそう言って帰っていく沙奈。最後に照れたのか頬赤くしていたのが締まらないな、と思った。



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