五章  皇妃イルミーレ

28.公爵様の出征

 アルステイン様の提案で、公爵邸の小ホールでペグスタン皇国の人達を招いた夜会が開かれた。招いたのはペグスタン皇国の大使副大使と商人の方々。残念ながら大使副大使は来なかった。私と仲良くかつ外国の平民の商人と同席しても平気そうな帝国貴族も何人か招いた。


 ペグスタン皇国の方々は先の皇国大使館の夜会に来ていた方がほとんどだった。そのため、私の所に挨拶に来ると必ず「本当に聖典を読んだのですか?」と聞いてきた。何でそんなに気になるの?と思ったのだけど、詳しく聞けば聖典は皇国でも聖職者くらいしか持っていない貴重な物なのだそうだ。公爵邸にあるのは戦利品らしい。


 あら、じゃあ皇国にお返しした方が良いんじゃないかしら。私は侍女に頼んで聖典を持って来て貰い、皇国商人の中で一番ランクが高そうな方に見せて言った。古い羊皮紙で出来た分厚く大きな本で、開かないようにバンドで縛ってある。


「これは皇国との戦場でアルステイン様が手に入れた物で、屋敷で保管しておりました。皇国の方にお返しした方が良いでしょうか?」


 聖典を見た皇国商人。帝国の皇国商人組合の会長だというその男性は聖典を見てあからさまに肝を潰した顔をした。


「せ、聖典を私などが持つ訳には参りません。是非、夫人がそのままお持ち下さい!」


 そう?私は信者じゃ無いのに良いのかな?私が実際に聖典を手に持っているのを見て、皇国商人の人達の表情が何故か輝き出した。


「イリシオ公爵夫人。是非、聖典を読んでみて下さいませ」


 商人の夫人がねだる。別に良いけど。私は聖典をテーブルに置き、適当なページを開き、ちょっと読んであげた。拡大鏡が無いからぼんやりしか見えないが、文言は覚えているから別に問題無い。


「『大女神は衆生にあまねく慈愛を齎すが故に我々が推し量ってはならず、不幸不運を理由に大女神の偉大さを疑ってはならない。大女神は偉大にして全てである』」


 ほぉ・・・。周囲の人々が驚きの声を上げる。帝国貴族の令嬢が首を傾げ私に聞いた。


「それはどういう意味ですの?イルミーレ様」


「大女神様は誰にでもお慈悲を下さいますから、私達にとっての不運や不幸ももしかしたら誰かを助ける為に大女神様が為さった事かも知れない。だから自分の不運や不幸を理由に大女神様を疑ってはならない。という意味だと思いますわ」


 私が言うとその令嬢は納得顔になった。ところが、先ほどの皇国商人の夫人は感動で目を潤ませつついきなり私の足元に跪いた。な、何事?


「ありがとうございます!ありがとうございます!まさかこの帝国の地で聖典のご説法が受けられようとは!大女神に祈りと感謝を!」


 聞けば皇国式大女神信仰の聖職者は流石に帝都まで滅多に来てくれないらしい。皇国商人の中にはもう何年も帝都に居る人もいるから、そういう人は聖典についての説法に飢えていたのだそうだ。一応、私は言っておく。


「私は皇国式大女神信仰の信者ではございませんがよろしいのですか?」


「何をおっしゃいますか。あんなにスラスラ聖典を読まれ、あれほどしっかりとご説法出来る公爵夫人は信者で無く聖職者ではございませんか」


 なんか誤解があるな。というか私はまだ結婚してないよ?


「私は大女神様は信じておりますが、帝国人です。聖典は読みたくて読んだだけですわ?」


「大女神様をご信仰なさっているのなら問題無いではありませんか」


 いや、問題無くは無いだろうけど、ムキになって否定するのもおかしいのかな?他の皇国商人ももっと聖典を読んで欲しいとねだるので、何ヶ所が聖典を読み、即席の説法会みたいになってしまった。なんだかな?


 きりがないので、適当な所で聖典は片付けてもらった。まぁ、聖典のおかげで皇国商人の方とあっと言う間に打ち解けられたんだから、神に感謝だわね。


 商人達は私とアルステイン様へ大量の贈り物を持ってきていた。私はそれを直ぐには受け取らず、テーブルに並べてもらった。商人達は不思議そうな顔をする。布地、宝石、陶磁器、装飾品、香辛料、その他珍しい物がたくさんだ。うわ~。見たこと無い物ばかりだ。楽しい。


 私はウキウキしながら商人達に持って来た物を一つ一つ解説してもらった。当然だが私の周囲には何人もの帝国貴族の夫人や令嬢がいたので一緒に聞く事になる。彼女達は解説を聞きながらあ、それ欲しい、とか、羨ましい、というような顔をしている。私は解説している商人達に言った。


「あなた達のお気持ちは受け取りました。ですが、このような貴重な品、私にタダでくれたら勿体ないではありませんか。どうでしょう?今ここにいらっしゃる方々にこの品を販売しては?」


 何を言い出したのかと商人達が目を丸くする。私は笑って言った。


「私は元商人ですからね。あなた方がどれほど苦労してこれらの商品を手に入れたかが分かるのですよ。皆様、欲しいとお感じになった物があったら商人様に言って購入なさると良いですよ。カキリヤン伯爵令嬢、先程こちらの布地を興味深そうに見ていらっしゃいましたよね?」


 私は貴族婦人達にドンドン話を振り、商人に仲介していった。最初は戸惑っていた貴族婦人達だが、元々私が貴族商人の時に販売会でお買い上げ下さった珍しい物好きな方を中心にお招きしてあるので、直ぐに商品に夢中になり、次々と購入していった。私は忘れずにお互いを紹介しあい、以降もお付き合いした方が良いと勧めた。


 ただ、信用問題になるから貴族婦人が騙され無いようには気を配った。


「あ、レルージュ子爵令嬢。その宝石はあまり良くありませんね。買わない方がよろしいですわ。そうですわよね?」


 レルージュ子爵令嬢が手に持った琥珀っぽい代物は明らかに偽物だ。私は商人を笑顔のままジロッと睨む。商人は真っ青になり慌てて令嬢から偽宝石を取り上げた。


「も、申し訳ありません!手違いで・・・!」


「間違いは誰にでもあるもの。以降気を付けて下されば結構ですわ」


 見ると、何人もの商人が慌ててテーブルから幾つかの商品を取り下げている。まぁ、敵国の公爵に偽物をプレゼントして、もしも目利きが出来なきゃ笑ってやろうとでも思っていたのだろう。


 こうやって私のお友達の貴族婦人と商人を繋いでおけば、商人は商売繁盛だし貴族婦人は珍しい物が手に入る。ウインウインだ。皇国商人が仲介した私に感謝して、アルステイン様に対する敵対心を薄れさせてくれれば大成功ね。


 私はこの夜会以降も何回かお茶会などを開いて皇国商人の販売会を開催した。社交界に噂は広まり、高位貴族にも是非呼んでくれと訴えられる程の大成功イベントとなり、皇国商人もかなり本気で取り組んでくれてドンドン商品の質も上がって、帝国貴族からの皇国商人の評価も上がった。


 狙い通り、皇国商人は私に感謝してくれたらしく、皇国商人は感謝のしるしとしてアルステイン様と私への贈り物を持って公爵邸によくやって来るようになった。私は必ず皇国商人が来たらお茶に呼んで接待した。アルステイン様から皇国商人から情報を取るように頼まれていたからだ。皇国商人とは大分打ち解けたので、彼らは喜んで応じてくれる。ただ、私を目にするなり跪いて祈りを捧げ始めるのは止めて欲しいが。


 その日も私は皇国商人の夫人とお茶をしていた。持って来た繊細な細工のブレスレットについて話をし、お礼(になるのかは良く分からないが、みんなしてくれというので)に聖典の一節を暗唱したりして和やかに過ごしていた。


「皇国は今年の実りは良かったのでしょうか?」


 季節はそろそろ冬だった。私は何の気なしに尋ねたのだが、私の言葉に商人夫人の顔色が変わった。?何だろう。商人夫人はさんざん逡巡した挙げ句、声を潜めて言った。


「私達はイルミーレ様に大変お世話になっております。商売の仲介だけで無く、聖典のご説法までしていただいておりますし、大変感謝しております。ですから、イルミーレ様にだけ、お伝えしたき事がございます。私がお伝えしたと、他言しないと誓って頂けますでしょうか?」


 何か重要な秘密を明かしてくれるらしい。私は安心させるため、微笑んで言った。


「分かりました。大女神ジュバールに誓って秘密はお守りします。神に誓いを」


 商人夫人はぐっと目を閉じ、開けると言った。


「実は、皇国は今年凶作に見まわれました。皇国南西部の穀倉地帯が特に酷いのです」


 そうなんだ。アルステイン様の話では帝国は旧ワクラ王国含め数年振りの大豊作らしいのに。


「そのため、穀物の不足が深刻で、例年なら行われる北東部の遊牧民に対する食糧支援が出来ません。遊牧民は食糧支援が無ければ冬が越せません。・・・何を意味するかお分かりですね?」


 私は思わず息を呑んだ。


「遊牧民が冬を越す為に食糧を手に入れようとする・・・。のですか」


 つまり遊牧民が冬を越す為の食糧を手に入れる為に、帝国に略奪にやって来るという示唆だった。


「皇主様は許可しました。何しろ何十万という遊牧民達が飢え掛けております。相当大規模なものになると思われます。お気を付け下さいませ」


 彼女はそう言うと跪き、大女神への告解を始める。何しろ皇国の皇主に対する裏切りにも取られかねない告白だ。彼女が大女神の雷を恐れるのも当然である。私は立ち上がり、彼女の頭に右手を載せた。


「良く知らせてくれました。帝国と皇国が争い殺し合う事など、慈悲深き大女神がお望みになる筈がございません。あなたの誠実さとお優しさと信仰心は大女神が必ずお認め下さいます。私が皇国皇主に成り代わってあなたを許します。大女神ジュバールと七柱の大神のご加護をあなたに」


「感謝を。イルミーレ様、どうかよろしくお願いいたします」

 



 私が商人夫人から得た情報を聞いたアルステイン様は顔色を変えた。アルステイン様曰わく皇国の凶作はある程度掴んでいたが、遊牧民への食糧支援が止まり、皇主が略奪を許可した事まではまだ知らなかったらしい。


「イルミーレのおかげで備える事が出来る。ありがとう!」


 アルステイン様は喜んで下さった。良かったわ。私はもう一つアルステイン様に提案した。


「今年は帝国は豊作なのですよね?でしたら皇国の遊牧民に帝国から食糧支援が出来ないでしょうか?」


「他国の民にか?」


「ええ、放置しておけば帝国が困るのですもの。勿論、皇国との話し合いは必要かもしれませんが」


 アルステイン様は考え込まれていたが、やがて首を横に振った。


「それは出来ないな。遊牧民に支援すると、彼らはそれを服従の証の貢ぎ物と考える可能性がある」


 なんでも彼らは皇国からの支援をそう受け取っているらしく、支援が無くなると皇国内でも暴れまわる事があるそうだ。今回、それを防ぐために皇主は帝国内での略奪を勧め、支援する事にしたのではないかとの事だった。


「援助するにしても、一戦して打ち破り、服従させてからでないと駄目だ」


 結局戦は避けられないのか。私は思わず項垂れた。アルステイン様に出征して欲しくないんだけどな。私がしょげていると、アルステイン様は優しく私の頬を撫でて言った。


「大丈夫だ。イルミーレが信じてくれれば私は必ず勝つ」


「そんな事は心配致しておりませんよ。長期にわたってアルステイン様がいなかったら私が寂しいではありませんか」


 物凄く自己中心的な事を言っているのは分かっているが、アルステイン様と離れ離れだった時の事を思い出して凹んでしまう。アルステイン様もあの頃の寂しさを思い出したのか、ああ、と呟くと私をひしと抱き締めた。


「なるべく、なるべく早く帰ってくるようにするから」


「約束ですよ」


 アルステイン様は早速国境の警備の強化と、先行して遊牧民の動きに警戒する部隊3万を送ったらしい。そして10万人以上の規模の本隊を至急編成して、出来次第に北西部国境に派遣するとのことだった。


 ところが、これに宰相様が大反対しているらしい。アルステイン様が呆れたように言っていた。


「宰相曰く『ペグスタン皇国から抗議が届いている。無用な緊張を生むような軍事行動をすべきではない』というのだ。そんな抗議をまともに受け取る奴があるかと思うのだが・・・」


 宰相様はペグスタン皇国の大使が言う「皇国は軍事侵攻など企んではいない。むしろ帝国こそ軍を動かして皇国を脅かしている」という意見を鵜呑みにしているらしい。以前から宰相様は皇国の大使と共に帝国と皇国の和平に向けて動いているのだという。その大使というのは私をダシにアルステイン様を侮辱したあの大使だ。少しも信用出来なそうなアレだ。


 どう考えてもあの態度は帝国との和平を考え、融和を求めている態度では無いと思うのだが。皇国の商人から聞いた話でも、大使は自分が貴族である事を鼻に掛け、平気で賄賂を要求し、渋れば様々な方法で商売の邪魔をしてくるらしい。ろくでもない人物だというのが商人たちの一致した見解だ。そんな大使と結んで和平を唱えている宰相様は、アルステイン様が言う通り内政は兎も角外交には向いて無いと言わざるを得ない。


 アルステイン様は宰相様の反対を無視して軍勢の編成を進めている。軍務大臣で軍権を持つアルステイン様がそれを行うのには何の問題も無い。しかし宰相様はそれを独断専行だとかなりの勢いで抗議しているのだという。だが、以前なら宰相が言えば同調する者も多かったその意見に、現在では誰も賛同する者がいないらしい。実は現在、宰相様は帝国政府の中で孤立しているのだ。


 この数ヶ月でアルステイン様と私は宰相派と呼ばれていた彼の派閥を完全に崩壊させてしまった。皇帝陛下が出られないために宰相派が牛耳っていた夜会は今やアルステイン様と私が中心だ。最近は皇妃様がお茶会の頻度を減らしている事もあり、女性社交界も私が事実上のトップだった。政府閣僚も全てアルステイン様寄りになっているし、閣僚の婦人や令嬢はみんな私の良いお友達となっている。宰相様の声は貴族界に全く響かなくなっているのだ。


 アルステイン様から軍権を奪うべきという意見は一年前にはかなりの勢力があったようだが、今や宰相様が一人でわめいているような状況らしい。同時に、アルステイン様へ譲位すべきという意見が日に日に強くなりつつあり、それはそれでアルステイン様にとっては頭が痛い事ではあるらしいけど。


 ただ、皇国との大戦を控えているこの情勢で、帝国の内政を司る宰相と、軍事を司るアルステイン様がこうも対立していて良いのだろうか?普段は対立していても帝国の危機の時くらい宰相様も控えて下されば良いのに・・・。




 そして軍勢の編成が終わり、皇帝陛下の勅命も得て、アルステイン様の出征が決まった。決まってしまった。おおお、私はその日から嘆き悲しみ、食欲が減ってアルステイン様を困らせた。


「それ以上痩せたら大変ではないか。もっと食べなさい」


「・・・はい」


 私はもそもそとパンを口に入れた。アルステイン様は溜息を吐き、エルグリアに言う。


「イルミーレの事を頼むぞエルグリア。ちゃんと食べさせるように。あまり食べないようだったら私に昔したように、椅子に縛っても構わん」


「分かりました」


「分かったじゃありませんよエルグリア!酷いじゃありませんか!」


 私が思わず叫ぶとエルグリアは涼しい顔をして言った。


「旦那様のご許可が出ましたから容赦いたしませんよ。奥様。嫌ならちゃんと食べて下さい」


 ううう、酷い。私はアルステイン様を見る。苦笑しながらお茶を飲む優雅なお姿。このお姿がしばらく見られ無いなんて・・・。ワクラに帰ったあの時でも辛かったのに、アルステイン様と毎日会えるのが当然となってしまった今、果たしてアルステイン様がいない日常に耐えられるだろうか?一週間くらいならなんとか・・・?


「どのくらいのご不在になりそうですか?」


 アルステイン様は少し考えてから言った。


「前回の遠征と同じくらいだとしても二ヶ月か」


 私はぽとりとパンを取り落とした。


「二ヶ月・・・」


「ワクラと違って戦後処理が無いから半年は掛からない筈だ」


 む、無理だ。私はもう目が潤んできてしまう。


「わ、私も連れて行っては頂けませんか?」


「何をバカな・・・。わ、イルミーレ!」


 私がぽたぽた涙をこぼすのを見たアルステイン様が慌てて立ち上がる。エルグリアが心得たように即座にハンカチで涙をぬぐってくれる。


「なるべく早く帰ってくるから!それにイルミーレには帝都の事を頼みたいのだ」


「帝都ですか?」


 私はエルグリアに鼻をかませてもらいながら首を傾げた。


「あれほど宰相がいきり立っていると奴が何をしでかすかも分からない。皇国の大使も心配だ。夜会は無理としてもお茶会を開いて人心の安定と情報収集をして、何かあったら私の所に送ってくれ」


 私は頷いた。寂しいけれど。寂しくてさめざめ泣いていたいけれど、私はアルステイン様の婚約者。軍人の婚約者なのだ。アルステイン様の居ない帝都を守り、アルステイン様の事を後方からフォローするのが勤めだ。アルステイン様からのお願いに全力で応えてこその婚約者だろう。出来なければ女が廃るというもの。私は表情を引き締めて頷いた。


 数日後、アルステイン様は12万の軍勢を率いて帝都を進発して行った。帝都の城門まで見送りに行った私は、馬上の鎧姿も勇ましいアルステイン様を見上げながら出陣の祝福を行った。普通は神殿の神官が行う儀式らしいがアルステイン様が私にやって欲しいと頼んだのだ。しかもアルステイン様の希望に軍の誰も反対しなかったらしい。いいのかしら。


「勇ましき戦士たちの上に大女神ジュバールと七柱の大神のご加護がありますように。誰よりも強く、誰よりも速く、誰よりも勇敢で、誰よりも慈悲深くあれ。勝利の神ウェックベルデと勇者の神アルドベレスと友情の神クアンツプールが戦士たちの前を常に明るく照らしますように。我が愛しのアルステイン様の上に大女神のもたらした軍旗が常にはためき、その場所を示し続けます様に」


 私は略式でそう祈ると、手に持った花びらをアルステイン様の方に撒いた。馬上のアルステイン様にはとても届かなかったけど。


「アルステイン様と軍団の皆様に祝福を!」


 アルステイン様は優しい顔で私を見下ろしていたが。一つ頷くとぐっと顔を上げて、私の身体が震えるような大きな声で叫んだ。


「出陣する!」


 12万の大軍勢が「おう!」と応じ、アルステイン様の馬がガッと石畳を蹴った。見守っている帝都の群衆から大歓声が上がり、楽隊が勇ましい行進曲を演奏していた。アルステイン様は見送る私を振り返る事無く城門を出て行ってしまった。私は軍勢が全て城門を出て行くまで、寒さに鼻を赤くしながらずっと見送っていた。


 


 


 


 


 


 




 

 

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