閑話 アルステインの婚約者(上)  ブレン視点

 私の名前はブレン・ワイバー。年齢は20歳。平民だ。


 私とアルステインの出会いは12歳の時に遡る。私はペグスタン皇国との国境近くの村で生まれた。当然だがこの辺りは帝国と皇国の争いに巻き込まれることが多く、私の住んでいた村も私が8歳の時に皇国の奴等に焼かれてしまった。この時に父母は亡くなり、私は孤児として帝都の孤児院に引き取られた。


 孤児院には奨学制度があり、優秀な者は上級の学校に通う事が出来た。私は幸いそれに該当し、士官学校に入学を許された。それが12歳の時だ。


 平民が士官学校に入学する事は不可能では無かったが難しく、珍しい事だった。同級生はほとんどお貴族様たちのお坊ちゃん。私の髪は真っ黒で、ペグスタン皇国の連中を彷彿とさせたのだろう。お貴族様たちから私は「皇国の手先」と迫害された。どこの誰よりも皇国を憎んでいるのは家族を殺された私だというのに。しかし、お貴族様に逆らったら命が無い。私は耐えるしか無かった。


 そこに現れたのが当時は第二皇子だったアルステインだった。アルステインは私を迫害する貴族のお坊ちゃんたちを叱り、私を励ましてくれた。


 当時の私は経験上、他人の善意に懐疑的だった。焼け出された故郷から孤児院まで真っ直ぐにやってきたわけでは無いのだ。何度善意の顔をした悪意に騙されたか分からない。だからこの時もアルステインが何を考えているか警戒し、気安く話し掛けて来ても容易に心を開く気は無かった。


 しかしアルステインは太陽の様な奴だった。あいつは貴族も平民も差別せず平等に接した。それに眉を顰める貴族連中を逆に叱りもした。「これから我々は戦友になるのではないか。戦場で必要なのは身分ではない。実力だ」それはあいつに剣を教えた師匠の言葉だったそうだが、アルステインはそれを素直に信じて、行動に移したのだ。それが如何に凄い事かはこの後出会った糞みたいな貴族出身の上官を知るにつけ私は何度も思い知らされた。


 アルステインは誰よりも勉強し真剣に訓練し、汚れも厭わず、どんなにきつくても辛くても笑顔を絶やすことはけして無かった。誰よりも強く誰よりも勇敢で、誰よりも気高かった。同期生は全員アルステインに心酔し、身分を越えて一生あいつに付いて行くと誓った。私も例外ではない。私はあいつと気が合い、しかも孤児院育ちの私が敬語が苦手で、平民の様な乱暴なやり取りをアルステインが面白がってやりたがった事もあり、何だか気の置けない友人の様な関係になっていた。


 二年後に士官学校を卒業すると我々は戦地に向かった。私は第二皇子であるアルステインの侍従武官を命ぜられた。願ったり叶ったりだ。この頃には私は既に、アルステインに一生付いて行くのだと心に決めていたのだから。しかしながら、その誓いが実は並大抵な覚悟では成し得ない事なのだと知ったのは戦場に出始めてすぐだった。


 アルステインは勇敢だった。もしくはイカレていた。何しろ皇子であるから最後方に鎮座している事を望まれているのに、私を連れて最前線にこっそり向かうのである。最初の内は隠れて戦場を覗いていた。慎重に戦場を観察し、兵の行動や強さを確かめていたのだ。アルステインは馬鹿みたいに勇敢だが愚かではない。物凄く用意周到な男なのである。この時も自分が考えた作戦が実行可能かどうか確かめていたのだろう。


 そしてある日の薄暮、私と、どうやら目を付けていた兵士を5人ほど連れて最前線に出向いた。そして「しっかり付いて来いよ!」と私達に言ったかと思うと、馬腹を蹴っていきなり敵の陣地に突入を開始したのである。


 私は仰天して必死でアルステインを馬で追った。当然兵士たちも全力で追った。第二皇子を見捨てたら生きて帰っても縛り首確定だ。車裂きかもしれない。私だってこれが初陣なのに怖さを感じる暇は無かった。敵陣では皇国特有の、祈りの時間だった。全員が跪いて大女神に祈りを捧げている神聖な時間だ。私は故郷にいる時に皇国風の大女神信仰をしている者が同じ村にいたから知っている。そこへアルステインは馬で乗りこんだ。そして疾風のように駆けると真っ直ぐにその陣地の大将に撃ちかかり、首を刎ねてしまった。


 敵陣地は大混乱になり、私も滅茶苦茶に剣を振るった。アルステインは涼しい顔で私達に合図をすると風のように撤退した。あまりにも少人数でもあったし暗くなっていた事もあり、まともな追撃を受ける事は無かった。私は生きた心地がしなかったが、アルステインは普通の顔で上官に戦果の報告をしていた。その上官は目を回して倒れてしまったけれど。


 アルステインはいつもこの調子だった。入念に作戦を検討し慎重な下準備をして、狂っているかのような勇敢さで作戦を実行して勝利を掴む。


 小隊を指揮する立場になった時には軍団が危機的状況に陥りそうになっているのを察知すると昼夜兼行で移動し、敵の背後に回り込んで輜重部隊を襲い、糧食を焼き払って敵が撤退せざる得なくなるように仕向け、軍団全体の危機を救った。


 偵察隊を率いて敵地に潜入した時は、偵察だと言っているのに敵の油断に乗じて夜襲を掛け、混乱した敵を崖から突き落として半数を討ち取った。


 中隊を指揮した時は押されている本隊を見越して戦場を迂回して、敵の弓兵に向けて突入してそこを崩壊させて、本隊の逆転劇を演出した。


 大隊を率いて初めて出た戦いは負け戦で、味方は総崩れになった。当然皇子であるアルステインは真っ先に逃がされる対象だったというのにあいつは聞かず「私が殿を務めるので全軍を無事に退却させるように」と総大将の将軍を丸め込んで殿軍を預かると、逃げるふりして敵を湿地帯におびき寄せて動けなくさせて反撃し、大損害を与え、無事に殿軍の役割を全うしたばかりか負け戦の中で唯一の大戦果を挙げた。


 連隊を率いていた時は戦場から大きく外れた位置にあった砦の危機を察知し、夜間に強行軍で駆け付けて敵を後ろから奇襲して追い散らし、砦の危機を救った。この砦を落とされていたら全軍の帰路が塞がれて危ない所だったのだ。


 どれも事前の情報収集と自分の預かった部隊の能力の把握、そして呆れるほどの勇敢さが無ければ手に入れられなかった勝利である。そして、アルステインは18歳で師団を預かり、作戦全てを自分で決められるようになると俄然本領を発揮した。いわゆる「ワルデラ平原会戦」だ。


 ペグスタン皇国が3万の軍で侵攻してきたその戦いで、アルステインは自軍の3万の兵をあえて平地に展開した。ペグスタン皇国の軍隊は主に遊牧民で構成されていて軽騎兵が多く、平地での戦いを得意としている。対して帝国の軍隊は歩兵に重点が置かれている。そのため地形への対応性は帝国軍の方が勝るが、平地でペグスタン皇国とがっちり組み合う戦い方は禁忌とされていたのだ。


 我が軍が平地に展開したのを見た皇国軍は自信満々、堂々鶴翼の陣形を展開して我が軍に襲い掛かって来た。敵は中央に歩兵、左右に軽騎兵という配置。それに対して我が軍は中央に歩兵は同じだが、騎兵は歩兵の後ろに控えさせ、左右には弓兵や銃兵と言った遠距離攻撃優先の部隊を配置していた。


 序盤は互角だったが我が軍は機動力に劣る。徐々に左右が押され始めた。このままでは包囲されてしまう。敵もそう思ったのだろう、ぐっと包囲しようと左右に力点を入れて来た。


 ところがここでアルステインが号令を出す。中央の歩兵部隊が槍先を揃え一気に突入する。同時に左右で最新式の銃兵部隊が火を噴いて敵の騎兵を混乱させ包囲を許さない。我が軍自慢の歩兵部隊の突破力はペグスタン皇国の歩兵部隊とは比較にならないのだ。左右から包囲されなければ正面からの戦いで負けるわけが無い。歩兵が一気に敵を突き崩し、中央を突破する。その突破口を我が軍の騎兵がアルステインを先頭に駆け抜けた。


 あっという間に敵の半数が包囲される。大混乱に陥った敵は一時間と掛からずに全滅する。何が起こったのか分からず右往左往するもう半数も包囲して殲滅。


 我が軍は禁忌とされた平原での戦いでペグスタン皇国に圧勝したのである。敵の3万の兵の内2万は討ち取り残りは捕虜にするという大勝利だった。アルステインは自軍の強さを冷静に見極めており、平原で戦っても十分勝てると計算していたのである。そして平原に展開すれば自信を持つ敵が無警戒に襲い掛かってくるとも分かっていたのだ。平原で完全に打ち破った方が敵に大きな損害を与える事が出来る。実際、この3万の兵の損失をペグスタン皇国は中々埋める事が出来ず、この地域に皇国が侵攻してくる事は現在まで無くなったほどである。


 そしてアルステインはこれまで7回のペグスタン皇国の侵攻に立ち向かい、全て撃退した。常勝将軍、帝国の剣、銀色の英雄。帝国中がアルステインを褒め称え、様々な二つ名を与えた。アルステインが一番気に入っている異名は皇国の連中が付けた「帝国の銀色の悪魔」らしいが。


 私はアルステインの傍に常に付き従い、全ての戦いに参加した。当然私もアルステインと一緒に騎馬で戦場を駆け回り、その度にそれなりの戦果を挙げた。そのため、私も階級が上がり、現在では大佐だ。平民としては大出世で、これ以上に上がるには貴族になるしかない。というかそこまで出世したら当然功績により叙勲されて帝国騎士、もしくは男爵になっている。ちなみに帝国騎士と男爵の違いは騎士は一代だけの爵位で男爵は世襲が可能かの違いで上下ではない。叙勲される時に希望で選択出来るのだそうだ。


 私にも叙勲の話が当然あり、騎士と男爵を飛び越えて子爵になれると言われた。アルステインも私が貴族になり、出世して将軍になる事を望んだが私は断った。アルステインの副官の地位を他に譲りたくなかったからだ。将官になったら副官では居られない。


「副官でなく副将になってくれ」


 とアルステインは言ってくれたのだが、私はアルステインの直ぐ傍にいたかったのだ。というかこんな危なっかしい男を補助出来るのは私しかいないという自負があった。それに、皇子として常に周囲に傅かれているアルステインは私と平民の様な乱暴なやり取りをして気を抜く時間があった方が良いとも思ったのである。


 そうして私は、アルステインが公爵になり、軍務大臣になり、帝国軍の全権を預かる立場になってもアルステインの副官として傍であいつを支え続けていた。私が忠誠を誓う相手はアルステインだけだ。全てはアルステインのために。それが私の誇りであり存在意義だった。




 その話を最初にアルステインに最初に聞かせたのは確かに私だ。ワクラ王国から貴族商人を装うスパイが潜入してくるという報告。ワクラ王国なぞ取るに足りない国であるから、歴代の皇帝や軍の責任者たちは何の対策も打って来なかったのだが、アルステインは情報を重視する男だ。ワクラ王国にも情報収集のため諜報員を何人か入れていた。その諜報員が送って来た情報だった。


 アルステインは全然興味が無さそうだった。私が入国拒否も出来ると言っても良いから入国させてやれ、と言ったくらいだ。まぁ、男爵程度の貴族商人が潜り込める夜会は下位貴族の夜会で、大した情報は得られないだろう。私は一応、シュトラウス男爵一家に諜報員を二人ほど付けて、出る夜会には男爵の士官を一人送り込んで情報を得ることにしたが、その手配をしたらほとんどそのスパイの事は忘れてしまった。アルステインは日々忙しいのだ。


 ところが何がどうしたのかアルステインがそのスパイ一家が出た夜会に出たという。翌日聞いた私は驚いた。しかも随伴した従卒曰く何だかとてつもない価格の皿を一枚買ったという。なんだそれは。スパイの貴族商人に公爵自らお墨付きを与えてどうする。私が真意を問うと「別に、暇だったから覗いただけだ」という。それにしてはそれ以来、デスクに乗せているその件の皿、遠い海の向こうから伝わったという真っ白な皿を見ながら考え込むようにする姿を良く見るようになった。


 しばらくすると変な報告が届いた。そのスパイ一家の娘。男爵令嬢が下位貴族の夜会で大人気だという報告だった。なんだそれは。どうもその令嬢は天性の人たらしらしく、出会って話した人間を悉く篭絡してしまうらしい。問題なのは軍の士官の貴族令息や独身の貴族当主が何人も彼女にうつつを抜かしているという報告だった。私は困惑しつつアルステインにその事を報告した。アルステインは「あの令嬢か・・・」と心当たりがありそうな事を呟いて考え込んでしまった。私はこの時点で少し、嫌な予感がした。アルステインは何かあると自分で動きたがる性質からだ。


 案の定、アルステインはまたシュトラウス男爵一家の出た夜会に行ったのだった。翌日、アルステインは深く考え込んでいた。私が何事なのかと聞いても生返事をして答えない。おかしい。こんなアルステインは見たことが無い。そして数日後、アルステインはまたシュトラウス男爵一家の夜会に出た。これはもう本格的におかしい。アルステインは夜会が嫌いだし、しかもシュトラウス男爵一家が出ているのは下位貴族の夜会だ。アルステインが出たら何事かと思われるだろう。


 アルステインはそれからも続けてシュトラウス男爵一家の出る夜会に通い続けた。送り込んでいた士官の報告によると、アルステインは夜会のほとんどの時間をシュトラウス男爵令嬢と踊ったり話したりしているらしい。


「ミイラ取りがミイラになってどうする!」


 どう考えてもこれはそのシュトラウス男爵令嬢の魔性に引っ掛かったとしか思えない。アルステインは「そんなんじゃない」と言うのだが、客観的に見てそうとしか思えない。社交界は騒然としているらしい。無理もない。こうなったら私も夜会に乗り込んでアルステインとその令嬢の接触を妨害したいところだが、あいにく私は貴族では無いので夜会に入れない。く、こんなところで爵位が無い弊害が出るとは・・・。


 いわんこっちゃない。その内アルステインは本気になってしまったようだった。執務室での態度まで浮ついたものとなり、執務が終わって無くても風呂に入って略礼服に着替え、夜会へと足取りも軽く出掛けるようになった。口を開けば「イルミーレが、イルミーレが」としか言わない。私は主君のあまりの変わりように呆然となった。私は何度もあれはスパイ一家なのであり、情報収集のために人付き合いしているだけで、アルステインも情報収集のために騙されているのだと言ったのだが、アルステインは聞かない。「イルミーレと話すためなら情報流出なんてどうでもいい」とまで言い切る始末だ。


 これ以上放置してはおけず、私は従卒に扮してアルステインに従って夜会へと潜り込むことにした。従卒では理由が無ければ夜会の広間にまでは入れないが、件の令嬢の顔位は見られるだろう。そして伯爵邸の夜会。車寄せで待機していた私は初めて馬車から降りるシュトラウス男爵令嬢を目にした。


 ずば抜けて背が高い令嬢だった。私と同じくらいだから男性平均よりやや大きい。貴族にしては痩せており、しかもシンプルで色褪せたドレスを着ているものだからスタイルは良く見えない。緋色としか表現出来ない鮮やかな髪色がドレスとアンバランスだ。しかし彼女がちらっとこちらを見た瞬間、私の背筋に危険を伝える信号が走った。アイスブルーの瞳。微笑を讃えて細められたその瞳は能天気な貴族令嬢のものではない。何か得体の知れない輝きを放っていた。私を見ながら見ていないような視線。なんだあれは。理解出来ない。


 そのまま男爵令嬢は会場に入って行ってしまう。私は何に自分の警戒警報が引っ掛かったのか分からず考え込んでしまった。これも既にして彼女の魔性なのではあるまいか。そんな気さえする。


 夜会が終わり、アルステインがシュトラウス男爵令嬢をエスコートして会場から出てきた。アルステインの表情は見たことが無いほど嬉しそうで、思わず背後から引っぱたきたくなるくらいだった。シュトラウス男爵令嬢の表情も先ほどより華やかで、これはどう見てもお互いに愛し合っているようにしか見えなかった。しかし、この女はスパイである。何を企んでいるか知れたものではない。


 アルステインはシュトラウス男爵令嬢を私の所に連れてくると、彼女に私を紹介した。


「彼は今日、従卒として来てくれているが、実は私の副官で腹心の部下で親友のブレン・ワイバーだ。ワイバー、こちらがシュトラウス男爵令嬢のイルミーレだ」


 何という詳細な自己紹介をしてくれるのか!私が何のために従卒に扮して来たと思っているのか。こいつはスパイなんだぞ!


 しかしシュトラウス男爵令嬢は気にした様子も無く、優雅にスカートを広げて目を伏せた。淑女の礼と言う奴だ。私はその美しさに気圧されてしまった。


「シュトラウス男爵令嬢イルミーレ・ナスターシャと申します。お話は少し、公爵様から伺っておりますわ。初陣以来の戦友ですとか」


 この馬鹿野郎め。そんな事まで話したのか?俺はもう呆れ果てたが、絶対の主君を見捨てる気は無い。私はキッと男爵令嬢を睨みつけた。


「フレブラント王国から遥々ようこそ。海を越えてくるのは大変だったでしょう」


 こいつらはワクラ王国のスパイなのだから当然海など越えては来ていない。ワクラ王国の王都は内陸だから海の事など知らないだろう。どうごまかすかお手並み拝見だ。しかし男爵令嬢は何という事も無く言った。


「今の季節は海が凪いでいますからそれ程揺れずに良かったですわ。でも、帰る頃には荒れていますでしょうし風も逆なのです。無事に帰りつけるかどうか」


 そう言って憂鬱そうに溜息を吐く様は本当に海の様子を知っているようにしか見えない。うぐ、流石にスパイだ。その辺りまでしっかり調べて来たという事なのだろうか。


「ならば再び海が凪ぐ季節までいれば良いではないか。イルミーレ」


「一年もいたら商品が尽きてしまいますわ。公爵様」


 このバカップルめ!人目を憚らずにイチャイチャする二人に頭を抱えそうになる。この場で「こいつはワクラ王国のスパイだ!」と叫んでやろうか?そうした方が帝国の、いや、アルステインのためには良いかも知れない。アルステインは怒るだろうが、何もかも私が悪者になってでもアルステインを救えれば安い物ではないか。私が半ば本気でそう思ったその時だった。シュトラウス男爵令嬢がするっと言葉を私に送り込んだのだった。


「ワイバー様は忠臣でいらっしゃいますね」


 私はギョッとした。考えを読まれたのかと思ったのだ。思わず男爵令嬢を見る。男爵令嬢はあのアイスブルーの得体の知れない光を放つ瞳を細めて私を見つめていた。


「これからも公爵様をお守りくださいませね」


 これが他の相手に言われたなら「貴様に言われるまでもない!」と怒るところだ。しかし、この時私はなぜかそうすることが出来ず、ただ頷いたのだった。


 


 

 

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