「自己無意識下ノ想像」

山崎 藤吾

「自己無意識下ノ想像」

  ある日の夜

 私は遅い時間に残業を終え

 ひどく疲れながら

 電車に揺られ家路についた。

 それから帰り道によったコンビニで

 買った割引の弁当とお茶を食べ

 軽くシャワーを浴び汗を流すと

 パジャマとは言えないシャツと半ズボンに

 着替え倒れ込むように

 ベットに寝そべる。


 すると目が覚め

 底には見たこともない景色が……でも、

 何処か懐かしい静けさの奔る高原が

 広がっていた……。

 私は呆然と立ち尽くし周りを見渡す

 だがそこにはひと一人おらず

 ただ薄暗い空と少しの風そして

 穏やかだが何処か不気味な景色だけが

 淡々と広がっていた…。


 私は少しだけその場所を

 歩いて見ることにした。

 だけれど

 どうにも進んでいる気がしない

 足は確かに動かしているはずなのに

 なぜか進んでいる実感がわかなかった。

 きっとこの高原があまりにも広すぎるから

 進んでいる実感が沸かないんだろうと

 そう解釈することで少しだけ

 落ち着きを保った。

 そんな時…私の後ろから草を踏んだような

 軽くクシャッとした音が聞こえてくる。

 私は恐る恐る後ろを振り返る

 すると底には、見たこともないくらい

 綺麗で美しい20歳前半くらいの

 女性が立っていた。

 私は思わず見とれてしまい

 その女性を暫く見つめ立ち尽くした。

 すると突然彼女がほんの少しだけ

 私に向かって微笑んできた……。


 午前5時、時計がそう記している。

 朝だ、私はその瞬間今さっきまで

 見つめていた綺麗な女性が夢だと

 気づいた。

 私はその事実に

 少しだけ悲しいくなるが

 現実と夢を切り替え

 少しだけ早起きをしたから

 紅茶でも入れさっきほどの女性の顔を

 思い浮かべ一人しばらく浸るってから

 気持ちを切り替えるように

 スーツに袖を通すと

 いつも通りの時間に出社した。 



 夜、午後9時を回る頃私は

 仕事を終わらせ足早に帰宅した。

 さきほど帰りコンビニで買った

 栄養食を半分だけ食べ終わると

 シャワーを軽く浴びて

 いつものパジャマに着替える

 そして電気を消すと早々と眠りについた。


 パッと

 目を開くと底には昨日見た光景と同じ

 景色が広がっていた。

 私はすぐに周りを見渡す

 だが底には女性はおらず

 ショックから私は地面に膝をつき

 落ち込んだ。

 すると突然頭に温かい

 感触が触れるのを感じた。

 私はゆっくり上を見上げ振り向いく

 そしたら昨日見た女性の姿がいた。

 この世のものとは思えない美しさ

 透き通るシルクのような髪が

 優しく揺らめいているのが見える。

 私はその瞬間何を思ったのかその

 女性に抱きついてしまった。

 けれど彼女は拒絶なんてせずに

 私を抱き返しくれたのだ。


 午前7時、私の目が自然と冷めた。

 一体あれからどれくらい抱き合っていたの

 だろうかと、それがわからないくらい

 長い時間抱き合っていた気がした。

 なんだか苦しい気持ちが

 洗い流されるような

 そんな気持ちのいい気分。

 ベットから起き上がり

 いつもと同じルーティンでまた出社。


 それからと言うもの私の生活は一変した。

 仕事をなるべく早く終わらせると

 誰もいない自宅に帰りそそくさと

 食事を済ませ急いでシャワーを浴び

 そして寝床につくという

 日々になっていった。

 まるで寝る事に依存しているかの

 ように思えるかもしれなかい

 けれど、コレは

 寝る事に依存しているのでは無く

 きっと彼女自身にとても強く依存して

 いるんだろうと自分自身でそう思う事も

 あったがもう、そんなことはこの際

 どうでも良くなった……。

 彼女に会えるだけ……それだけでなんだか

 私はとても救われている気がしていた。

 彼女こそが私の生きがい。

 例えそれが夢の中だけの

 存在だったとしても

 私はそれが心地よかったんだ……。


 それからある日事件が起きた。

 私はいつもの様に眠り

 彼女に会いに行くとそこには

 みるも無惨な姿で

 右腕と左足が切断された女性が笑顔で

 立っていた。

 私は突然の事で動揺して

 彼女に駆け寄り何があったのかと聞いた。

 すると彼女は私に笑顔で言った……。

 「自分で、やったの!」

 私はその一言を聞いて思わず耳を疑う

 一体なぜだ、何故……

 どうしてそんなことを

 する必要が……?

 私は訳がわからず混乱した。

 そして頭を抱えながらもがくと

 混乱した私はなぜか

 彼女を押し倒し

 思いっきり強く首を締めた……。

 ギュッギュと肉が

 擦れるような音が聞こえるくらい

 強く強くそして強く、締め続けた……。

 そして彼女はこんな状況にも関わらず

 今までに見せたことの無い綺麗な

 笑顔で微笑み返してくる。

 その瞬間私の中で何か

 崩れ去る音がした……。

 その瞬間に私はなんの

 躊躇もなくなってしまい、

 彼女首をへし折り、殺してしまった……。


 私はその後死んだ彼女の首から

 ゆっくりと手を話し

 彼女のすぐ横に横たわった……。

 疲れたのか何なのか体中の力が

 抜ける様に感じ、私はただ呆然と

 薄暗い空をじっと眺めた……。

 そして暫くしてから横を見ると

 そこにはやはり

 笑顔で微笑んだままの美しい

 彼女の亡骸が……

 私はもう一度空を見上げてあと

 こう呟く………。

 「なんて、美しいんだ……」

 私はその言葉を皮切りに

 ゆっくり目を閉じ眠りについた。

 それから私は二度と

 目覚めることもなく

 二度と夢を見る事もなかった……。


   ─終わり─

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「自己無意識下ノ想像」 山崎 藤吾 @Marble2002

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ