第5話 強制入部だけど、ブレない。

弥呼らが通う"花咲高校"にはとある噂がある。

本校舎4階の北東...鬼門に位置する教室には幽霊が出ると。


弥呼を連れた時雨はとある教室の前で立ち止まる。

「豊宮さん! 着きましたわ!」

「那智さん...」

「ここって....!!」

弥呼は今にも扉に手を掛けようとしている時雨を見る。

「華道部の部室ですわ。」

「生徒の間では幽霊が出るなどと言われているようですが。」


(伏線回収来たァーー!)

(早すぎるでしょ!!!)

困惑する彼女は理由をつけて此処を離れようとする。

「わ、私幽霊とか怖いなーみたいな?」

「そんな非科学的な存在はいないですわ。」


時雨が扉を開ける。

真っ暗な教室の中心に何かいる。

「時雨遅かったな。」

弥呼の瞳に髪の長い女性が見えた瞬間

「で、出たァァァ!!!」

「ちょ、おい」

「那智さん逃げよ! お願いだから逃げよ!?」

「と、豊宮さん!?」

緊張と恐怖の糸が切れた瞬間、自分でも滑稽な走り方でその場から逃げる。

「わだじ、ひどりで逃げるぅぁぁ!」


「おい、私は幽霊じゃないぞ。」

女性は弥呼に追いつき、腕を掴む。

「ああああ!!!」


「え?」

「なぁんだ、びっくりしたぁ。」

軽めのゲンコツが頭に飛ぶ。

「イテっ」



「コホン。では、改めて」

「華道部へようこそ。豊宮 弥呼....だっけか?」

「まぁ、華道部とは名ばかりの部活だがな。」

弥呼は彼女の言葉に疑問符を浮かべる。

「へ?」

「私は、華道部改め、"文学部(笑)"の名誉顧問会長。」

「桂川 紗夜だ。」


顧問、桂川を見て弥呼は驚きを声にする。

「文学部!?」

「文学部ではない。(笑)だ。」

彼女は人差し指を胸の前で降っている。

「どっちでもいいですよ!!」

「いや、結構重要だと思うぞ?」

「笑がつくことで、緩く見えるだろ?」

「しかも、名誉なんたらって、盛りすぎ!!」


時雨が隣で微笑む。

「うふふ。豊宮さんったら明るくなられて。」

指摘された彼女は顔を赤らめ、反論する。

「あ、いや、これは....!!」

「この部活なら本当の豊宮さんを知れそうな気が致しますわ。」



弥呼と時雨のやり取りを見ていた桂川が言う。


「部長に気に入られたのなら、お前は今日から部活動の一員だな。」





自室にて、弥呼は一人思う。

陽キャのグループには入れなかったが、時雨しぐれさかえと仲良くなれた。

これはこれで有りなのではと。

幸せな高校生活。平凡で変わることのない高校生活。


彼女が求めていた答えが.......


「っと、それはそうと!!」

「こんな回想に浸ってる暇は私にはない!!」


「今日の那智さんとの触れ合いを文章に!!」

「くはぁ!! この展開いい!!」

「女の子同士ってこんなにもエロいのね!!」



「ん〜もぅ、最高!!」



.....答えがわかる日はまだまだ遠そうだ。

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突然ですが、貴女たちを私の百合小説に登場させたいっ!! 桜子 さくら @Someiyosino

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