第43話⁂初美の死!⁂



 ある日、貴美子から剛に電話が入る。

「一度小百合の近況も聞きたいし、電話じゃ~離せない事も有るので本宅に伺ってもいいかしら?」


「ああ~良いヨ!あさっての昼1時頃、休みで家に居るから、娘も部活で居ないから」



 ””ピンポン ピンポン””

 日曜日の午後1時に今井邸に貴美子の姿が有る。


「さあどうぞお上がり下さい」


 お手伝いのさきさんが丁重に迎えに上がっている。

 こうして応接間に通された貴美子なのだが、もう既に応接間で新聞に目を通している剛の姿が有る。


「ああ~!待っていたよ!」

 あれだけ鬱陶しかった貴美子だったのだが、時の流れとは不思議なもので久しぶりの再会に懐かしさで一杯の剛。


「久しぶりね~色々あったけど~今となっては、懐かしい思い出ね!」


「ところで…電話で話せない話って一体なんだい?」


「そうなのよ~あのね……?私はこの際だから…万里子より小百合の方が年上なんだし……継承者は……小百合で良いんじゃないかと思うのよ?…まだ何も分からないけど‥確かにあのカ-マニアの男は井上幸子に成り済ましていたのは、初美の母に違いないって言っているのよね~?……いい返事貰えなければウッフフフ……私警察にこの情報漏らすわよ?」


「オッお前は‥卑劣な女だな~!口外しない約束で中元君を本社に戻してやったのに?‥酷い!酷すぎだ!」


「ウッフフフ!‥あなたがむきになるって事は、やはり初美の母が井上幸子に成り済ましていたって事なんじゃ~ないの?もし調べても何も出て来ないんだったら余裕綽々で、どうぞどうぞ調べて下さいって言えるはずよ!あなた何か分かったのね?」


「…何もないよ?…だがあの時もうこの話はおしまいという事で方が付いたのに……今更また蒸し返して!もう許せない!…中元君を首にしてやる!……それでも初美と万里子を追い込む気か?」


「あなたがむきになればなる程、初美の母が井上幸子に成り済ましていたって事言っているようなものなのよ!・・・あなたは昔からそうだったわ、本当のことを言われると徹底的にむきになる人だったわ?・・どうぞ首に出来るものならやってごらんなさい?その代わり、あのうさん臭い初美親子を警察に突き出してやる……!もしそれが嫌だったら、私を苦しめた初美と今すぐに離婚して、私の目の前から居なくして遠くに追いやって頂戴……!それを聞いてくれたら金輪際、初美親子の事は言わないわ!絶対よ!約束するわ!」


「お前は最低の女だな!」


 剛にしてみれば、井上幸子に成り済ましていた初美の母親和美が、警察に知れてしまえば芋ずる式に全て分かってしまい、やがては父親が柳田勇に成り済ましてA氏を殺害した事に行き付くのも時間の問題と思い苦渋の決断を下した。


 こうして初美と万里子お嬢様は、相当額の慰謝料を相続して未知の土地、北九州市に移り住む事になった。


 それでも初美は、一度に余りにもいろんな事が起き過ぎて、更には最後の唯一の命の綱である、あんなに優しかった剛にゴミクズのように捨てられ、ショックの余り九州に移住して間もなく過労で病を患い亡くなったのだ。


 それはそうだ。

 2人は本当に仲の良い夫婦だったのだから………。


 剛とて絶対に別れたくはなかったのだが、全て白日の下に晒されれば会社諸共、家族まで路頭に迷わせることになる。

 致し方ない決断だったのだ。


 何故九州なのかと言うと、そこには、転勤になったばかりの剛の従兄弟満が居たからなのだ。

 剛の配慮によるものなのだが……?








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