静かな雨が頬を伝う

ひとりきりの静寂に 

雨の音だけが響く夜

晴れやしない気持ちを抱え

窓の外を覗き見る


空の向こうは雲が去り

静かな夜空に守られている

彼らは雨が止んだことを喜び

今も雨に打たれている人のことは

綺麗さっぱり忘れるだろう


僕はこうして忘れられていく


夢の中は光に満ちて

全てが栄光や希望に満ちて

優しく温かく僕を包むから

このままずっと微睡んでいたいなと

つい現実から目を背けて

思ってしまうんだ


たったひとりで過ごす夜が

これだけ静かで果てしないことを

はじめて知った日の絶望を

僕はいつまでも忘れられないだろう


頬を伝うのは雨か涙か

きっと雨に違いない


僕の知っている涙は

もっと温かったのに


氷のような水滴が

涙であろうはずもない


まどろみから現実に帰ってくると

雲間が晴れて月がのぞいていた

僕のことを憐れむかのように

優しく白く光がさした


こんな僕にも微笑んでくれるのか

まるで、君みたいだな

どれだけ突き放しても

この手を掴んで離さなかった

君のことを思い出さずにはいられない


君を傷つけたくないばかりに

何も言わずに姿を消した

僕のことをどうか恨んでくれていい

そしてせいせいしたと笑ってくれて

遠い空の綺麗な星空を

愛する人と眺めたらいい


僕のことなんか忘れてしまえ

だから早く見えなくなっていってしまえ


僕の言葉は聞こえないふりで

ただそこに居続ける月光は

どんなときも変わらずに

僕を愛してくれた君みたいで

思い出しては悲しくなるんだ


ひとりでいいんだ

僕はこのまま

ひとりでいいんだ


君もそのまま

幸せになってくれ


世界で一番愛した君を

捨てていった男のことなど

忘れてしまえばいいんだよ


僕はひとりになれているから

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