第4話 小さな火花


私は、隼人達三人がテーブルに着くと

「隼人、どうしたの。急に二人増えて」


「鈴木さん、こんにちわ。私と柏木さん、同席して良いかな。食事だけでも」


断る良い理由が咄嗟に思いつかず

「いいですよ。隼人いいよね」

「あっ、立花君には、さっきOK貰っていますから」


私の質問に如月さんが返して来た。隼人を見ると何とも言えない顔をしている。

「隼人、じゃあ私、買って来る」

「あっ、うん」



 一体、なんなのよ。今日は隼人と二人で買い物(デート)しているのに。なんで如月さんが来るのよ。


 カウンタで注文した品が出て来るのを待ちながら隼人を見ていると、何やら楽しそうな顔して話をしている。

 如月さんに話しかけられる隼人は、恥ずかしそうな顔をしながらにやにやしている。

もう、気分台無し。さっきまで良かったのに。


「お待たせ」


三人の会話を気に掛けない様にしながらテーブルに着くと

「隼人、食べよ。スパ冷めると美味しくないよ」

「あっ、うん」


食べ始めようとした矢先、いきなり柏木さんが

「立花君。鈴木さんとは付き合っているの」

「美緒、いきなり何聞くの」

「星世、大切な事でしょ」



 えっ、大切な事って、どういう意味。柏木さんと如月さんの顔を交互に見ながら、二人の言葉についていけない僕が手を止めていると


「立花君、食べましょ。今の美緒の言葉気にしないでね」

「あ、ああ」


 ちらりと横目で穂香を見ると完全に目が怒っている。どうしたの。

四人沈黙のままに半分位食べたところで穂香が、


「如月さんと柏木さんは、どうしてここに」

「ちょっと、買い物に。本当は、立花君誘ったんだけど用事が有るからって言われて。美緒と一緒に来たの」


「えっ、隼人を誘った」


えっ、如月さん。それここで言うの。


「でも、鈴木さんと一緒だったんだ。二人はお付き合いしているんですか」

「うわっ、星世直球」

「い、いや、隼人とは、仲のいい友達よ」

「そうなんだ。じゃあ、立花君。今度は私の買い物も一緒にいいでしょ」

「わっわっわ。星世。スゴ」

柏木さんが目を丸くして如月さんを見ている。



 如月さんと穂香、それに柏木さんが俺の顔に穴が開くのではと思うぐらい見ている。


 俺は、こんな状況知らないぞ。そもそも女子に免疫無いんだからな。

フォークも動かせず下を向く俺。頼む、誰か話してくれ。


……。誰も話さない。


うーっ、どうすれば。


穂香が口を開いた。

「隼人。いいんじゃない。如月さんの買い物付き合ってあげなよ」


「えっ、穂香いいの」

「なんで、私を気にするの」


「じゃあ、如月さん。買い物一緒に行きます」

「やったー。じゃあ、立花君連絡先教えて」


一瞬、穂香の顔を見ると勝手にしたらという目で俺を見ている。ほとんど氷の瞳。


「うっ、いいよ」

「立花君、私にも教えて」

「あ、ああ」

スマホを取り出して連絡先を如月さん、柏木さんと交換した。


「美緒、早く食べて、買い物行こう。二人のお邪魔してはいけないし」

「そ、そうね」


 なんなんだ。二人が去った後、ゆっくりとそして静かに穂香を見ると何やら全身から炎が見える様な。お前〇〇〇星人か。フル!


そして鋭く僕を見ると

「隼人、私達も行くわよ」


 皿に残っていたスパが俺を恨めしそう見ながら、『食べてくれないの』と言っている様な気がして…本当は腹が足りていない。


「穂香、待って、これ食べ終わってから」

「……」

「急いで食べる」


結局、穂香はぷんぷんしながら

「隼人、今日はもう帰る」

「えっ、もういいの」

「知らない。隼人が悪い」

と言って、スタスタとフードコートの出口に向かって行ってしまった。



 はーぁ、私何やっているんだろ。

自分の部屋のベッドで枕に顔を埋めながら、感情を抑えきれない。

 なんで、如月さんがあそこにいるのよ。なんで私如月さんと隼人の買い物許したのよ。でも断らせる理由無いし。


あーっ、もうもう。私のばかばかばか。


でも、隼人に告白なーんてそこまでは。でも引っ掛かる。どうしよう。



 私と隼人の出会いは、……。

隼人は中学一年の時、同じクラスだった。小学校の時の友達も何人か同じクラスでいたが、さして話す相手でもなかった私は、一人ぼーっとしていた。


その時、

「あの、俺立花隼人って言うんだ。宜しくな」


 顔を見上げると、これと言って特徴もない男の子が立っていた。私は興味なくそっぽ向きながら

「私、鈴木穂香」

「よ、宜しくな」

何こいつと思っていると、私の隣の席に座った。


 数日は、相手もしないで過ごしていた。

その日は、曇り空だったけど、雨は降らないと有名なテレビ番組の天気予報士が言っていたので、持ってこなかったが、見事に五時限が終わった頃、


ザーーザーーザーー・・・・。


どれだけ降るんだよと思いながら下駄箱の出口で空を見上げていると


「鈴木、傘持っていないのか」

「あっ、うん」

「今日、テレビで雨降ると言っていたぞ」

 私が見たテレビでは言っていなかったと心の中で悔やみながら


「ちょっと、忘れちゃって」

「そうか、じゃあこれ使いなよ」

と言って隼人が傘を差しだした。


「自分のは?」

「あっ、俺、俺のは教室にもう一本予備が有るから。じゃあな。気を付けて帰れよ」

 そう言って、教室の方に向かって行った。一年生の教室は三階にある。

待っていようと思ったけど、いくら待っても来ないので、何か用事が出来たのかなと思い、先帰る事にした。


 男の子の傘は女子のそれより少し大きいというかかなり大きい。幸い風があまりなかったので、傘を持つ手も苦にならず、雨も掛からず信号の側まで来て横断歩道を渡っていると


パシャパシャパシャ、パシャパシャパシャ。


 えっ、と思って振り向くと上着を内側にして丸め小脇に抱えて上半身ワイシャツだけで走って行く男の子の姿が有った。


 立花君……。


 声を掛けようと思ったが、勢いが有ってあっという間に信号を過ぎてしまった。彼はこの信号を真直ぐ行くんだ。

 この頃からだった。隼人が何となく私の心の隅に引っかかるようになったのは。

そしてこの後から私は隼人と少しずつ話す様になった。



―――――


穂香ちゃん、隼人の事は、友達以上恋人未満ってとこですか。でもそれって。


次回をお楽しみに。


面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る