第23話⁂初美の出自?⁂




 下の妹や弟ばかり可愛がる義父に小百合は、等々我慢が出来ずに5歳の光男を、雪の中に埋めてしまった。


 あいにく大騒動にもならなくて、軽い凍傷で済んだのだが、義父は余りの出来事に、買い物から帰って来るや否や


「小百合、仮にも弟になんて事を!‥何て事を!ウウウウッ」


 ””パシ――ッ!””

 カ―ッとなって義父は男泣きをしながら小百合の頬っぺたを、思いっきり叩き付けた。



 そんな事が有った義父と小百合だが、お互いの気持ちを話し合い、やっとわだかまりも解けた義父の中元と小百合………。

 だが、運の悪い事に、この事件が原因で小百合は右耳が聞こえなくなってしまった。


 余りの勢いで頬っぺたを叩いたものだから、右耳の鼓膜が破れて突発性難聴になってしまったのだ。


 その後、病院で治療を受けたのだが、3人に1人は治らない病気らしい。

 運が悪い事に、余程の衝撃だったのか?その3人の内の1人になってしまった小百合。


 それを知った鎌倉の不動産会社【ATホーム】社長は憤慨して。


「私の大切な娘に何て事を!許せない!……ナニ――――――――ッ?右耳が聞こえないだと―――ッ?私の大切な娘をカタワにしおって!」



 不動産会社【ATホーム】の社長剛は早速、取るものも取り敢えず金沢支社に乗り込む。


 それは当然の事。

 可愛い自分の娘をカタワにされて黙って見過ごす事は出来ない。


 あんなどうしようもない小百合なのだが、小百合は長期の夏休みや連休があると真っ先に、父剛の元に駆け付け甘えていた。


 妻初美との間に出来た万里子はいつも傍に居て、充分な愛情を注いでいるので安心なのだが、長期休暇が出来ると飛んでやって来る小百合には、申し訳なさも手伝って余計に可愛いのだ。


 こんな自分の身勝手な行動で片親にしてしまって…………。

 不憫で不憫で鎌倉にやって来た時は、それこそ社長で出来る精一杯の、夢のような贅沢な時間を送らせてやっているのだ。

 社長に出来る唯一の罪滅ぼし。


 またそれだけ尽くし甲斐のある甘えん坊で、中学生にもなるのに「パパのベッドで一緒に眠りたい!」とパパのベッドに忍び込んで来る何とも可愛い娘。


 鎌倉にやって来た時には片時も離れたくない小百合は、会社にまで付いて来る有り様。

 一見とんでもない生意気なガキと思われがちだが、只の愛情に餓えた小娘なのだ。


 そんな目に入れても痛くない程の大切な娘をカタワにされて、居ても立っても居られずに金沢支社に飛んでやって来た社長。


 そして応接室に入るや否や支社長の中元を呼び付けている。


「このたびは本当に取り返しの付かない事を・・・申し訳ない事をしてしまい…すみません」

 席に着くなり平身低頭で謝る中元。


 しばらくの沈黙の後「……君には課長から色々問題が有ると聞いている…例えば…いわれのない部下に対する嫌がらせ……それから、女性社員に対しての性的な虐待まがいの実態も幾つも聞いている……だからもう君は会社には必要ない!……それから…ワシの……ワシの可愛い娘に……な~んてことをグウウウウ……きっと‥あの貴美子がそう易々とは首を縦に振らないとは思うが……娘が心配だから鎌倉に引き取りたい!…もしそれが叶わないのであれば‥貴美子も居る事だし……?首は免れさせてやる!……ワシの温情でキミは丁度富山県の氷見支店の支店長代理が高齢で退職だから4月から支店長代理として、そこに移ってくれ!…それを飲めないんだったらさっさと荷物をまとめて出て行け!」


「そっそそんな~!僕は……女性社員に一切手を出したりしていません。それから問題のある社員には……それは厳しく注意する事はありますが…?」


 中元から全てを聞いた貴美子は、社長に諸々の説明や小百合の悪態の限りを説明している。


「違うのよ!部下を注意しただけなのよ、それから小百合が社長の娘を笠に着て、散々な事をするのよ!私たちの息子光男を雪の中に埋めたからなのよ!」


「…あんな良い娘がそんな事をするとは思えない?……俺の大切な娘にケチをつける気か~?ともかくお前達には小百合を任せておけない!……お前だって子供2人もいる事だしサッサと小百合をこっちによこしなさい!」


「それから何よ!支社長から支店長代理って~?それも北陸で一番売り上げの悪い富山県氷見支店の支店長代理ってあんまりじゃないの~?」


「まあ~仕方が無い。それだけ部下の信頼を勝ち取る事が出来ない中元君に問題が有るのだから!」


「お願いよ!あんなに頑張っていた中元にあんまりよ!」


「何があんまりだ!……こっちとしても命より大切な娘をあんな身体にさせられてグウウウウ(´;ω;`)ウッ…不憫で不憫で仕方が無い!……本来なら中元の顔も見たくない所だが?お前に免じて首の皮を繋いでやっているんじゃないか~?もう切る!」


 ””プ-プ-プ-””

 電話が切れた。


 そこで中元と貴美子は、余りの不当な待遇に憤慨して話し合っている。

 何とか回避する事は出来ないものか?


 すると中元が「…そういえば社長夫人の初美さんは会社ナンバー1の美人だったが、あの頃まことしやかに、とんでもない噂がささやかれていたな~?…俺は顧客の書類も扱っていたが、その時にひょんな事から新潟県長岡市の大棚の造り酒屋の柳田さんの話が出て???……その時に娘なんかいなかった?」


「造り酒屋の娘って言っているけど…あなた~?それって何か怪しい?ひょっとしてとんでもない事が隠されているかも知れないわね?徹底的に調べてみましょう」


「ウッフフフフよくも俺をコケにしてくれたな~!」


 やがてとんでもない事実が判明してくる。

果たして初美はどうなって行くのか?






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