第8話⁂永田と対面!⁂




夏の太陽がシャワーのように降り注ぎ、熱気を帯びたアスファルト脇に咲くひまわりだけが元気よく大輪の花を咲かせている。⋆*☆・✶


そんな気の狂ったような暑さの1976年の8月某日の正午過ぎに、指定された高級ホテルのレストランに向かう緑。


あのような脅迫めいた言葉を浴びせかけられた緑は、気持ちも滅入り、この暑さのさ中、一層足取りが重く感じ、今直ぐ逃げ出したい衝動に駆られている。


そして東京でも有数の高級ホテルに消えて行った。


待ち合わせの、ホテルのレストランに入ると、今までの気持ちとは打って変わって

すっかり音楽の世界に引き込まれる。


グランドピアノから流れる♪*。⋆✶

繫栄を極めた頃の映画音楽がピアノの旋律に乗って

何とも美しい繊細なタッチで……。


アランドロン主演の映画

『太陽はひとりぼっち』の演奏が流れて来た。


子気味良い低音部のエレキの旋律と

伸びやかなトランペットのハーモニ-が絶妙な⋆✶


ドゥンドゥ♪ドゥドゥドゥドゥ♪~~~~🎶


あの甘いマスクとクールな表情から放たれる、コバルトブル-の眼差しの美しかった事*。⋆✶

まさに神がもたらした奇跡。


若かりし頃の絶世の美男子、世界一とも言われた美しいアランドロンの名場面がふっと頭をよぎる。


エレキインストの世界では、ベンチャーズの「太陽はひとりぼっち」が有名だが、ピアノ演奏もおもむきがあり、アンティーク調の店内レストランに流れる映画音楽の数々に酔いしれる緑。


食事も済み、やがて話が核心部分に触れて………


「僕はもうKエイジェンシーとは縁が切れているけど、九州にいる時は散々お世話になった会社だから、九州に公演で来た時は出来るだけ協力しているんだ。でもKエイジェンシーのタレントとしては1回ぐらいしか会っていないよね?」


「そうです。私はモデルとしてKエイジェンシーにスカウトされたのです。ですからKエイジェンシーでは音楽活動はあまりしていないのです。たまたま早い内に、大手芸能事務所ホープダッシュにスカウトされたので、ご一緒したのは他のルートで2~3回ぐらいです」


じゃ~何故?・・・永田のライブに参加していたのかって……?

それは緑の父親がやくざだった事も有り、興行関係のツテが有り、ほんの短い期間だが、中洲のナイトクラブで年を偽って歌っていたのだ。

【昔は興行の世界とヤクザ社会は、切っても切れない関係に有った】


その時には九州でも名前は結構売れていた有望株の緑は、永田のコンサートを盛り上げる為の前座として、Kエイジェンシーのロ-カルア—テイストの中に混じっていた。



だから永田は、九州時代の身元などは知らない。

だが、白崎緑になってからの身元は同じ事務所の先輩という事も有り、幾分だが、分かっている。


じゃ~?永田は何故、あのような意味深発言をしたのか?


「あなたはお金持ちのお嬢様と言われているけれども?・・・本当はあの時の水口静子じゃ~ないのかい?一度食事でもしながらあなたの真実の姿を……フフフ……嫌とは言わせないよ!」


あんな意味深告白をするものだから、てっきり私が東京に出る際に行った、絶対にやってはいけない一部始終を知られてしまったのではないかと思い、取るものも取り敢えず駆け付けたのだった。



実は永田のコンサートの常連だった、あのSS席のお嬢様が、1973年5月7日のめぐみちゃん殺害事件以来、ぷっつりとコンサートに現れなくなったのだ。


それであの当時一緒に舞台を盛り上げていた緑に、事情を聞こうと呼び出したのだ。


そんな事とは露知らず、ホットして胸を撫で下ろした緑だが、SS席のお嬢様の安否、それは緑とて同じ思い。


あれだけ私のファンだと公言して仲良しになったにも拘らず、あの事件以来会っていない。

あの美少女の家を事件以後心配になり、訪れた事が有ったのだが、あの家は既に売りに出されていた。


緑にしても、すっかり自分の正体を見破られてしまったのではないかと思い、慌てふためいて駆けつけたのだが、一安心!胸をなでおろす緑なのだ。


まさか、あの時の事件の詳細に気付いてしまったのではないかと思い、内心穏やかではなかった緑なのだ。

『緑は、あのめぐみちゃん殺害犯人を本当は知っている⁈』


緑は本当は悪人なのか……?

これから徐々に明らかになる真実。

やがて徐々にほころびが………。














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