第6話フローディア




多々良支部に来てからPCの前で連泊申請をしながら1つ1つ確認。

初めての申請の為、間違いがあってはダメだ。

小さな説明文を読んでようやく5泊6日の申請を終了させる。

機械に冒険者カードを読ませると、重い手提げバッグを掴み上げる。

すると山田のおばさんが声を掛けて来た。


「誠、ソロなんだから深い階層へ行くんじゃないよー」


「分かっているよ」


「分かっているならいいが、死に急ぐんじゃないよ。ダンジョンでは慎重が大事だからね」


俺は分かったと手を上げながら、支部を出て目の前のダンジョンへ行く。



ダンジョンに潜ると、手提げバッグを地面へとドンとおろす。


このバッグの中は、2リットルの水7本と携帯食とエアーマットが入っている。

その3点が5泊6日を過ごす必需品。

1日1本が2リットルの水を消費する目安。予備の1本は念の為に持って来ている。

人間は水さえ有れば一週間、生きられると言われている。

本当かどうか分からないが、水を自由に飲めないのは何となく辛い。


ネットでも、最低限の品として持って行く物だと書かれていた。

それ以外持って行きたい物は、沢山あるが体験してみれば分かる事で今はこれでいいだろう。


それでも、初めてのダンジョンでの泊まりになる為、緊張と不安がヒシヒシと感じてしまう。


俺は黒魔法の【黒空間】をバッグに向かってイメージする。

その途端にバッグが捻じれて、黒い空間に飲み込まれてしまう。

アイテムボックスに似た機能が備わっていて、今は1メートル四方の空間を自由に出し入れ出来る。

重い荷物を持っての戦いは、一歩間違えれば死に繋がる。

なのでそんな問題から解放されて楽が出来る魔法があって助かる。

熟練度が上がれば、もっと大きな空間になるらしい。



俺ら冒険者は、地上では魔法・攻撃・防御スキルが使用できない。

しかし支援スキルは、何故か使える。

そしてレベルアップした身体は、地上でも反映される。

その為に冒険者だけのスポーツが、定期的に開催されテレビ放映されている。

一般人のスポーツ以上に、迫力ある場面が発生する為に視聴率も高い。


それとは別に冒険者を諦めた人が犯罪に走るケースも多い。

それに対処するのがギルド警察。

その中の捜索班は、支援スキルに特化していてスキルを使って犯罪者を見つけ出す。

その犯罪者を捕まえるのが、強行班で身体能力が高いことで有名。



カードバインダーからカードを3枚を取り出した。

空中に放り投げてイメージすると、3匹のスライムが現れて地面に着地。

ピーは元気よく飛び跳ねて、元気アピールをしている。


そんなピーとは反対にライムは、同じ所をジーとしている。

スラはゆっくりとその辺を移動して何かを探している。


「ピー・スラ・ライム行くぞ」


俺の命令を聞き、動き出すスライム達。


1階層でスライムカードが10枚になり、新たなスライムが誕生していた。

改めてカードを取り出して、念じたあとに放り投げる。

ひらひらと落ちて足元にスライムが出現。

黄色いスライムが俺の足元でうろついている。


「お前は体が黄色いから、きいろのきを取ってキーだ」


名はキーと安直な名だが、難しい名だと間違いやすいからと納得するしかない。


2階層・3階層で順調に魔物を倒して、目の前の階段を下りて行く。


不思議な事に、スライム以外の魔物カードはドロップしない。

同種の魔物の数を沢山倒さないと、カード化しないのか?

もしかすると10万程の数を倒す必要があるのか?

色々と疑問しか出なくて途方にくれる始末だ。


まあ、それはいいとして、4階層の魔物がドロップする木の実は、カード化して置きたい。

木の実を食べると、わずかだがHPが1ポイント増加するので、100万円でギルドが買取ってくれる。


そんな考え中に、大きな花を咲かせて、幾つもの根を使って移動する木を発見。

コイツの名はフローディア。根を人体に突き刺して栄養を吸取る恐い魔物。

花は中心部が黄色くまわりは赤い。

花からは人を惑わす香りが漂っているハズ。

防毒マスクを装着しているので、香りはしないが少しだけ体がだるく感じる。


ピーが火球を発射。見事に命中。

フローディアを爆発させて、残った根や葉を燃やしていた。

後から来ていたもう1体のフローディアにも、燃え広がり消える事も無く燃やし尽くした。


ピーは初期の段階では分からなかったが、火系のスライムだ。

今ではピンクの体が紅い体になって、攻撃のピンクの球が燃えた状態の火球に変化。

今のピーはレベル8までアップして、移動も早くなり攻撃威力が上がってきている。

この中で1番強いかも知れない。


地面には魔石2個と木の実カード1枚が残っていた。

ピーがそれを回収して、俺の所まで来るとポロリと吐き出した。

ピーの体をなでながら、


「えらいぞ、ピー」


すると喜んで跳ねている。そんなピーを見ていて何となく癒される。


すると後の方から地面をする音が、微かに聞こえ複数だと判断。

魔物探知の認識範囲に、4体のフローディアが進入。


「お前ら!フローディアをやっつけろ」


スラは天井を這って移動。

残りのスライムは飛び跳ねて移動。


俺が着いた時には、戦いは終わった後だ。

地面にあった木の実カードを拾い上げて、カードホルダーへ収納。

カード化の率が高そうだ。これなら売っても良いかもしれない。

いや!違う。木の実カードを10枚集めて、ランクアップさせた方が絶対にいいハズ。

きっと効果が上がったカードに変化するハズだ。



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