第18話⁂永田亮の存在!⁂


 それでも静子は、九州のロ-カルミュージシャンの頃に、永田亮のコンサートで東京都渋谷区にある、大手芸能事務所ホープダッシュの大物スタッフの目に留まり、スカウトされたのだが、何故素性の良くない静子が、日本有数の不動産会社の社長令嬢に収まる事が出来たのか…?


 実は静子が、永田亮のコンサートに出演していた頃に、球界一のスタ―木村直樹と3人の娘、静子と万里子お嬢様、更にはめぐみちゃん達は距離を縮めていった。


 そんな時に万里子お嬢様たっての希望で誕生会に、直樹を豪邸に招待した時が有った。


「あ~らよくいらっして下さいましたわね~!上がって上がって」


 リビングルームに招かれた直樹は、余りの豪華な調度品の数々と高級料理に、只々目を見張るばかり。

その日はあいにく静子はモデルの仕事が入り、折角の万里子お嬢様の誕生日だというのに欠席している。


 リビングルームには美しい万里子お嬢様の、ポートレ-トやスナップ写真が、可愛いフレームに収め飾られてある。


 するとその中の、スナップ写真の中のある一点に目が行った直樹なのだが、よくよく見ると、万里子お嬢様の後ろにチラリと写った女性にビックリした直樹。


{このスナップ写真の静子にそっくりな女性は誰なのか?1971年元旦と書かれてあるが、まだこの頃は、表立ったア—テイスト活動していないから、静子と万里子お嬢様の接点は無い筈だ!}


 そこで直樹は万里子お嬢様に尋ねた。

「…この女性は誰だい?」


「アア~?その子は私と腹違いの1歳違いの姉なのよ。お正月にお父様に呼ばれて鎌倉に出掛けた時のスナップ写真よ……でも事情があって滅多に会わないのよ……まあ~色々あって断絶しているのよ!フフフ」


 楽しい時間を過ごした直樹なのだが、何か静子と万里子お嬢様に因縁めいたものを感じ、数日後に会った父親に、あの静子とそっくりな写真の少女の話を打ち明けた。


 すると……九州博多の興行も一気に引き受けていた父は、早速その事に着目した。

{これから売り出して行くに当たって、いずれ全て公に晒される事になる、まあ~?色んな人種がうごめく虚構の世界だが、折角こんな願ってもない運が転がり込んで来たんだ。それに乗らない手は無いだろう?}


 そこでメジャ-デビュ―と同時に芸名を新しく白崎緑に改名。

 そしてデビュ―する1年以上前に、Kエイジェンシーは辞めてシズコとして中洲のクラブで歌っていた。


 だから、Kエイジェンシーではミュージシャンの欠員が出来たので、一度だけ永田のコンサートに飛び入りで出演させているのだが、まさか静子がア—テイストとしてメジャーデビューしていようとは、努々思ってもみなかったのだ。


 何故Kエイジェンシーを辞めたのか……?

 それは小百合さんとして生きて行く為に、過去の水口静子を消し去る必要があるからなのだ。


 その後は、シズコとして父親の力で中洲のクラブで歌っていたのだが、実力のある静子は九州の有力新人として祭り上げられ、仕方なく永田のコンサートに参加させられた。

これがのちのち誤算となって静子に、追い打ちをかける事になる。



 静子は小百合に生まれ変わるべく特徴を捉える為に、万里子お嬢様から時間が空くと猛特訓を受けている。


 万里子お嬢様にしても、憎き本物の小百合を跡継ぎになんか絶対にさせたくない。

{会社をあんな女なんかに渡して堪るものか!}

 こんな大人しそうなお嬢様なのに、とんでもない事を考えているのだ。


「ほ~らそんな歩き方じゃ~ダメよ!もうちょっと小股でお上品に!」


「ハ~イ!分かりました」


「アア~話し方は、九州弁は絶対にダメね!『食べられないを食べきらんとか言っちゃ絶対にダメ!それから何々しているを何々しちょるとかも絶対にダメ!』」


「ああああ!本当に大変じゃ~」


「ああああ!(じゃ)も絶対ダメね!」

小百合になる為に猛特訓を受ける静子。



 それから幾らそっくりと言えども、小百合さんは少し前歯が出ているし、二重も静子程クッキリしていない。


 父親忠の力で、ヤクザや訳アリ人物御用達の闇病院で、小百合さんと同じ目元と口元に整形手術を受け小百合に生まれ変わった静子。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 それでも色んな難題が降りかかってくる。

それは唯一水口静子の過去を知る大物アーティスト永田の存在。


 25歳の緑は絶頂期を迎え、曲作りに大わらわ。

 そんなさ中に緑とスポンサー契約を結んでいる企業、国内最大手の電機メ-カ-山下電機社長の長男、山下勉と交際、やがて山下勉とめでたく婚約した。


「あなたはお金持ちのお嬢様と言われているけれども?・・・本当はあの時の水口静子じゃ~ないのかい?一度食事でもしながらあなたの真実の姿を……フフフ……嫌とは言わせないよ!」


{あの時は余りの事に目の前が真っ暗になったものだ!}

 それでも運良く、水口静子と白崎緑が同一人物である事を知っているだけで終わっていたのだが、どこから漕ぎ着けたのか、何もかも全て知ってしまった。


 永田亮はもうとっくの昔に過去の人。

 最近は浪費癖がたたり金銭的にも困窮している様子。


 そこで地元九州のKエイジェンシーの仕事も引き受けているらしく、Kエージェンシ―のある筋から極秘に水口静子の過去が分かり、その筋の男とグルになり、それをネタに緑に頻繫に金の無心をして来るようになった。


 勿論Kエイジェンシーではモデルとして活動していたので、水口静子と白崎緑が同一人物である事は知らない。

 雰囲気も随分変わっているので気付いていない。



 それなのにあの永田亮に知られていたとは……。

 あの時はビックリした。


 まさか、水口静子と白崎緑が同一人物である事が分かっていたとは、折角苦労して白崎緑になったのに……?それでも水口静子の事など、たかがロ-カルタレントの事など鼻にも掛けていないだろうと高を括っていたのに……。


「あなたはお金持ちのお嬢様と言われているけれども?本当はあの時の水口静子じゃ~ないのかい?一度食事でもしながらあなたの真実の姿を……フフフ……嫌とは言わせないよ!」


{あの時はもう目の前が真っ暗になり全て水の泡と思ったものだ……だがあいにく水口静子の出自は知らない様子で安心していたのに、最近どこで調べたのか、出自や父親がまさか、武闘派で知られる吉川会組長だという事まで知っていたとは?……そんな父親が忠だという事は、私も知らなかった事なのに…それから今井小百合に成り済ましている事までどうして分かってしまったのだろう?}


 窮地に立たされる緑。

 最大のピンチに立たされた緑はどうなるのか……?


{全て白日の下に晒されたら私はおしまいだ!}


















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