第7話 パパなんかと、どうして結婚したの?

「ママ、今思い付いたんだけどさ~。ママのお腹の中に僕の赤ちゃんが出来るから、魂吸い取られて僕が死ぬんだよね」

「そうよ」

「だったら、避妊したら好いんじゃないの?」

「そんなの不純よ。快楽の為だけHしちゃダメよ。Hはね、大自然の摂理に沿った神聖な営みなの。それにコンドームされると、だってね、ママ気持ちよくないんだもん」

「へぇー、コンドームで試したことあるんだ」

「えぇ、まぁそうよ。……」

 ママの目が泳いで、声が上ずっている。なんか他の男の影がちらつく様で面白くないな。追及するのは止めておこう。怖くて聞けない。


「ところでさー、ママって父さんとHしてるの?」

「結婚した頃に三回くらいかしら。その後はそれっきりよ」

「せっかくママと結婚できたのに勿体ないね。ところでさ~その時、僕はどうなってたの?」

「あなたを身籠ってわ。だから、パパはあなたのことを一応自分の子供だと思っているのよ」

「僕さ~、お父さんのこと好きじゃないけど、さすがにそれは可哀相だよ。結婚なんてしないで、ママと僕の二人だけの母子家庭でよかったじゃん。どうして父さんと結婚したのさ~?」

「ヰサヲちゃんママを責めないでよ。パパとの結婚唆したのは、前世のあなたなのよ。今のあなたには責任はないんだけど」

「じゃ一番の悪者は僕だったの?」

「私も共犯者だけどね。話のいきさつはこうよ。先代のヰサヲ君とパパの与作さんはね、始めのうちは仲の好いお友達だったのよ。あなたがね、思春期に入って私を求め始めた頃、与作さんも私に好意を抱いてたのよ。それで私を巡って仲違いし始めたのよ」

「三角関係だったんだ。ママは父さんのこと好きだったの?」

「人間としては嫌いじゃないわ。だって、あなたの数少ない友達大ですもの。今だって、殆ど友達いないでしょ?」

「あぁー痛いところ突かれた。だって友達と遊ぶ時間あったら、ママの傍に居た方が全然好いじゃん」

「あなたは毎回そうだものね」

「で、どうして僕がママのお腹の中で寝ている間にパパと結婚したの?」

「その前に、私の先代と狐狸禽始端クリトリスタンが日本に来た話に遡るわね。狐狸禽始端クリトリスタンはね、西洋の魔女たちも組織なの。私の先代は大魔女で魔女たちの師匠だったの。キリスト教の魔女狩りから逃れて、日本にやって来たのよ。だから、狐狸禽始端クリトリスタンはクリスチャンを快く思ってないのよ。それでも、日本ではクリスチャンと仲良くしてたわ。……ところでね、パパの顔見てナニか気が付かない?」

「そういえば、ちょっとだけ外人さんっぽいよね」

「そうなのよ。与作さんの先祖はね、魔女狩りで大勢の魔女を殺した異端審問官なのよ。与作さんは最後の末裔らしいわ。だからね、『お前が俺の子を身籠ったまま与作と結婚して、奴との子を作らなければ、人殺しをせずに奴の家を絶やせるじゃん』って、入れ知恵した人がいたのよ」

「本当に悪い人だね。それにママのこと『お前』呼ばわりなんて、誰なんだよ!」

「それ、先代のあなたよ!」

「えっ、前世の僕なんだ。前世は結構悪い奴だったんだ」

「そうよ。態度も横柄で素行も悪くて陰険で腹黒かったけど、そこがちょっと可愛かったわね。あのままお腹の中に取り込まなかったら、大魔王に成って一九九九年七の月には人類滅ぼしてたかもね」

「じゃ、ママが地球を救ったんだ!?」

「あなたの自滅が地球を救っただけよ。私の誘惑に耐えきれなくてね」

「僕の自滅のお蔭で地球は救われたんだね。もし地球が滅んでいたら、僕とママも二度と会えなかったんだね」

「そんなことないわよ。あなたを身籠った状態なら、地球くらい滅んでも異世界に逃げれば済みますもの」

「えっ、異世界って有るんだ!?」

「長い輪廻の中で何度か異世界に行ったことも有るわよ」

「じゃ、ママと一緒にRPGみたいなこと出来るんだ!?」

「そうね、時間は掛かるけど、出来るわよ」

 そういえば異世界ハーレムって流行っているな。

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