ep.17

 昼休みになる。まだ、桃華の周りは人だかりできている。今日は桃華には近づけなさそうだな、と思いながら弁当を食べた。


 

 放課後になった。桃華の周りに人だかりも無くなっている。昨夜、事前に校内を紹介して下さい!と桃華に言われているので早めに

 準備を済ます。

 

「あれ、桃華ちゃんと一緒に帰らないの?」


 いつもより早く帰宅する準備をしている俺を見て、橘さんに不思議がられる。


「ん、今日はこれから桃華に学校を案内することになってるから」

 

 俺がそう言うとえーいいなー、と羨ましがる橘さん。なら、一緒に案内するか?と誘うといいの⁉︎と嬉しそうにしている。

 予想通りに、桃華と仲良くなっている様だ。


「桃華ー、行くぞー」


「あ、はい!すぐに準備します!」


 桃華に一声かけると、放課後の案内がよっぽど楽しみだったのか、すぐに準備を終わらせて行きましょう!と張り切っている。


 橘さんが私も案内するからね!と桃華に言うとぺこりと頭を下げてお願いしますと言われている。

 

「それじゃ、行くか」


 特に何処から案内をするか決めたいたわけではなかったのだが、橘さんが時計回りで見ていこー、と言うのでその通りにする。


 体育館、家庭科室など授業で使う部屋の場所を教える。放課後ということもあり、途中で部活動をしている生徒を見つける。桃華は部活に入るのかな、なんて考えながら校内を案内し終える。


「後は… 外を、案内したら終わりか」


 俺がそう言って昇降口に向かうと橘さんは荷物を持っていなかった様で少し待ってて!と言うと教室に荷物を取りに行く。


「今日はありがとうございます!宇津さん」


「別に大丈夫いいよ、そんな手間がかかる訳じゃないから」


 橘さんを待っていると、桃華にお礼を言われた。正直、俺に出来ることはこれくらいしかないので、させてくれないと困る。


「宇津さん… 学校でやっぱりぼっちなんですね」


 そう桃華にジト目で言われてうっ、となる。


「別にいないんじゃなくて、作って無い──」


「そうやって、見栄張ってるから友達できないんですよ」


 まさか、今日学校に通い始めた桃華にそれを言われるとは…… だけど、正論だから何も言えない…


「私も頑張りますから、宇津さんも頑張って下さいね」


 渋々はい…と答える。すると荷物を持って橘さんが戻ってきた。


「何の話してたの?」


「宇津さんが友達いない話です」


 桃華が答えると、橘さんもあー、いつも一人だもんねぇ、とこちらを見てくる。


「友達がいなくて悪かったな…」


「あー、もういじけちゃって。私は友達だと思ってるよー」


 からかうように笑いながら言う橘さん。はいはいと適当に返すと、三人で校庭付近を見て周った。





「今日はありがとうございました!」


「別に大丈夫だよ。困った事があったら頼ってね!」


 案内が終わり橘さんとは校門前で別れる。橘さんとは逆方向に歩いて帰る。


「瀬見矢くーん!私は君の友達だから

 ねー!」


 突然橘さんが大声で叫ぶ。そして、笑顔で笑って、じゃあねー!と言うと走って去って行く。


 いつまでからかってんだよ、と思いながらも少し胸が暖かくなる。

 

「ずいぶんと仲がいいんですね…」


「まぁ、な。最近から仲良くしてもらってるよ」


 何故か口元をツンとさせ、そっぽを向く桃華。


「どうかしたか?」


「別に… 宇津さんなんか知りませんっ」


 そう言うと、早足で歩き出す。えぇ…と戸惑う。女子の気持ちはよく分からないと思いながら桃華について行った。











 






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