ep.16


「桃華ー、荷物はちゃんと持ったかー」


「持ちました!大丈夫なはずです。……多分」


 今日は桃華がうちの高校に通い始める日だ。桃華の荷物を確認して家を出る。初日ということで今日は桃華と一緒に通う。初めての学校が楽しみなのか、少しスキップ気味になっている桃華。


「宇津さん!私、友達できますか?」


「そのくらいのテンションで行けば桃華だったら大丈夫だろ。とりあえず、一人は確実に友達できるぞ」


 と言いながら最近仲良くなった橘さんを思い出す。俺の話を聞いてるだけでも、早く会いたい!なんて言っていたので桃華とは仲良くしてくれるだろう。


「おっ、宇津じゃん。おはよー」


 桃華と話していると、丁度よく十字路から村田が出てくる。

 俺に気づいた後、桃華にも気づいたようで、俺たちを見てニヤニヤと笑みを浮かべている。


「勘違いしてるようで悪いけど、桃華は彼女でもなんでもないからな」


「…かっ、…彼女っ… 」


 何故か顔を赤くしている桃華は置いといて、村田に釘を刺しておく。


「分かってるって。その子が前話してた桃華ちゃんか。俺はそっちの宇津の友達の村田誠むらたまことです。これからよろしくね」


 チャラそうな見た目によらず、案外丁寧な挨拶をする村田。桃華も俺から話は聞いていたのでそこまで驚いてはいない。


「桃華です。えーと、これからよろしくお願いします!村田さん」


 優しそうに微笑みながら挨拶する桃華。美少女にちょろい村田は一撃で堕ちたようで、何故か恥ずかしそうに少しもじもじしている。見た目と行動の差が大きすぎて少しキモかった。



 学校に着き、職員室まで桃華を連れて行く。クラスは前日に知らされており、俺と同じクラスだ。桃華は後から担任と入ってくるそうなので、また後でな、と言って俺も教室へと向かう。


 教室に入り席へ向かうと、先に来ていた橘さんが よっ、と手を挙げていたので俺も挙げ返す。

 席に着くとやけに嬉しそうな橘さんに喋りかけられた。


「瀬見矢くん、今日から桃華ちゃん来るんだよね!何処のクラスに来るのかなぁ」


「さっき桃華を職員室まで送ってきたぞ。クラスは知りたいなら教えるけど…」


「んー、いや、ワクワク感を楽しみたいから教えるのはNGで」


 そんなワクワク感もあと少しで終わるんだけど… まぁ、これなら桃華と仲良くしてくれそうだと思う。俺は例外だったが、人気の橘さんと仲良くなれば桃華ならそこから芋づる式で友達も増えて行く。


 しばらくの間、橘さんの話を聞いているといつもより早めに担任が入ってくる。


「みんなー、席についてー。早くしないと転入生紹介しないぞー」


 少し気怠そうに伸びた口調で呼びかける。クラスの皆は前日に聞かされてはいないので、転入生?と不思議に思いながらも急いで席に着く。


「席に着いたなー。よし、桃華さん入ってきてー」


 教室の開いた扉から桃華が入ってくる。大人数に見られて緊張しているようで、少し動きがぎこちない。


「それじゃあ、桃華さん自己紹介お願いねー」


「はいっ、今日から学校に通わせて頂く、桃華です。仲良くしてくれると嬉しいです。よろしくお願いします!」


 最後にぺこりとお辞儀をして自己紹介を終える。


「それじゃあ、席はー …橘の隣が空いてるからー、桃華さん、一番後ろの窓際から三番目が桃華さんの席です。何かあったら、周りの人に聞いてみてー」


「はい、わかりました!」


 

 桃華は窓際から三番目……、と席を探していると途中で俺を見つけた様で嬉しそうにこっちを見て微笑んでいる。

 俺と桃華にいた奴らが、桃華さんが笑いかけてくれたぞ!とざわめいている。


 隣の橘さんが、可愛い…と目をハートにしている中、桃華が後ろまで歩いてくる。途中でよろしくねー、なんて声をかけられながら席に座る。


「よし、ホームルームはこれで終わりだー。授業の準備しとけよー」


 そう言って今日を出て行く。すると、すぐに、桃華の周りに人がら集まる。色々聞かれていて、中には女子に連絡先交換しよ、なんて言われてもいる。

 桃華の様子を見て、学校にもすぐに慣れそうだな、なんて思いながら朝の時間を終えた。





 

 

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