魔王に惚れられた
二歳児
第1話 序章
何かが心臓を貫く音を聞いた気がした。
矢が突き刺さったような生易しい音などではなく、心臓の奥に根を張ってもう二度と引き抜けなくなったかのような、重い音だった。
おかしい。こんな思いを今まで経験したことがない。魔族のために必死に努力してきたはずだ。何事にも耐えてきたはずだ。
でも今は、耐えられる気がしない。
「………あなたが勇者ですか」
恋は障害があるほどに燃え上がると聞いたことがあるが。
「ああ、そうだ。………気乗りはしないが貴女と戦うことになっている」
障害などなくとも最高潮に燃え上がっているような気がする。
一目惚れだ。疑いようがない。間違えるはずもない。少し息が震える。
「決めました」
私の唐突な宣言に、勇者が困惑顔をする。ああ、困惑した顔も良い。俗に言う格好の良い顔ではない。庇護欲を擽られるような顔でもない。形容しがたい愛しさがそこにはあった。
「今日からあなたは私の旦那さんです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます