第10話 ママは僕を虐める妖狐を懲らしめて服従させる。

 僕はママと一緒に全裸でデート中である。誰にも見咎められず、真昼間のストリーキングを満喫している。そして近くの神社に辿り着いた。普段から人っ気のない小さな神社である。

 鳥居をくぐる時、ママは一礼した。僕も真似して一礼した。お手水場で一緒に手を清めて口を漱いだ。

「ねぇママ、ここは清めなくていいの?」

 僕は腰を前につきだした。

「そこは神聖な所だから、わざわざ清めなくても好いのよ。でも、ママが清めてあげましょうか」

「じゃ、僕もママの神聖な所を清めたいな」

「いやんばか、そんなこと。他の神様の前でなんて」


「ところでさ~、ママと僕は神様なんだよね?」

「そうよ、神と呼ばれる者よ」

「昔から、きちんと神社にお参りしてるけど、他にも神様がいるってことだよね」

「そうよ、私たちの知らない神様は沢山いらっしゃるわよ」

「じゃ、ここの神社にも神様がいらっしゃるんだよね」

「ここはお稲荷様だから狐の神様がいらっしゃるんでしょうね」

「そういえばママって九尾の狐様っぽいよね」

「そう間違われたことも有るわね。ヰサヲちゃんも狸様っぽいわね。風もないにぶーらぶら」

「鳶が鷹じゃなくて、狐が狸……僕言い返せないや」

「私、タヌキ可愛らしくて好きよ」

「う~ん、それよりさー、神様が神様を祈るってどういう意味があるの?」

「近所の人に挨拶するようなものよ。私は右手にライフル、左手にバイブルなんて嫌ですもの。郷に入らば郷に従え。その土地土地の神様に挨拶して仲良くやって来たわよ」

「神様に、お願いすると僕たちにも御利益って有るの?」

「有るわよ。有るけど、私たちの御利益と同じ。恙なく過ごせることが何よりの霊験なのよ。あなたも神様の端くれなんだから、何事もないことの有難さを忘れないでね」


 僕はママの作法を真似てお稲荷様にお参りをした。長い睫毛を伏せて真摯なママの顔も、何度見ても飽きないな。


――きぃー……

 と木戸の開く音がする。

 見ると社殿の扉が開いた。


「ヰサヲ君、何で裸でお参りしてるの。しかも、おばさんと一緒じゃない」

 中から出てきたのは、例の虐めっ子である。僕のズボンを脱がそうとする女子である。改めてみると、狐っぽい顔をしている。


「誰がおばさんですって?」

 ママの顔つきが険しい。今まで見たこともない。髪の毛が逆立っているように見える。そう見えるのは髪じゃない。ママのオーラだ!


 すると狐っぽい顔の虐めっ子は、喉を抑えながら悶え苦しんでいる。そしてパタッと倒れてしまった。

「ママ、殺しちゃったの?」

「殺してないわよ。ほら、これをご覧なさい」


 僕たちの足元で二尾の狐が腹を見せて転げまわっている。狐の体から、石畳が透けて見える。幽体というか霊体なんだな。

「ご無礼の段、なにとぞ平に御容赦ください。どうか命だけは御助け下さい」

「まぁ反省してるのなら好いわ。赦してあげるから、訳を話してね」

「あの~、もう悪さを致しませんので、畏れながら依り代に戻って宜しいでしょうか?」

「戻りなさい」


 二尾の狐が消えると、狐顔の虐めっ子は立ち上がった。バツの悪そうに顔を伏せて服を脱ぎ始めた。貧乳だけどスレンダーで好みだな。ママや僕と同じでツルツルだ。ママ以外の裸を見るのは、子供の頃の銭湯以来だな。ママが最高だけど、女の子の裸は好いものだな。

 ママは小声でつぶやいた。

「やっぱり、虐められて喜んでたのね」

 冷ややかな視線を僕の王笏に落した。


 全裸になった虐めっ子は僕たちの前で土下座をした。

「私は名もなき狐神でございます。古くより、この社に住まう者でございます。さぞ名高く御力のある神様とは汁知らず、数々のご無礼の段、改めてお詫び申し上げます」

「ところでヰサヲちゃんを虐めた理由は?」

「あ、はい。ヰサヲ様の精を分けて頂きたいと存じ、無理やり吸い取ろうとした次第であります」

「そうね、名もなき狐神さん、あなたの霊力も相当弱ってるみたいね。ヰサヲちゃんを襲おうとして理由もわからないではないわ。あなたには真名が無いのよね」

「はい。誓って申し上げます」

「あなたの依り代の名は?」

「陽子です」

 ああー妖狐ってことか。

「ならば、聖杯・餐蔵得サングラールたるマリヱの名に於いて、そなたに陽子という真名を授けましょう。今より、狐狸禽始端クリトリシタンの眷属に加えましょう。よろしいですか?」

「あなた様が、神々の中で名高き狐狸禽始端クリトリシタンの聖杯・餐蔵得サングラールのマリヱ様でしたか。数々のご無礼をお赦しの上、眷属に加えて頂けるとは感謝の言葉もございません。永遠の忠誠を御誓い申し上げます」

「ならば、目を閉じて口を開けなさい。そなたに聖餐を授けましょう」


 ママは僕を陽子の口の前に勃たせた。けっこう可愛い顔してるな。ママの白魚の指が気持ち好い。背中にママに乳首が擦れる。僕も快く気持ちよく彼女に赦しを与えた。彼女は一滴もこぼさずに聖餐を口に溜めた。そして一気に飲み込んだ。すると彼女は神々しく光り輝いた。


 僕とママは神社を後にした。陽子は深々と頭を下げて僕たちを見送った。ママには及ばないけど、前よりも一段と綺麗になったように見える。これが聖子せいし・聖餐の力なんだ。


「ママごめんね。ママの言ってることが本当だって判ったよ」

「判ってくれれば好いのよ♡」


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