第13話

 嫌な予感は止まらない。

 けどだからといって今僕が何かできるわけでもない。

 異形の化け物はもうすでにいなくなっているし、ご遺体も元通りになっている。

 残されているのは魔石の欠片。

 どうしようもない。

「『燃えろ』」

 僕は念の為襲ってきたご遺体を全て火葬する。

 骨も残さない。

 遺族の方に何も言わずに勝手に行ってしまうのは申し訳ないのだが、仕方ない。

 異世界のゾンビだと完全になくなるまで動き続けるのだ。 

 現実世界のゾンビだと違うのかもしれないが、これで動き出したりなんかしたら目も当てられない。

 もしかしたら二度目に復活したらめちゃくちゃ強くなる可能性すらあるのだから。僕も知らない未知の化け物。警戒するに越したことはないだろう。

 ……というか一階の方のご遺体は平気なのだろうか?

 うーん。わからない。

 一応自衛隊の人たちがここに来る時も僕がついていくとしよう……いやー、でもなぁ。僕の不幸体質がなぁ。

 あ!そうだ!

 ご遺体全部運ぶか。

 空間操作による転移は自分以外の生物と一緒に転移することができないのだが、生物以外なら可能なのだ。

 つまり、ご遺体と一緒に転移もできるというわけだ!僕は早速空間操作による転移を発動させた。

 この時、僕は知らなかった。

 まさかこの行動があんなことになるなんて……。

 いやまぁ普通に考えればわかるだろってことなんだが……。

 そもそも突然大量のご遺体が出現したら大パニックよな。

 

 僕は何も考えずに駐車場以外の大型ショッピングモールのご遺体をかき集めて、転移を発動させた。

 転移先は避難所で人々が集まっている体育館。

 これがグラウンドとかにしておけばよかったものを、ご遺体が土で汚れてしまうのはだめだよね、とそこにだけに気を使えてしまったせいで!

 結果としては現れたご遺体は避難所の全てを破壊した。

 ダンボールを物を人をありとあらゆるすべてをご遺体は押しのけて進撃した。

 進撃してしまった。

 当然巻き起こされるは混沌。

 突然の出来事にみんなが慌てふためいた。

 そして行方不明になっていた近しいもののご遺体を前に号泣するものも現れた。

 まさに混沌。

 これぞ混沌!

「やっば……」

 僕は小さく呟く。

 完全にやらかした。

 あれ?僕またなにかやっちゃいました?

 なんてこと冗談で言えない。

 完全にやっちゃいました。

 どうしよ。

 僕は悩んだ。

 悩みに悩んだ。

 そして、なかったことにすることを決めた。

 臭いものには蓋をする。

 それが大人の生き方だよね。

 僕は再度ご遺体とともに大型ショッピングモールに転移した。

 ふぅー。

 いい仕事したわー。

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