帰り道

帰りの車はやけに寂しい

夕日に照らされ車内は真っ赤

黒い椅子は最早闇

いつもの僕の目のようだ


ベートーヴェンの六番を聴きながら

また外を眺めてみる

稲穂がさらさら揺れている

奥から向こうへさらさらと

僕の背中を押すように

僕を応援するように

さらさらさらさらさらさらさ


ふうと息を吐いてから

目を瞑ってまた開く

稲穂に虫に魚に木々

稲穂の音

せせらぎの音

木々の揺れる音

蝉の乾いた声

全てが耳で反響する

僕はまた目を瞑る


気づけば自宅に着いていて

工事のやかましい罵声が聞こえる

あの故郷はもう見えない

あの音はもう聞こえない

暗い夜の自宅に着いた


それでも僕は諦めない

またあの故郷の為

またあの故郷に行く為

これから必死に生きてやる

また会おう僕の故郷


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ある田舎の情景 中下 @nakatayama

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