第2話 アルエ

ふと目が覚めると結奈は森の中で倒れていた。ここがどこなのかを考える前に、自分はちゃんと死にきれたのかが気になって仕方なかった。

リンリンと虫が鳴く声が聞こえ、森独特の草木の匂いが漂っている。結奈は立ち上がり何か人や建物がないか歩き続けていた。30分ほどして前方からバイクの音のようなものが聞こえてきた。結奈は手を振り自分の存在を示した、するとそれはバイクに見えるがゴムのようなものでできた不思議な乗り物だった。乗っていた人物がヘルメットを外した。

「カリエナの森に人がいるなんて、道にでも迷ったのかい?」

結奈自身何故ここにいるのかも分かっておらず、少し黙っていると中性的な人は名乗った。

「僕はアルエ、この先の村の近くでアルエモータースっていうリンクルの整備をしてるんだ、良かったらうちに寄っていかないかい?」


言われるがままにアルエのリンクルというバイクのようなものに乗せてもらいアルエ宅に到着した、そこは小さな2部屋だけの家で、アルエは一人暮らしなのかな、なんて想像したりしているとアルエから謎の果実を使ったジュースを出された。味はとても美味しかった


「ところでさっきの話だけど、君ってもしかして異国の逃亡者?」


結奈は信じてもらえるか分からないけど、と前置きをして話した。


「死んだんです。自殺、首にロープをかけて飛び降りた。そしたら気がつくとあの森の中にいたんです」


アルエは少し考えるとにっこり笑いそりゃ神様が第2の人生を与えてくれたのかもね!と言った。第2の人生か、どうせ同じことを繰り返してしんでのくりかえしになるのだろうか。それならいっそ無になりたい。そう思った。


「そういや名前聞いてなかったね、なんて呼べばいい?」


アルエが言った。


「結奈です、早瀬結奈。」


「そうかそうか、じゃっ、結奈って呼ばせてもらうよ!ところで結奈、唐突なんだけど僕の働くアルエモータースで働いてみない?」


本当に唐突だ、クビになってから働くことを恐れていたけど、こんなよく分からない世界でなら働いていけるんじゃないかと思った。


「うん、迷惑じゃないなら、私発達障害だから……」


アルエは首を傾げていた、発達障害という言葉はこの世界にはないのだろうか?


「発達障害っていうのは生まれた時からコミュニケーションが苦手だったり同じミスを何度も繰り返す治らない病気みたいなものだよ」


アルエはまたにっこり笑ってこういった、そんなこと人には得意不得意あるんだから気にしなくていいんじゃない?と。


というわけで明日からアルエモータースで働くことになり、これからはアルエ宅に住まわせてもらうことになった。

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発達障害者が異世界に?! @u_tan7792

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