第24話

タイムリープ前。リョウとあった日

街に入る前、俺らは検査場に向かった


ハンターは街に入ると、検査所へと連れていかれる

これは規則であり、絶対

街に入る際、ウイルスに感染していないか検査させられる


昔、東京で起こった悲劇を繰り返さないためという名目で建てられた


ウイルスを街に持ち込まないためにと・・・


しかし、ここはマサト達みたいな外で活動するもの達にとっての死亡率が1番高いところでもある


そして、1番恐ろしいのは感染していないのに殺される可能性もあると言うところだ

疑わしきは罰する

保身のため人を殺す残酷な場所だ


「じゃ、また後でな」

「はい」


検査は下着になって行われるため、男女が別となっているため、2人は殺されそうになったらすぐに合流するという約束をする


マサトは男性専用と書かれた扉を開ける

すると、ばったり半裸のリョウと遭遇した


イケメンな上に体が均等に引き締まっている

モテるのは当然だなと素直に感心する


「お前!!」


マサトはその呼びかけを無視し、下着以外の衣服を全て脱ぐ

そして、衣服をカゴに入れて廊下の端に設置してあるベルトコンベアにカゴを乗せる


「おい!!」

「はぁ、お前は検査人に殺されたいのか?そんな騒いでると感染の初期症状だと判断されるぞ?」


すると、リョウは口を塞ぎ睨んでくる

リョウはこれでもハンターの端くれ、ここが危険な場所だとちゃんとわかっているため言いたいことはあれど黙るしか方法はなかった

黙り睨みながらなぜかついてくるリョウをチラ見する


(これだけ、騒げるということは吹っ切れたってことか?早すぎる気もするが・・・・俺には関係ないか)


「先行きゃいいじゃねぇか」

「いや、いい!!」

「・・・はぁ」




一方、女子更衣室の方では


「・・・・」

「なんで、あんたがここにいるのよ!!」


アーニャがシズカに指を刺し、叫ぶ

こちらのセリフですと言わんばかりにシズカはじっと一号を見る


「静かにするという概念はないんでしょうか(ボソ」

「聞こえてるわよ!!」


アーニャは、ギャーギャーと静かに向かって叫び続けるが、シズカは無視し検査のため服を脱いでいく


衣服が減るに連れて、アーニャは静かになっていき

最終的にはボーッとシズカの体を眺める


「綺麗(ボソッ」


白くシミひとつない肌や女子ならば誰もが憧れる三大重要素を揃えた体型、大人らしさを感じる黒い下着。そして、なぜかつけっぱなしのメイドのサイドに紅いリボンついたカチューシャが色気を増した


アーニャは顔を赤らめながら、一つでも難癖つけようと重々しい口を開く


「な、なんで、カチューシャ外さないのよ」

「メイドの命ですから」


その問いに、シズカは真顔で答える

しかし、アーニャにとっては意味不明すぎて

アーニャは魅了されかけてた頭を覚ました


シズカは、そんなアーニャを無視し服をきちんと畳んでからメイド服を入れ、ベルトコンベアに乗せて歩き出す


「ちょっ、待ちなさいよっ」

「・・・はぁ」




マサトたちは検査において首に装置をつけられる

血流が多く流れる上、検査もしやすいということで首につけられる


その際、服は消毒用の装置に入れられ、マサト達は検査時間の5分だけ放置される

その間、椅子に座ったり置いてある本を読んだりできる


マサトは、『名銃150選〜銃マスターへの道〜』というくだらなそうな内容の本を開く


すると、首に装置をつけてもらっていたリョウが隣に座ってくる


マサトはそれをみて口を開く


「すまん。俺男には興味ねぇんだわ」

「なんでそんな話題になるんだよ」


その後、沈黙が続く

マサトは、気にせず本を読むがリョウはじっとマサトの目を見る


「だから、興味ねぇって・・・」

「なぁ、“やり直し”って言葉に聞き覚えないか?」


マサトは、それに反応する

(こ、こいつ、それっぽい年齢の見た目だがやっぱりそうなのか)

マサトは、自分の過去を思い出す


胸が痛い


(こいつ、厨二病だ・・・)


「やっぱり、知ってるんだなっ!」

「あぁ、知ってる知ってる。あれだろ、右手が疼いてくるやつ」


マサトは右手をブラリと揺らし、馬鹿にしたようにリョウを見ると、予想外なことに嬉しそうに首を縦に振る


「今度は一緒に来てくれないか!!頼む。次は絶対全員で帰るんだ」


マサトは、仲間の死を受けきれていないのだと判断してフォローするわけでもなく無視をする


一見ひどく見えるが

真実を言ってあげるほど残酷でも優しくもないし、嘘に乗ってあげるほど人道を踏み外していない


それに殺した本人でもあるため、何も言えない


「次はもっと早く助けてくれ」


首輪のランプが緑に光り、首輪のロックが外れる


ちなみに感染すると赤いランプがつき外れなくなるらしい


「じゃあな」


隣で騒ぐリョウに一言別れを告げてから

これ以上は胃に穴が開きそうだと判断し、ベルトコンベアから運ばれてきた服を受け取り、着る


そして、外に出るとそこではシズカが待っていた


「帰りましょう」

「おう」



賃貸の中へ入るとマサトは二つ並ぶベットの片方にダイブする


「疲れた」

「夕飯の支度しますね」


そういって、疲れているはずのシズカは買い物袋を持ち外に行こうとする


「俺も行くよ」


「大丈夫です。休んでいてください」と断られることを分かっていながらマサトはシズカにダメ元で聞く


するとシズカは、少し悩む素振りをしマサトの方向を向く


「・・・じゃあ、お願いします」

「お、・・・おう。行こうぜ」


マサトは、シズカの負担を少しでも減らせると思い驚きつつも嬉しそうに返事をしベットから立ち上がる


ドアを開けて、綺麗とは言い難い賃貸の家を後にする


廃れたビルが並び立つ誰もいないようなショッピングモールへの道を2人で歩く


「昔はこんな誰もいない街じゃなかったのにな」

「こうなってから結構経ちましたね」

「まぁ、そうだな」


道端の石を蹴って、シズカの方を見る


「昔やった、遊びでもやるか?どうせ誰もいないし」

「坊っちゃまと石を蹴り合って遊ぶやつですか?」


マサトはなんか言われて断られるんだろうなと思っていたら、シズカはコクリと頷く


「やりましょう」


シズカは、マサトが蹴った石を蹴る

その蹴られた石をマサトが蹴り、聞く


「なんかあったか?」


マサトが蹴った石を再びシズカが蹴る


「なんでもありません」


蹴った石を再びマサトが蹴る


「嘘つけ」


シズカが蹴る


「本当です」


マサトが蹴る


「知ってたか?お前は嘘つくとき耳が赤くなるんだ」


マサトが赤くなったシズカの耳を眺めると

シズカは反射的に耳を隠し、驚いたような顔をしてマサトの方を見ると、石を空振ってしまう


「よし、俺の勝ち」


マサトが満足そうに石を蹴ると


「・・・エッチ」


シズカは、上目遣いでマサトを見つめつぶやいた

いつも冷静で表情の変わらないシズカの破壊力に足が止まる


「え?」

「そんなに私を隅から隅まで見てたんですね」

「いっいやいや、そんなことねーよ?あっ、もうすぐデパートだ」


マサトの慌てた様子にシズカはクスリと上品に笑う


「冗談です。坊っちゃんにそこまで見ていただいて光栄です」

「そ、そうか・・?」


マサトはシズカに話をズラされたことに違和感を持ちながら、大きく古びた廃墟のような見た目をしたデパートの中に入る


中は、誰もいないような雰囲気とは真逆にかなり盛り上がっていた

特に地下でやっているライブの重低音が上の階まで響いてくる


この閉鎖的で不自由。そして、死が隣にあるこの社会でのストレス値はかなり高い

解消するためのものが頻繁に行われる


まぁ、健全な方のストレス解消がここのように多数の場所で行われる。

しかし、それに比例して不健全な方のストレス解消の方も大量に増えたので、女達は真昼間から男を誘っている


そして現在、マサト達は勧誘ロードを歩いていた


「お兄さんイケメンだから安くしとくよ」

「はは・・・うわっ」


シズカはマサトの腕を引っ張り抱き締め、そちらに意識をさせないようにしてくる


胸の柔らかい感触を脳内で必死にインプットしているとシズカは変わらず冷静な顔をして「行きますよ」とマサトに声をかける


稼働していないエスカレーターを足で登り、食品売り場に着く


「着きました。何が食べたいとかありますか?」

「んー、カレーかなぁ」

「承知しました」


買い物カゴはジャンケンで勝ったマサトが持ち、カレーの食材を取りに歩く


「・・・・」


マサトは、シズカが何を隠していることに疑問を持った

シズカは、メイド以前に相棒でもある

マサトは信頼しあっていると勝手に思っていたため、少し落ち込む


「なんかあったら言えよ」

「・・・はい」


シズカは、ニンジンを取る手を止め返事をする

シズカはニンジンをカゴに入れマサトと向き合う


「一つ聞いてもよろしいでしょうか」

「おう」

「今日の仕事の換金ってしましたっけ?」


秘密を明かされる覚悟をしていたマサトは、ズッコケそうになりながらも、シズカの顔をみる。

相変わらず表情が全く変わらない


「家直行だったからしてないだろ」

「そうでしたね」


シズカはこう見えてどこか抜けていてよくドジを踏む。冷静な性格なためか大ごとには発展しないが、よく苦労している

その中でも一番踏むドジは金銭欲求が非常に薄いためか、必死で戦って手に入れた戦利品を換金しに行くことをよく忘れること


そのため、マサトが換金を全面的に任されている


シズカをもし億が一、解雇することになったら給料のもらい忘れなどで飢え死にしてしまうだろう


「はい、10点で¥5086ですね」


シズカが、財布を取り出そうとするが家に置いてきたのか、手を止めて店員と見つめ合いだす


「どっどうしました?」

「・・・・」


シズカの容姿が原因で、店員の顔がみるみる赤くなっていく


「ほれ、財布」

「ありがとうございます」


マサトがシズカに財布を渡すと

中から¥3100を店員に渡し、釣りはいらないと格好付けてシズカが立ち去る


(俺の金なんだけどな)


マサトは苦笑しながら、シズカについていく


シズカはバッグの中に食品を詰め込み、歩くスピードを早め勧誘ロードを無視する


俺もそれについて行き

稼働していない自動ドアを潜る


「ちょっ、速い速い」

「坊っちゃまが遅いだけです」


早歩きをしていたためか、すぐに石を蹴り合っていた道へと出た

すると、急にシズカは立ち止まる


「どうした?」

「・・・石蹴りもう一回やりませんか?」


マサトは、返事をする前に石を蹴っていた

それを見てシズカはクスリと笑い、石を蹴る


その跳ねる石を凝視する


言葉のたびにマサト達は石を蹴る


「坊っちゃま、1人でもカレーは作れますか?」


カツ


「どうした急に」


カッ


「坊っちゃま、1人でも起きれますか?」


カツ


「当たり前だろ」


カッ


「坊っちゃま、1人でもちゃんと3食食べれますか?」


カツ


「・・・・」


スカ


「ふふふ。私の勝ちです」


明らかに様子がおかしかった

石から目を離し、シズカに顔を向けると

いつも冷静なシズカから信じられないほど、涙が溢れて出ていた


「寂しくないですか?身支度はできますか?戦闘はできますか?人付き合いはできますか?ゴミ出しできますか?眠れますか?」


気づいたら、《俺》は買い物袋を投げ捨てて、シズカを抱きしめていた


「落ち着け、シズカ」

「あっ・・・」


シズカの心臓の音が聞こえてくる

鼓動を打つたび、シズカの何かが俺に流れ込んでくるような感覚に陥る


シズカも俺の背中に震えた手を伸ばすが、その手は力を失うように落ちる

その落ちた手を俺の胸まで上げ、俺を少し押す




「坊っちゃま、いえ、マサ君。私は貴方が好きです」




そう、シズカの告白が俺の耳に届くと同時に一発の銃声が辺りに響き渡り、シズカは横腹に穴を開けて倒れ込む


一瞬で出来事が起こりすぎて、空中で混乱していた俺は無意識に体の体勢を整えてシズカの元へ走っていた


「シズカ!!!」

「マサ君・・・」


俺は、シズカを抱えて遮蔽物へと走るが、2度目の銃声がなり、俺の脚を貫通させる


「ぐっ」


俺は遮蔽物に一歩届かないところで、シズカが怪我をしないように庇いながら倒れ込み、上半身だけ起こす


そして、銃弾がいくら当たってもいいようにと回復薬を大量に飲み込み、抱きつくような恰好で肉の壁を作りシズカを守る


「マサ君・・・、もういいですよ」


シズカがいつもより弱々しい力で俺のことを押す


「マサ君、私は今、幸せです。大好きな人に抱きしめられて逝けるのですから」

「黙ってろ、絶対に死なせないから」


俺は、シズカの出血を止めるためシズカの脇腹を押し、シズカに回復薬を飲ませ、強く抱きしめる


シズカの身体は思っていた以上に小さく、こんな小さな身体でそれを請け負ってきたと考えると申し訳なさが涙と共に溢れる


「マサ君、愛してます。ずっと前から」

「俺も、お前をずっと前から・・・」


もう一言言おうとすると銃声と共に近くのコンクリートに穴が開く


「遺言がすんだんだったらそこどいてくれや」


中年の茶色いコートを着た男が銃を向けて、話しかけてくる

俺らはこの男に見覚えがあった


「ケンタロウ・・・」


そう俺が呟くと、ケンタロウは帽子を深く被り


「悪りぃ」


と一言呟く


「なんでだよ、なんでお前が・・・」


ケンタロウはこの東京で刑事のような役職についている。


昔からの知り合いでもあるため、度々シズカとケンタロウの仕事を手伝っていた


俺は一瞬、裏切られたと思ったが、ケンタロウは俺らの親友であり戦友でもある。


それに、ケンタロウは自分の欲では動けない


何か事情がある

それは、確信していた


ジャッチメントが動く事態

ジャッチめがシズカを狙っている

いつも、一緒にいたシズカがだ

それに今日のシズカは、《検査場》を出た後から少しおかしかった


俺は恐る恐るシズカのチョーカーをズラすと、ランプが赤色に光っている首輪があった


「そういうことだ。そいつは、検査場を抜け出している」


嘘だ。抜け出してきてなどいないはずだ


シズカは俺が検査場を出た時、待っていた


おそらく、シズカは検査場の管理人を皆殺しにしたのだろう


やはり、ケンタロウは優しい

シズカにも俺にも


そして、危機に慣れてしまっているのか

冷静な考えができる自分の醜さが憎たらしい


「こっちこそ悪りぃな、もう少し手間かけてくれ」


俺は、脚が完全回復したのを見計らい煙玉を地面に投げつける


その瞬間、白い霧で当たりが覆われる


「くそっ、やられた!!」


ケンタロウは、俺に当たらないよう銃を使わずに走ってくる


俺は武装状態できたことに安堵しつつ、シズカの首にある発信機がついていると思われる首輪を拳銃で壊して、シズカを抱えあげる


そして、遮蔽物の裏側へと駆け込み

拳銃で威嚇する


「もう、いいんです。想いを伝えられたので」

「・・・俺を置いて勝手に逝くな」


シズカが撃たれたところは、もうとっくに治っている

回復薬は、気力や疲労、血液等は治せないためシズカはぐったりと、俺に寄りかかる


「・・・・最後にわがままをさせてください」


シズカは泣きながら俺のことを引き寄せ


キスをした


その次の瞬間、俺の体が痺れて地面倒れる


「麻痺薬です。すみません」

「シ、ズカ」


シズカは、のっそりと怠そうに立ち上がる


「ありがとうございました。私はとても幸せでした。」

「・・・ま・・・・て・・・・」


シズカはゆっくりとケンタロウの元へ歩いていく


シズカが歩いていくとケンタロウはタバコを取り出してシズカに「一本どうだ?」と聞くが、シズカは首を振る


「タバコは、マサ君が心配してくれるから吸ってただけなので好きなわけじゃないんです」

「そうか」


ケンタロウが拳銃を取り出し、シズカの頭に押し付ける

シズカは、俺の方に振り向いて涙を流しながら無理やりにっこりと笑う


「私は、世界中で誰よりも貴方を愛しています」


そう告白した後に、銃声が鳴り響く

シズカはゆっくりと倒れていく、俺は必死に這ってシズカに手を伸ばす


痺れなど忘れてシズカへと近づく

やっとの想いでシズカを抱え抱きしめるが、心臓の音は聞こえない


シズカは、幸せそうな顔をして固まっていた


「あぁ、あああぁあああああぁああああああぁあああああああぁああぁああ」


そう叫び、俺は気絶したんだ

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