第5話

「……ん?」

「何、この音」

 僕たちが避難所を目指して歩いていると音が聞こえてくる。

 バタバタと少しうるさい音、これは……。

「ヘリ」

 僕とお嬢さんが上を見上げるとそこには迷彩柄のヘリコプター。

「自衛隊!それに、あの方向!」

「ん?あの方向?」

「そう!あの方向にあるのは大型ショッピングモール。そこにはとんでもない化け物がいるの!」

「とんでもない化け物?」

 僕は大型ショッピングモールがあるほうを眺める。

 ぞわり。

 僕の背中に嫌なものが走る。よくないものがいる。

 そう直感が囁いた。

「行ってみよう」

「え!?べ、別に自衛隊に任せておけば……」

「いや、無理だな。おそらく自衛隊じゃ倒せない。」

「え!……そうなの」

「うん」

 魔力を保有した相手に対して魔力がない攻撃はあまり効果がない。

 僕ならソビエト連邦が開発した人類史上最大の水素爆弾であるツァーリボンバの直撃を受けても無傷で生還できる。

 ちなみにだが、ツァーリ・ボンバの威力は50メガトンといわれ、広島型原爆の3300倍。1962年に北極海で行われた実験では、高さ60km、幅30~40kmにも及ぶキノコ雲が発生し、衝撃波は地球を3周、1000km離れた場所からもその様子が見えたらしい。

 ……人間ってすごいな。

 こんな威力の爆発起こせないぞ。

 まぁ魔力がないから意味ないけど。

「少し失礼」

「え?」

 僕はお嬢さんをお姫様抱っこする。

「ほいさ」

 僕はその場で跳躍。

 廃墟となったビルの屋上に乗る。

「舌噛まないようにね」

 僕は自衛隊のヘリを追いかけた。

 だが、僕が追いつくよりも先に自衛隊のヘリが大型ショッピングモールに着陸した。

「酷いな……」

 僕はポツリと呟く。

 あんなに大きかった大型ショッピングモールは無残にも破壊され、瓦礫の山と化していた。

 元の面影など残っていない。

 そこにはたくさんの外見は二足歩行する茶色いフサフサした体毛をしたイノシシで人は人間と同じで何か持つことができる魔物、オークがいた。

 オークか。

 異世界でも厄介な魔物として知られている魔物だ。

 ヘリから5人の自衛隊員が降りる。

 さすがはプロと言うべきか、銃を構え、周囲を油断なく見渡している。

 動きに無駄がない。

 だが、それだけじゃ圧倒的に足りない。

 足りなすぎる。

 銃でゴブリンくらいなら倒せるかもしれないが、オークレベルともなれば無理だ。

 オークもゴブリンのような雑魚キャラ扱いされることが多いが、全然そんなことはない。

 異世界で高い耐久力を持っているオークの防御を貫けず、殺された若い冒険者がどれほどいるか。

 魔力持たない銃じゃ歯がたたないだろう。

 核爆弾レベルじゃないときついだろう。

 そして、奥の方から他のオークよりも大きく禍々しい装備をしたオークたちが顔を出す。

 そして、明らかに格が違う存在が姿を現す。

 嫌な予感の正体はこれだ。

「オークエンペラー」

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